こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

ジャズ・レコードの名作ジャケット集(1)

ジャズの超有名アルバムのレコード・ジャケット一覧」という記事の続きです。

前回の記事は、ジャケ自体の良し悪し・好き嫌いではなく、あくまで音楽作品として「超有名」という基準でセレクトしたものでした。対して今回は、それらのいわば「殿堂入り」アルバム以外の中から、ジャケットが優れている、つまり「名ジャケ」だと個人的に思うものをセレクトしてみました*1

* * * * * * * *

 

ソニー・クリス『ゴー・マン!』(1956年)
Sonny Criss “Go Man!”

ちょっとオシャレすぎるか?

 

マイルス・デイヴィス『ウォーキン』(1957年)
Miles Davis All Stars “Walkin’”

ポール・チェンバースの『ゴー』(1959年)のジャケットがこれの丸パクリで、「えっ、いいの?」という感じです。

 

セロニアス・モンク『ソロ・モンク』(1965年)
Thelonious Monk “Solo Monk”

「単独飛行」ということなんでしょうね。シュールなようでちゃんとしている。
和田誠さんもこの絵を描いていて、『週刊文春』の表紙になりました(2017年7月13日号)。

 

ソニー・ロリンズソニー・ロリンズ Vol.2』(1957年)
Sonny Rollins " Sonny Rollins, Vol.2"

サキソフォン・コロッサス』もそうだったけど、これも「かっこいいジャズ」のお手本のようなジャケット。ジョー・ジャクソン『ボディー&ソウル』のジャケットが本作のパロディ(しかもかなりの力作)なことで有名。

 

デクスター・ゴードン『ゲッティン・アラウンド』(1966年)
Dexter Gordon “Gettin' Around”

完璧。

 

ジョー・ヘンダーソン『ページ・ワン』(1963年)
Joe Henderson “Page One”

素晴らしき奥行き。

 

デクスター・ゴードン『ゴー!』(1962年)
Dexter Gordon “Go!” 

なんか、スペース余ったので写真入れときました的な……。

 

ザ・グレイト・ジャズ・トリオ『アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(1978年)
The Great Jazz Trio “At the Village Vanguard

初めて見た時インパクト強かったです。なんかジャズっぽくない題材ですよね。
オマージュかどうかは微妙ですが、ブランキー・ジェット・シティーの『ロメオの心臓』というアルバムのジャケットは本作に似ています。

 

ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』(1956年)
Horace Silver and the Jazz MessengersHorace Silver and the Jazz Messengers

岡本太郎か?と思うようなイカしたポーズ。真似したくなる*2。で、実際マネしてみると分かるのですが、手がデカい。

 

オスカー・ピーターソン・トリオ、クラーク・テリーオスカー・ピーターソン・トリオ・プラス・ワン』(1964年)
Oscar Peterson Trio, Clark Terry “Oscar Peterson Trio + One”

各プレイヤーの手元を大きく写して、その下には各人の顔を写している。レコードを聴きながら眺めたくなる、ナイスデザインです。文字の赤・青の色合いもイイ。

 

レイ・ブライアント・トリオ『レイ・ブライアント・トリオ』(1957年)
Ray Bryant Trio “Ray Bryant Trio”

配置といい、後ろのピンボケといい、ザ・絶妙。

 

レイ・ブライアント『アローン・アット・モントルー』(1972年)
Ray Bryant “Alone At Montreux”

手っ! 顔っ! 水木しげる的なインパクト。1度見たら忘れられない。真似したくなるポーズその2。

 

ティナ・ブルックス『トゥルー・ブルー』(1960年)
Tina Brooks “True blue”

『本当の青』というタイトルのアルバムのジャケにカラー・チャートを持ってくるアイディアに脱帽。和田誠さんっぽい。
ジョー・ボナマッサの『ブルース・デラックス Vol.2』というアルバムのジャケは本作のオマージュです(多分)。

 

バド・パウエル『ジ・アメイジングバド・パウエル Vol.1』(1955年)
Bud Powell “The Amazing Bud Powell Vol. 1”

ちょっと矢沢永吉っぽい。

 

ドナルド・バード『フュエゴ』(1960年)
Donald Byrd “Fuego”

赤地に黄文字ってなんか珍しい感じ。真似したくなるポーズその3。

 

ユタ・ヒップ『ヒッコリー・ハウスのユタ・ヒップ』(1956年)
Jutta Hipp “At the Hickory House”

ブルーノートのアルバムで、ライヴ盤をvol.1・vol.2と分けて出す場合にジャケットが「デザインは同一・色だけ違う」というケースが結構あって(例外もあるのかな?)、色盲の人には分かりづらいんじゃないかとか思うのですが、本作の場合は”jutta hipp”の文字色が違うだけで、更に分かりにくそう。
ところで、この写真のユタ・ヒップさんは目を開けているのか閉じているのか? 何度見てもナゾです。

 

ジミー・スミス『ミッドナイト・スペシャル』(1961年)
Jimmy Smith “Midnight Special”

ちょっとキマりすぎてますかね。映画のワンシーンのよう。

 

メアリー・オズボーン『ア・ガール・アンド・ハー・ギター』(1960年)
Mary Osborne “A Girl and Her Guitar”

背景(と思いきや、よく見ると前景)に大きくあしらったギターが実に効いています。

 

ドロシー・ドネガン『セプテンバー・ソング』(1956年*3
Dorothy Donegan “September Song”

前面に女性(ドネガン本人……ではないですよね、多分)がいて、その背景にカエデがある……はずなんですが、女性の顔の部分を見ると、着色が、あれっ、これ位置関係どうなってんの!?

 

ハービー・ハーパー『ハービー・ハーパー』(1955年)
Herbie Harper “Herbie Harper”


犬好きだからって犬ジャケなら何でもいいわけではない。これは素晴らしいです。実はデザインは、上の『セプテンバー・ソング』と同じバート・ゴールドブラット。作風の幅が広いですね。

 

*1:前回と同様、ジャケットの画像はYouTube MusicおよびDiscogsから引用しています。

*2:小川隆夫『ジャズマンはこう聴いた! 珠玉のJAZZ名盤100』の表紙カバーで、著者がこのポーズを真似しています。

*3:元は別ジャケで、この素敵なジャケットになるのはDiscogsによると1959年のようです。

ジャズの超有名アルバムのレコード・ジャケット一覧

ジャズと言えば、レコード・ジャケットに名作が多いことで有名です。

だからジャズの有名なレコジャケを集めた書籍やウェブページって、いかにもありそうなのに、検索しても意外と思うようなモノが出て来ない――というわけで、作ってみました。

私が普段主に聴いているのはロックやポップスで、ジャズは素人です。逆に言えば、そんな私ですら「これは有名でしょ」と思うレコジャケは、めちゃくちゃ有名なジャケットと言ってよいでしょう。このページではそんなジャケットの写真をひたすら並べています*1

ちなみに、有名度が高い順*2に並べています。

* * * * * * * *

 

ビル・エヴァンス・トリオ『ワルツ・フォー・デビイ』(1962年*3
Bill Evans Trio “Waltz for Debby”

ちあきなおみの『あまぐも』(1978年)のジャケットは本作のオマージュです。

 

ソニー・クラーク『クール・ストラッティン』(1958年)
Sonny Clark “Cool Struttin'”

これのオフ・ショットが何枚か公開されているんですが、「NG集」って感じで、いいんですよ。

 

ソニー・ロリンズサキソフォン・コロッサス』(1957年)
Sonny Rollins “Saxophone Colossus”

「ジャズ」を1枚の写真にしたらこうなる、とでもいうような格好良いジャケット。人物は黒塗りかと思いきや、よく見ると薄く姿が映っています。

 

ビル・エヴァンスジム・ホール『アンダーカレント』(1962年)
Bill Evans, Jim Hall "Undercurrent"

名作ジャケが多いジャズ・レコードの中でもひときわ印象深い1枚。この写真は本作のために撮影されたものではなく、トニ・フリッセルという女性写真家による作品(”Weeki Wachee spring, Florida”, 1947年)を使ったもの。元の写真*4も良いのですが、ジャケットでちょっと粗い質感になったのがまた良い味を出しているように感じます。

 

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ『モーニン』(1958年)
Art Blakey & The Jazz Messengers "Moanin'"

普通に顔のアップを撮っただけなんですが、角度といい表情といい光の当たり方といい、完璧!という感じ。これのオフ・ショットもあれば見てみたい。

 

キャノンボール・アダレイ『サムシン・エルス』(1958年)
Cannonball Adderley “Somethin' Else”

文字だけでサマになる、の代表のよう。今見ても全然古びていないことに驚かされます。

 

マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』(1959年)
Miles Davis "Kind of Blue"

書体がイイ。”Kind of Blue”の色合いもイイ。

 

ビル・エヴァンス・トリオ『ポートレイト・イン・ジャズ』(1960年)
Bill Evans Trio “Portrait in Jazz”

ビル・エヴァンスという人のイメージを世間に決定づけた1枚。時期によっては全然風貌が違うので驚く。

 

リー・モーガン『ザ・サイドワインダー』(1964年)
Lee Morgan “The Sidewinder”

写真の切り取り方、余白の取り方、文字の置き方……何から何まで「センスの塊」としか言いようのない名ジャケ。

 

マイルス・デイヴィス『クッキン』(1957年)
Miles Davis Quintet “Cookin' with the Miles Davis Quintet

私は最初、これが何の絵か分かりませんでした。しばらくして、「あぁ、”こっち向き”のトランペットなのか!」と。シンプルな線の、いい絵ですね。赤い文字も効果的。

 

マイルス・デイヴィス『リラクシン』(1958年)
Miles Davis QuintetRelaxin' with the Miles Davis Quintet

リラックス、と思って見るとまあそんなふうに見える。

 

オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』(1964年)
The Oscar Peterson Trio “We Get Requests”

3人とも笑ってるよ。ああこのレコードでは楽しいジャズが聴けるんだなあということがパッと見て分かる、名ジャケ。

 

チャールズ・ミンガス『直立猿人』(1956年)
Charlie Mingus “Pithecanthropus Erectus”

いわゆる「人類の進化」のプロセスが描かれているのですが、普通は左→右の順で描くのにここでは左←右の順で描いている。つまり、普通の(左からの)視点で見ると「進化」ではなく「退化」を描いているように見えるというワケ。ゾクっとさせられます。

 

モダン・ジャズ・カルテット『ジャンゴ』(1956年)
The Modern Jazz Quartet “Django

 

ハービー・ハンコック『処女航海』(1965年)
Herbie Hancock “Maiden Voyage”

 

シェリー・マン&ヒズ・フレンズ『マイ・フェア・レディー』(1956年)
Shelly Manne & His Friends "Modern Jazz Performances of Songs from My Fair Lady"

オードリー・ヘップバーンかと思いきや、違う。

 

ジョン・コルトレーン『至上の愛』(1965年)
John Coltrane “A Love Supreme”

 

ジョン・コルトレーン『ブルー・トレイン』(1958年)
John Coltrane “Blue Train”

物憂げな表情を浮かべているが実はキャンディーを舐めているということで有名。あとポロシャツがかっこいい。

 

ウェス・モンゴメリー『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』(1967年)
Wes Montgomery “A Day in the Life”

 

マイルス・デイヴィス『クールの誕生』(1957年)
Miles Davis “Birth of the Cool”

マイルスの角度がイイ。

 

スタン・ゲッツジョアン・ジルベルト『ゲッツ/ジルベルト』(1964年)
Stan Getz, João Gilberto “Getz/Gilberto”

何がどうというわけじゃないんだけど良いジャケ。中央の絵はオルガ・アルビズという女性画家の作品ですが、黒の枠をガッツリ置いたのが効いています。

 

チック・コリアリターン・トゥ・フォーエヴァー』(1972年)
Chick Corea “Return to Forever”

書体がモダンな感じ。

 

ウェザー・リポート『ヘヴィー・ウェザー』(1977年)
Weather Report “Heavy Weather”

 

ハービー・ハンコック『ヘッド・ハンターズ』(1973年)
Herbie Hancock “Head Hunters”

1度見たら忘れられないジャケット。左右対称っぽいのがイイ。

 

マイルス・デイヴィス『ビッチズ・ブリュー』(1970年)
Miles Davis “Bitches Brew

ロック・ファンにも有名なジャケ。何気に文字がカッコイイ。

 

ビリー・ホリディ『奇妙な果実』(1959年)
Billie Holiday “Strange Fruits”

これも「1度見たら忘れられない」系。筆文字が昔の映画っぽい。ポップ・アートっぽくもある。

 

ウェス・モンゴメリー『フル・ハウス』(1962年)
Wes MontgomeryFull House

この手があの音を作ってるんやなあ。

 

ミシェル・ペトルチアーニミシェル・ペトルチアーニ』(1981年)
Michel PetruccianiMichel Petrucciani

 

ジョン・コルトレーン『マイ・フェイバリット・シングス』(1961年)
John Coltrane “My Favorite Things”

妙にぴったりしたポーズといい、背景のベタっとした青といい、個人的にはちょっとどうかと思うのですが、世間的な評価はどうなのだろう。

 

ビル・エヴァンス・トリオ『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』(1961年)
Bill Evans Trio “Sunday at the Village Vanguard

どことなく広告写真っぽい。

 

マイルス・デイヴィス『バグス・グルーヴ』(1957年)
Miles Davis “Bags' Groove”

 

マイルス・デイヴィス『ザ・ミュージングス・オブ・マイルス』(1955年)
Miles Davis “Musings of Miles”

 

 

 

*1:ジャケットの画像はYouTube MusicおよびDiscogsから引用しています。

*2:個人の感想です。

*3:年は録音年ではなく発売年。以下同様。

*4:https://www.loc.gov/pictures/item/2005696465/

『トップをねらえ!』にハマった。

トップをねらえ!』にハマった。
 
いきさつ
 『新世紀エヴァンゲリオン』は子どものころ(というのは90年代後半のことですが)から好きだったので、『トップをねらえ!のこともガイナックス作品の1つとして昔から知ってはいた。が、特に関心を持つことはなかった。
 関心を持つようになったのは去年(2022年)のことで、たまたまツイッターで、本作で主人公と「お姉様」がロボットを合体させて戦う、2分ほどのシーンが紹介されていて、「絵がすごい動いてるな」「演技(声)もすごい気合い入ってるな」「曲も、いかにも80年代って感じだけどイイ感じだな」ということで、機会があれば観てみたいと思うようになったのだった。ただ、『エースをねらえ!』のパロディとのことで、まずは『エース』を読まなきゃいけないのか、とか思うとなかなか手が出ないでいた。
 とりあえずすぐにアクセスできるのは楽曲なので、背景に流れていた曲「トップをねらえ! ~FLY HIGH~」(日高のり子佐久間レイ)をそれ以来、よく聴いていた。ちなみに日高のり子佐久間レイと言えば私の脳内データベースでは『らんま1/2』ほぼ1択である。
 さてそれから数ヶ月後の2023年3月、GYAOで本作が期間限定で(というか、GYAO自体が3月に終了するというのだが)、全6話を無料公開するというので、この機会逃すまじということで視聴した。初日:第1話、翌日:第2~3話、翌々日:第4~6話と、3日掛けて完走。
 で、見事にハマった。最終話を見たのが3月23日。その5日前には『シン・仮面ライダー』を公開初日に観ていて、マイブームとしては完全にそっちだったのだが、それが完全に上書きされてしまった形だ(いや、『シン・仮面ライダー』もそのうち2回目を観に行くつもりではありますが……)。
 というわけで、リアルタイムの心情を忘れぬうちにここに記しておきたい。
 なお、以下ネタばれ配慮は一切ないので悪しからず。

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第1話
 当然これを最初に観たのだが、全然面白くなかった。観るのが苦痛というほどではないものの、グッと来るところが全然ないというか……ロボットの器械体操も別に面白くなかったし……鉄ゲタは笑ったけど。アイキャッチの「ガーンバスター……!」っていうコーラスも、ちょっとどうかと……慣れたけど。
 そんな感じで、第1話を観た時点では、全6話と少ないとは言え、本作を自分がきちんと楽しめるのか、かなり心許なかった。GYAOのコメント欄に「1話と2話は我慢して見ろ」的なことが書いてあったので、まあ大丈夫かなとは思ったが。

第2話・第3話
 「あれっ、意外と暗い……?」という感想。なんか、『トップをねらえ!』って「明るい作風」というふうに説明されることが多いように思うのだが、第2話では父の姿を求めてノリコが暴走・絶叫するし、第3話では恋人候補っぽい男がいきなり消えちゃうし……なんだ暗いじゃないか、と。
 あと、「コーチは何をきっかけにしてノリコの才能を見いだしたのか」の説明が一切ないし、スミスもいつの間にか消えちゃってるし(撃破されるドラマが用意されていない)、なんか色々説明不足だよなあ、という印象も持った。
 ただ、最後の科学講座は面白いし、あと第3話冒頭の、超硬派な論文の文面をひたすら流すBGMに宴会の余興を置くというふざっけっぷりも大いに気に入った。
 それから上述の「説明不足だ」というのは、本作がテレビアニメではなくOVAである、つまり「何度も見返されることを前提に作っている」ということを加味すると、かなり納得できるところがあった。例えばスミスが消えちゃってるシーンは、改めて観ると「何が起こったのかノリコ側からは分からない」ということがリアリティーを生んでいて、コワいシーンになっているのが分かる。「コーチは何をきっかけにしてノリコの才能を見いだしたのか」も、何度も観ていると「……ま、なにがしかあったのだろう」と、話と話の間の「間(ま)」を視聴者が勝手に補完してしまうところがある。
 なお、オープニングとエンディングはどちらかが先述の「トップをねらえ! ~FLY HIGH~」かと思っていたのだが、実際はどちらも酒井法子の曲(「アクティブ・ハート」「トライ Again…!」)。耳に残らないようで、実は意外と耳に残っていた。

第4話
 また暗いなあ(ユングがまた敵対的になってるし、ノリコがウジウジしてるし……)と思っていたら、ノリコがふっきれるところで完全にムードが変わった。心なしかノリコの作画も良くなったような……ということで遂に出撃するガンバスターいやあここでやっと視聴者として心がパァーっと晴れたようだった。速さで勝てないなら根性で!という最後の勝ち方もバッチリだし、ここで終わっても充分成立する良いシーンだった。

第5話
 ここでちょっと時限が1つ変わったような感じ。『エヴァで言えば、ここから劇場版みたいな……。まず冒頭の、ノリコが立ち上がる拍子に椅子が動くのに合わせてのサブタイトル表示……このタイム感、何度見ても痺れる! どの話か忘れたけど、『エヴァ』でもあったんでしょうね。なんか胎教じゃないけど、身に染みついている感じ。このタイム感も、元ネタがあるのでしょうが(岡本喜八?)、教養がないので分からない。 
 それはともかく、第5話はまさしく私が本作を観たいと思ったきっかけの、例の合体シーンがあるわけですが、ここはもう、何度観ても素晴らしい。このシーンは、だから事前に知っていたということにはなるのだけど、感興は全然違う。やっぱり第1話から見続けた上で観るからこその感動だと思う。例えばお姉様のクールな語りにしても、そこだけを見ていては魅力は半減なワケで、当然ながらその前の、逃げ出し嘆いているところからの転回があってこそ、このクールさが恐ろしいほど引き立つわけだ。嘆きシーンも本当に良くて、特に「絶対にイヤぁああ!」の歪んだ叫びはまさに絶品!!
 そしてノリコ……ノリコの叫びは本当に本当に素晴らしすぎる!! このシーンは、お姉様の「ええ、よくってよ」がよく言及されるのだけど、そしてソコももちろんとても良いのだけど、個人的にはそれに続くノリコの「うわぁぁあっ!!」が最高に好きだ。「ええ、よくってよ」からの間(ま)の置かなさも、絶妙なんですよ。他にも、「コーチの心が、こもってるんだからぁぁあ!」もそうだし、有名な「ホーミング、レー↑ザー↓!」もそうだし、本当に名演連発。ノリコの声は酒井法子に頼むという案もあったという話を見たことがあるけれど、もし実現していたらこのシーンの実現はなかったかと思うと、本当に良かったと言うほかはない。
 あと、これは曲を先に聞き込んでいたというちょっと特殊な状況のたまものだけれど、「トップをねらえ! ~FLY HIGH~」のイントロが聞こえてきた瞬間に「ここでクルかぁーっ!!」と大興奮した。
 私は今まで、「最も好きなアニメーション映像」と言うと、(これもガイナックス絡みだが)『DAICON Ⅳ』のプロモビデオ(E.L.Oの「Twilight」をBGMにしたやつ)が一番に挙がる、と思っていたのだが、そして今でも大好きには変わりないものの、でも今ではこの『トップをねらえ!』第5話がそれに代わるなあと思っている。
 話は戻るけれど、出撃前に電車?に乗っているシーンで、ノリコが「今回はすぐに戻れる」と言ったのに対してお姉様が「地球では6ヶ月経っているのよ」と返すシーンがあって、最初に観たときは「6ヶ月だったら大したことないじゃん」と思ったのだが、コーチの余命が6ヶ月ということを知った上でこのシーンを見返すと、めちゃめちゃ切ない一言なのだと分かった。これもやはりOVAならではと思うところ。

第6話
 最終話。これは……さっき第5話に対して「ここから劇場版みたい」と書いたけれども、本話で更にもう1次元変わる感じ。話があまりに壮大で、ある意味5話までとは切り離して捉えたくなるようなところがある。第5話はいつでも観たいタイプの名作だけれども、第6話は切なくなっちゃうのでしょっちゅうは観られないタイプの名作というか。
 なんにせよ、ありがたいことに事前情報一切なしで観られたので、最後の例のシーンは本当に、「うわぁあー!」って感動しました。
 ほぼ全編モノクロであるということがよく取り沙汰されて、賛否で言うと賛8割否2割くらいに見受けられるけれど、個人的には賛も否もあまりないというか……観ていると、別に気にならなくなります。本来のモノクロ映画もそんなものだと思いますが。その意味では、別に最後に色が付かなくてもいいということにもなりそうですが……でもやっぱり、色が付くのはいいですね。

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 私は特撮とかアニメとかの知識は本当に乏しいのだけど、本作は(この後の庵野秀明の作品と同様に)強烈にオタク心をくすぐるというか、「背景知識を知りたい!」と思わせる作品ですよね。と言うわけで、視聴を終えた私はネットで感想を漁るとともに、解説書の類が読みたいと思って色々と検索した。その結果、肝心の作品(いわゆる円盤)を買う前に、『パーフェクトガイド』や『コミック・ガンバスター』をネットで注文することに……ついでにガンバスターのSDサイズのキーホルダーもヤフオクで買いました。
 元ネタ探しもぜひ行いたいところだ。本作はとにかく「作中にオリジナル無し」と言われるくらいにパロディずくめの作品らしいので、元ネタをまとめたウィキ的なサイトがあるだろう……と思いきや、なさそうなんですねコレが。それなら自分が……と一瞬思ったけれど、あまりに元ネタが多すぎて自分の手には全く負えないことが明らかとなり、すぐに断念した。でも、特に重要な元ネタについては少数でも取りまとめておきたいとも思っている。
 まあ元ネタ以前に、ラジオドラマも気になるし、架空の「次回予告」も気になるし、サントラに付いていたという大百科(設定集?)も気になるし、CD-ROMも気になるけどこれは入手しても再生できないのかもなぁ……等々、どんどん手を着けていきたいという状況だ。

 以上が、『トップをねらえ!第1話を見始めてから約1週間の状況の備忘録である。