こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

Jennifer Leitham

 自分が左弾きの練習をしているもので、レフティの楽器やプレイヤーのことは常に気になっているのだが、先日フと「レフティコントラバスってあるのかな」と思ってインターネットで検索してみたところ、http://www.joristeepe.com/articles/Lefthanded.pdf というページが出てきた。『The Walker's』というジャズ雑誌の抜粋らしい。特集名はその名も「左利きのウッドベース弾き特集」である。ドンズバと言ってもいい。コントラバスを常用しているジャズ・ベーシスト9名を取り上げて、使用楽器や、左利きで困ること、将来の希望などについてインタビューを取っている(この将来の希望について「経済的安定」と答えている人が何人かいてもの悲しい気持ちになった)。
 それはさておき、その9名の中の紅一点がJennifer Leithamというアメリカ人。レフティ・ベーシスト、更に女性となると関心を持つのもむべなる哉で、早速YouTubeで演奏を観てみたところ、これが格好良い!


 ベースはソロではなく伴奏にて格好良くあるべし、というのが僕の持論なのだが、彼女のプレイはそれにきちんと合っている。その一方でソロもなかなか魅力的である。
 山中千尋とニューヨークで共演しており、これがCDとDVDにもなっているようだ。

 上記『The Walker's』の記事によると愛用のコントラバスはヘフナー製だそうであるが、エレクトリック・ベースもヘフナーを用いている映像がある(以下はいずれもNAMMショーのもの)。


 ちょっと余談になるが、ここで彼女の名前について一言。Leithamという綴りを見ると「レイサム」と書きたくなるし、実際インターネット上の日本語の記事を見ると、そのように書かれているものが多い。しかしながらYouTubeで彼女が自己紹介している動画などを見るに、どうも「ライアム」と書く方が原音に近いようだ。よってこのブログでは「ライアム」と書く。かなり珍しい苗字のようで、Leithamで検索しても彼女のことしか出て来ない。専門家が見ればきっと苗字から出身地が判るだろう。
 閑話休題。そんなわけで、レフティ女性ベーシスト、しかも演奏も好みということで、気になるプレイヤーのトップに一気に躍り出たジェニファーさん。となれば経歴が当然気になる。まずはウィキペディア先生だ。日本語版には記事がないので、英語版をちびちび読み進めると、末尾の辺りに次の一文があるのが目に入った。
 In 2001 Leitham underwent sexual reassignment surgery, having previously lived and performed as a man, John Leitham.
 「reassignment」など見慣れぬ単語はあるが、どうやら元々Johnだったのが2011年にJenniferになったようだ、ということは流石に想像が付く。思いも寄らぬ展開である。いや、別に求婚しようってんじゃないんだから、展開でもなんでもないのだが。しかしびっくりしました。
 なお彼/彼女のこの経験は近年『I Stand Corrected』(「いかにも私が間違っていました」くらいの意味だそうである)という題でドキュメンタリー化され、何かの賞も獲得しているそうである。


 調べてみると、ジョン時代に5枚ほど、そしてジェニファー時代にも既に4枚ほど、リーダー作を発表しているようだ。あと近年のライブ映像のDVDというのもあるが、これはアマゾンでは買えない。また、これらは日本盤は全然出ていないようである。実に惜しい。
 まずは何かCDを買おう、と思ったのだが、アマゾンで注文する前にお茶の水ディスクユニオン(ジャズ館)に行ってみた。そうするとジョン時代の『Live!』(当然輸入盤)が2枚あるのみであった。ジェニファー時代のは1枚もナシ。ちなみに渋谷のタワレコにもなかった。現況愁うべしと言えよう。布教せねば。
 ディスクユニオンで見つけた2枚の『Live!』は、安い方を500円で購入。既に何度も聴いているが、なかなか良いですよ。基本のトリオ+テナー・サックス2本のクインテット編成であるが、このくらいの人数だと(トリオなんかに較べて)統制のために即興度合いがやや抑制されるので、僕のような「ジャズ耳」が育っていない人間にも割と聞きやすい。かつ、ベーシストがリーダーのバンドだけあって、常にベースの音がしっかり聞こえてくるのが嬉しい。レパートリーは知らない曲ばかりだが、クレジットを見るにカバー中心であろうか。ライアムさんも2曲を提供しているが、いずれもキャッチーである。
 1997年3月、カリフォルニアでのライヴ録音。念のためにベース以外のパーソネルを記しておくと、Pete Christlieb、Rickey Woodart(以上テナー・サックス)、Shelly Berg(ピアノ)、Joe LaBarbera(ドラム)。Leithamさん含め、珍しい姓の人が多い。なおアルバムの最後でライアムさんがメンバー紹介しているのだが、自己紹介の所では「ライアム」とも「レイアム」とも聞こえる。難しいところである。

Live!

Live!


 近々、今度はジェニファー時代のアルバムを手に取ってみたい。現在の最新作『The Real Me Live』(2011年)には「Beat the Meetles」という曲が収録されているそうで(自作曲であろうか)、ビートルズ・ナンバーのオマージュなんかもあるのだろうかと興味がそそられる。ポールと同じレフティ・ベーシストだしな。かつての名前はジョンだし・・・。

Beat The Meatles

Beat The Meatles


 なお現在ジェニファーさんはアルバム制作にあたっての資金を募っており(そう言えばリッキー・リー・ジョーンズも先頃そういう募集をしていたな)、投資額に応じて新作ダウンロード権などの特典があるようだ。250ドル投資すると、なんとジェニファーさん本人からスカイプでベースのレッスンが受けられるそうである。すげえ。スカイプの使い方知らないけど。
 応援したいので、是非とも投資したいと思ったのだけれど(250ドルはキツいが、100ドルくらいなら)、どうもクレジットカードやらペイパルやら、色々用意するものが多そうで断念した。残念である。興味を持たれた方は是非ジェニファーさんの公式サイト(http://www.jenniferleitham.com/)から詳細を御確認下さい。