渋谷すばる『二歳』各曲感想(A面・B面)
さて、本作はアナログ盤も出ているが、結構長いので(54分) 2枚組になっているそうである( CD主体で作られたアルバムのアナログ化では割とよくある)。 よって、A面からD面まであることになる。この記事では前半部分、 つまりA面とB面に収められた曲についての感想を書く。
【注意】 以下の記事はアルバムの内容についてのネタバレを含みます。
1. ぼくのうた
3番目の先行曲にして、フル配信(PV付き)ということで、 実質的なリード・シングル。結構ヘヴィーなサウンドの曲なので、 「これをオープニングに持ってくるかー」と少し驚いたが、 確かに決意表明の歌詞なので、ソロ・ アルバムの始まりに相応しいとも思える。
一聴して、関ジャニ∞とは音の作りが異なることがハッキリ分かる。楽器の肌触りがより味わえる作りと言えるだろう。アルバムのサウンド・ディレクターを務めた山森大輔(ROCK'A'TRENCH)の貢献が大きいものと思われる。
歌唱ももちろん良い。2番サビ頭なんか、本当に素晴らしい。
2. ワレワレハニンゲンダ
「ぼくのうた」 のノリを引き摺ったままではアルバムを進めて行きにくいので、 ガツンとスピーディーな曲をブチ込んで仕切り直しや!という曲( 想像です)。最初の先行曲。
以前の記事でも書いたように、ヒロト・マーシー(ハイロウズ?) の影響があからさま過ぎて、ちょっとなー、 という印象だったのだが、サビ(「やってられない~」) という部分はちょっとヒネりがあって、良いと思う。 合の手がシンプル且つ豊富なので、 これはライブで大盛り上がりだろう。
3. アナグラ生活
2番目の先行曲。スタジオでの録音生活をモチーフにしたものか。 こちらは奥田民生的なエッセンスを感じる。サビなんかは特にそう。そのサビが呑気な感じで非常に気持ち良い。
「谷間で煙が出るまで擦られたい」というのは、渋谷らしいフレーズ。
4. 来ないで
オチを知った上で改めて聴いてみると、 その前の歌詞にも色々な工夫がこらされていることが分かる。 つまり、 表面的には女性のことを歌っているものと理解して自然なフレーズ が、実は「正体」へのほのめかしを含んでいるのである。 種明かし直前の「東南アジア色んな国 どこにいたって君はいつも」なんてのも勿論そうだが、「一度だけの口づけがこんなに脳裏に焼き付いて」とか、「好きな人 苦手な人 はっきり分かれる」とか。
曲調は王道のJロックで、シングル曲として充分通用しそう。「Baby Baby」(ROCK'A'TRENCHの提供!)なんかを想起させられる。
5. トラブルトラベラ
これもちょっと奥田民生っぽい(曲そのものより、むしろ曲名が) 。
格好良い曲だが、曲調はちょっと暗い感じで、 それがアルバムの中で良いエッセンスになっていると思う。
「トラブラーだからトラベラー」というのを繰り返すところは、 ちょっとハモりを付けて欲しいように思う(私は、 聴きながら自分で勝手に上ハモを付けているが)。 ライブでアレンジしてくれないかな。
間奏前の「ハウマッチ!?」が面白い。初めて気づいたけど、 高音で叫んでいる時の渋谷の声は「すっちー」(from 吉本新喜劇)とかなり似ていますね。
6. なんにもないな
「なんにもない なんにもない...」というフレーズは、 ちのはじめ「やつらの足音のバラード」(園山俊二作詞・ かまやつひろし作曲)と酷似している。『 はじめ人間ギャートルズ』 のエンディングテーマになっていた曲だが、意図的な引用か、 気付かずに似せてしまったものかは不明。
全くの余談だが、 渋谷が一時期よくスタインバーガーのヘッドレスギターを使ってい たのは、甲本ヒロトの影響だそうだが、 その甲本がスタインバーガーを使っていたのはかまやつひろしの影 響であって、 渋谷は間接的にムッシュの影響を受けていることになる。 更についでに言えば、「ギャートルズ」 はクロマニョン人だそうである。
アンプラグド編成の静かな曲なので、ライブでも良いアクセントになると思う。映像で観てみたい曲の一つである。