映画鑑賞メモ:『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』
『赤毛のアン』についての知識は(原作含め)一切ない状態で観に行きました。新作アニメが放送されている中で、この高畑勲版の再評価も進んでいるようで、興味を持ったためです。あと『耳をすませば』ファンとしては、近藤喜文の参加も気になるところ。
と言うわけで予備知識一切なしで観てきました。基本的には「アンはこの家に置いておいてもらえるのか?」という一点にかかった話なので結構辛気くさいのですが、結論から言えば、観て良かったです。味わい深い作品でした。以下メモ。
・アンのキャラが、だいぶアクが強いので驚き。「夢見がち」みたいな形容をちょっと越えています(アニメとしてのデフォルメでそうなっているのではなく、作中の扱いとしてもそうなっている)。もっと、普通に引き取りたくなるような子を主人公に置くこともできたろうにそうしなかったという点に、原作者モンゴメリの気骨を感じました。
・状況を考えればアンの嘆きはもっともなのですが、「コーデリアと呼んで」はワケ分からなすぎて唖然。
・風景の描きこみが凄い! こりゃグリーンゲーブルズに住みたくなるよと思わされます。作画で言えば、割と後半でしたか、家の窓越しにアンのアップになっていくところ、立体感が物凄かった。
・マシュウは基本的には自分で状況を切り開いていくということができない男(少なくともこの映画の範囲では)なのですが、だからこそポツっと呟く中にすごく心動かされるものがあったりする。「この子が何の役に立つのか」と反語的に問うマリラに、「私達があの子の役に立てるかもしれないよ」と答えるところにはほんと感嘆しました。びっくりした。
・終盤の「お前の出番が来たようだよ」というのも、(いやお前も主体的に動けよとは思わされつつも)良い台詞でした。
・遠ざかる馬車を追いかける、あの「つい突き動かされて」という感じの演技も良かったなあ。
・しかしまあ、何と言ってもこの映画の主役はマリラですよ。アンがグリーンゲーブルズに残れるか否かは彼女に懸かっているということは序盤から分かっていたわけですが、そのほだされていくさまをじっくりと描いているのが本当に見応えがある!
・孤児院に戻すよう明言までしたマリラが翻意するきっかけになったのは、「○○さんのところに置いてもらいましょう」というスペンサーの(責任逃れ的な)提案だったわけですが、この時にマリラが(えっ、あそこに……?)という表情を見せる、その見せ方が露骨でなくてウマい!
・その後、「うちで引き取らないでもない」と言ってしまったあとの、(あー、なんであんなこと口走っちゃったんだろ……)という仕草も最高でした。
・ちょっと話が戻りますが、馬車での道中、「今日はきらめきの湖は通らないの」と訊くアンに「今日は渚の道(だっけ?)」と答えるところ、この「渚の道」がマリラのネーミングかは分からないわけですが、ひょっとしてマリラにもアンと通じる感性がある……?と思わせるシーンです。
・物語の冒頭で、マシュウとアンには《枠》が掛かってこのお話の中心人物であることを伝えます。その時は、なんか変わった演出だなとは思ったものの特に気に留めなかったのですが、終盤でマシュウの「お前の出番が来たようだよ」という台詞を受けてマリラにこの《枠》が掛かった時には興奮しましたね! あれは凄い演出ですよ。
(鑑賞日:2026年6月某日)
映画鑑賞メモ:『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』
思い返すと「なんで観に行こうと思ったんだっけ?」となるくらい軽~い気持ちで観に行ったら思いがけず心をワシ掴みにされました。だって誰が予想するでしょうか? 『たべっ子どうぶつ The Movie』に肩を震わすほど泣かされるなんて……。
以下は備忘録。めちゃめちゃネタバレしています。
・最初は、冒頭の3分でもうモトは取ったものと思っていました。オープニングの迫真の「ギンビス」には大いに笑わされたし、ライブシーンでライオンくんがドヤ顔でステージに飛び出てきたところもかなり笑えた。
・そこからのお話の流れは、正直「まあまあ面白い」くらいの気持ちでしたが、「おおっ、これは……!」となったのはペガサスちゃんの歌唱シーン。歌がみんなに波及していくさまは、定番かもしれないがやっぱり良い。加えてオオッと思ったのが、窓を閉めるライオンくんに対して他のメンバーが「何するの!?」と怒気をあらわにするところ(ねこちゃんの表情!)。あの表情はなかなか見ごたえがあった。ライオンくんとしてはゴットンたちの侵入を防ぐという(理性的にはもっともな)理由があってのことだったのだけれど、それが「ペガサスちゃんに大丈夫だよって伝えたい」という感情が優先するメンバーとの対立になる、このやるせなさにオオッ……!となりました。
・塔の上でのクライマックスは本当に、琴線に向けてこれでもかと連続パンチを受けているかのようで、本当にスゴかった……。まず、ペロが割られたビスケットを復元したいのだけどできない、「いただきます」を言いたいのだけど言えない……というこの焦りと無力感、ここにもうめちゃめちゃ感情移入しちゃってダメでした。今も書きながら泣きそうになってるもん。大野りりあなさんの演技は素晴らしかったです(まさか本当に子供とは思いもしなかった)。
・実は一つだけ割られていないビスケットがあって、という……あれ気付いてました? 私は気付いてなかったのであのビスケットが現れたシーンは思いっきり感動しました。
・「いただきます」についても、この場で言えるようになる(=成長)という形での解決に至るのかと思いきや、そうではなく"いま自分にできるやり方で勝つ"という……この『ジョジョの奇妙な冒険』的なアプローチにもシビれました。
・ひよこちゃんがガムシャラに敵に向かっていく様子も心打たれたなあ。
・それにしても大塚明夫はスゴい! 情感あふれる演技に圧倒されっぱなしでした。ゴッチャン(CV.関智和)とのやりとりにもガッツリ心動かされました。
・更に更に、ここに来て明かされるペガサスちゃんの秘密……あれも私は思いがけなかったのでバッチリ心動かされました(幸せな観客だ)。「ええっ、そこまでやるか……!」と、趣向を盛り込みまくりの映画にツッコミながらも感動。
・振り返ってみると、「あの角はニセモノでは?」というのをかなり早い段階でライオンくんが言っているのは明らかに伏線だし(ニセモノだったのは角の方じゃなくて……というのもウマい)、話は戻りますがペロが「いただきます」を上手く言えないということもちゃんと事前に示されていました。ここらへんは本当に丁寧だなあと感心。
・演出ということで言うと、塔の上でマッカロンがビスケットを拾うとき、その拾い方で「あっ、コイツ悪者……?」と察しがつくようになっています。これも上手いなと思った。
・ゴットン側に一人オタクがいるというのがちょっと面白かった。
・歌が3曲出てきますが、どれも良かった! 『ポプテピピック』で大活躍した羽柴吟が担当ということで期待はしていましたが、その期待にしっかり応えてくれました。
・音楽と言えば、フルオーケストラを使っていることをエンドクレジットで知って驚き。贅沢。あとクレジットで各パートまで示すのは珍しいんじゃないでしょうか。
・映像もめちゃめちゃクオリティ高かったし、「なんでこんなに潤沢な予算が付いたんだろう?」というのが一番の謎として残った……。
(鑑賞日:2025年6月某日&某日。2回)
Jack White 2025.3.12 @Gorilla Hall Osaka
ついについにジャック・ホワイトのライヴを観た!
思い返せば忘れもしない2006年3月……高校生だった当時ホワイト・ストライプスは私にとって最重要バンド、そして新作『Get Behind Me Satan』は異色ながら素晴らしい出来、そこへ来日公演……! 絶対行くべきところだったのですが、大学受験真っ只中ってことでさすがに親の手前、行くことができなかったという……そして結局、ストライプスはその後の来日はないまま解散、ジャックの単独来日すらなく(フェス出演はあった)今に至るという。こうして見ると、ジャック・ホワイトのライヴを観ることは私含め多くのファンにとって19年越しの悲願だったわけであります。
さて当日。場所はGorilla Hall Osakaなる、初めて聞くライブハウス。一昨年出来たばかりだそう。キャパ1300の由(2階もある)。駅からもまあまあ近いし良いんじゃないでしょうか(初見には道がちょっと分かりにくいが)。
開場前に群がる人たちの中には、外国の人も多かった。そう言えば個人的には、近年は海外と言えば台湾(旺福、林以樂)か韓国(チャンギハと顔たち)で……欧米の外タレをライブハウスで観るっていうと、ひょっとしたらディアフーフ以来か?
客層は、私のちょい上(40代)が中心で、若い人もそこそこいる感じ。あと女性が結構多いのが意外でした。
チケットは800番台。まあまあ遠くなるか……と思いつつホールに入ってみると、なんのなんとかなり近い。ステージまで10メートルくらいか。チケット1万2000円も納得の近さ。ロックのSEが爆音で流れる中、岩波文庫を読みながらひとり開演を待つ。
ほぼ開演時間どおりにスタート……すごい高いテンションで入ってるジャックに驚き(もっとスカした感じかと)。ついにジャック・ホワイトを観た!という感慨にふける間もなく、ギターをジャギジャギ鳴らしながら演奏に入っていく。まさしくあのギター、あの声であります。それにしてもギターうるさい。
使用ギターは、去年フェンダーから出したシグネチャーのテレキャスター(メイン黒、サブ青)。ネットで写真を見た時は全然カッコイイと思わなかったけど本人が構えているとちゃんとカッコ良かったです。キルスイッチ?とかのギミックもガンガン使っていました。あと終盤の何かの曲でヒップショット(ドロップD?)も使っていた。
しかしそれよりも興奮させられたのは2、3曲でスライド用に使っていたボロボロのフルアコ。『Get Behind~』ツアーのブラジル公演のビデオでもこんなの使ってたなあ。スライド良かったなー。「Seven Nation Army」もコレで演ってくれました。
「ホワイト・ストライプス、ラカンターズの曲もガンガン演ってる」というふうに聴いていたのだが、去年唐突に出た新作『No Name』を主体にしたセットリストで良かった。やっぱりミュージシャンは新作を演るのが一番「その時の魅力」が出て、良いですからね……と言いつつ、3曲目「BlackMath」のイントロを弾き出した時にはすげぇ興奮しましたが。
新作からで言えば、本編最後に演った「Archbishop Harold Holmes」は、歌詞が最高なので生で観られて嬉しかったですね。アルバム自体、ライブで観てこそというムードのものだったので、随分待たされましたがタイミング的にはこれで良かったのかな……とも。でもやっぱり『Blunderbuss』のあの感じをライブでも観たかったですが。今回は、ひたすらガンガンという感じだったので。あと、やっぱりフルバンド(と言ってもジャックを含めて四人なんだけど)だとうるさいので、メグとの二人だとどうだったのだろうというのも偲ばれました。まあそれでもうるさかったんだろうけど。
日本ツアーの初日は広島で、そっちのプレイリストも予め見てあったのですが、いくつか曲の入れ替えがあったみたいですね。「Blue Orchid」を演るとは思っていなかったので『Get Behind~』がストライプスで一番好きな私としては興奮しました。代わりに「Icky Thump」演らなかったので、後半の「ラ~ラララ~♪」のくだりを一緒に歌えなかったのは残念ですが……。
ソロからだと、アンコールで『Lazaretto』から「Lazaretto」「That Black Bat Licorice」を演ってくれたのは嬉しかった。『Blunderbuss』からも演ってほしかったな。最後は「Seven~」でもちろん大盛り上がりでした。
ジャック・ホワイトと言えば、この少し前に「ライブはだらだらやりたくない」との発言が記事になっていました。
この日のライヴも、ガンガン曲をやって、アンコール含めて90分足らずで終了。個人的には非常に良い長さでした。