こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

ポール来日公演のこと

約1年半ぶりとなるポール・マッカートニーの来日公演、最終の名古屋公演を無事終えたとのことである。私は、11月5日の両国国技館公演に参加してきた。
正直に言って、来日公演が発表された時点では、今回は参加を見合わせるつもりだった。単純に、発表された日程に都合が合わないということもあったが、それよりもむしろ、声の衰え(9月にアルバム発売を記念してニューヨークで行われたシークレット・ライブはネットで中継されたので私も観たが、かなりキツいところがあった)と、セットリストの変わらなさが気になった。
ところがだ。当初発表された東京ドーム公演と名古屋ドーム公演との間に妙に日程の開きがあったので、ここに追加公演が入るのだろうということは噂になってはいたが、まさか国技館とは。武道館よりもなおキャパは小さい、とするとドームとは比べ物にならない近距離で見られる。3万8000円は確かに高いが、武道館の時が10万円だったのでむしろおトクに見えた。というわけで今回も参加することに決めたのだった。


さて結果としては、「やっぱ行ってよかった!」という感想である。はっきり言って、3万8000円は全然高くなかったことがわかった。
マス席1階のかなり端の方で、ほぼ真横から見る形だったが、距離感がこれまでのドーム公演とは段違いだった。近いと何が良いって、ポールたちと同じ空間を共有していて、バンドが演奏しているのだということをハッキリ実感できることだ。それから、単に自分とステージとの距離が近いだけでなく、周りを見渡した時にドームほど茫漠とした感じがないので、「この瞬間をみんなで共有している」という感覚を持つことができる。
近いということで言えば、ポールの弾くベースの音を聴くことができたのも、何とも言えず嬉しかった。ドームだと全然聞こえないんだ。一回だけアリーナで観たことあるけど、それでも聞こえなかった。それが今回は聞こえたのだ。と言ってもずっと聞こえていたわけじゃなくて、他の楽器の兼ね合いでタイミングが良いと聞こえることもあった、という程度だが、それでも世界一のベーシストが弾く世界一のエレキベースの音を直に聞いたことには違いない。こんな嬉しいことがあるか!


とまあ、そういった諸々のことがあって、これまで参加してきたドーム公演とは異なる感覚でコンサートを楽しむことができた。スクリーンがなかったのも却って良かったと思う。そのおかげで「作り込まれたショー」ではなく「ロックバンドのコンサート」なんだといいう感じが出ていたから。
ポールの声については、2013年の公演に較べるとやはり無理を感じるところもあったが、基本的には「まだいけるぜ!」という感じであった。ただこれは、その場でビジュアル付きで体感しているからそう思えるのであって、例えばブートレグとかで音だけを聴いたとしたら、やはり相当キツいと思う。
セットリストは、以前の武道館では特別な曲を織り込んでいたので、今回もそういう「お楽しみ」を期待したのだが、まさか一曲もないとは...。ただ上で書いたようにドーム公演とは色々な点で雰囲気が違ったことと、あとホーンセクションの参加があったために、思ったよりはだいぶ新鮮な感じがした。近い距離感で観られたことは、「Blackbird」のようなアコースティックな曲では特に効果的だった。良かったなあ「Blackbird」(「Here today」がセットから外れたのは残念)。
とにかく、「セットリスト変えてくれよ」とか「新しいアルバム良かったからそこからもっと演ってよ」とか思うのは、あくまで「平常時」の話であって、実際にあのポール・マッカートニーが目の前(と言うにはちょっと遠いが)に現れて、あの名曲たちを演奏するという「非常時」に突入すると、もう繰り出される音楽を味わうのに夢中で、セットリストの不変化などという些細なことは気にならなくなるのだ(前にも同じこと書いた気がするな。まあそのことを再確認したということ)。
でも「Let ‘em in」は観たかったなあ。それだけは惜しい。
あと、やっぱり新しい曲は良かった。国技館では新作からは「Come on to me」と「Fuh you」しか演らなかったけど、どっちも良かった。あと前作からの「Queenie eye」。これは凄く格好良い曲だから演ってくれて良かったし、それにこういう近年の曲で観客がガッツリ盛り上がっているのも嬉しかった。


というわけで大満足でした。もしまた来日して国技館で演ってくれるなら、迷わず参加します。ドームだったら、ちょっと検討する。