こんなんだったっけ日記

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憂歌団からの便り。〜島田和夫祭り〜

 先月の末に吾妻光良&ザ・スウィンギン・バッパーズを観てきたのだが、その約2週間後の16日に、今度は西日本を代表するブルーズ・バンドである憂歌団の再結成ライブを観てきた。場所は赤坂BLITZである。
 そもそも憂歌団については、その名前は勿論よく知っていたものの、楽曲についてはちゃんと聴いたことがなかったのを、今年の春頃であったか、YouTubeで偶然に下の動画を目にして、度肝を抜かれてしまった。

 御存知「パチンコ」である。これはイカンと思って、早速ライブ盤『生聞59分』を借りてきて、これまた感心しきりだったのだが、90年代から活動休止中とのことで、ライブが観られるとは思っていなかった(内田勘太郎のサイトをチェックしたりはしたが)。
 ところが、ドラマー島田和夫の死を契機に、長い休止期間を終えて活動再開、東京で12月にライブをやるとこれまた偶然に知ったのが11月の半ば。既にチケット販売開始からかなり経っていたが、2階後方の立ち見席ながら何とか席を得た。
 どれほど遠いかと思ったが、思いの外ステージは大きく見え、有り難かった。なお年齢層だが、どこにでも若いファンというのはいるものだから、僕が最年少ということはなかったと思うが、それでも僕はその場の平均年齢を20歳ほどは下回っていたと思う。
 18時半開場、19時半開演。ドラマーがいないので、新井田耕造梶原徹也小林雅之富田京子杉山章二丸の5人をゲストに招いてのライブである(それぞれ、有名バンドの出なのだが、見事に馴染みのない人ばかりだ。強いて言えば新井田(→RCサクセション)か。なお今後は彼がバンドのドラマーとなるらしい)。憂歌団が出て来る前に、この5人がドラマーズと称して最初に全員が出て来て演奏したのだが、これが、言っちゃあナンだが、耐え難いほど詰まらなかった。学芸会の出し物を見せられている気分だった。勿論、個々のドラミングは大変優れているに違いない。しかし5人が一斉にドラムを叩くとなると、大方は全員ユニゾンのドラミングなわけで、迫力こそあれ、実に単調である。それが約30分。本当に辛かった。
 それが終わって、5人が退場、暗転して機材の入れ替えが行われ(場繋ぎにクリーム「I'm So Glad」が流れていた。実は僕はクリームの即興演奏が全然好きじゃないので、これも些か辛かった)、ようやく主役が登場。
 これは良かった、流石に。まず気になるのはボーカル、木村充揮の声がどれほど出ているかであるが、バッチリであった。「天使のダミ声」とは本当によく言ったもので、これを生で聴くというのは、一種「伝説の追体験」という趣があった。
 そして内田勘太郎のギターだ。ややリバーブを掛けすぎではないかとは思われたが、ギター捌きは期待に違わぬ素晴らしさ。特に、名高いスライド・プレー(カルピスの瓶だったか!?)には興奮させられた。ギターは1本(Chakiではない)で、オープン・チューニングの曲でも持ち替えずにその都度チューニングを直していた。それにしても内田勘太郎のスライド・ギターを生で聴くことになるなんて、数年前には予想だにしなかったことだ。
 ベースは花岡献治。凄く古そうな、格好良いジャズベを弾いていた。正直に言って、花岡がべーシストとして優れているのかどうか、音源からはどうも判らないでいたのだが、今日のライブでも一向に判らなかった。コーラスの声は思いの外良かった。
 演奏は前半で3人で演り、後半は一人ずつドラマーを入れて演り、エンディングは5人ドラマーとの共演(これは悪くなかった)。楽曲は、知らない曲が結構多かったのだが、「Hoochie Coochie Man」(これ凄く良かったです)や「Summertime Blues」といったスタンダードを演ってくれたのは有り難かった。最後の方で演った「ボクサー」という曲もとても良かった。
 やはり馴染みのある『生聞59分』収録曲が嬉しく、殊に「お掃除オバチャン」から「シカゴ・バウンド」への流れは、最高だった。
 「君といつまでも」も演った。この曲はあまりに有名で、今では冗談として歌われることの方が多いのではないかとさえ思われるが、憂歌団はマジに演る。これが良いんだ。
  二人を夕闇が包むこの窓辺に
  明日も素晴らしい幸せが来るだろう
 御存知の歌い出し。改めて聴いてみると、本当に美しいフレーズである。
 また、これまた御存知の間奏セリフでは、「死ぬまで君を離さないぞ」を「死ぬまで歌い続けるぞ」に変えて、喝采を浴びていた。
 それから何と言っても「嫌んなった」。くどいようだが、あの歌い出しがナマで聴けるんだから、最高でないワケがない。
 一番聴きたかった「パチンコ」を演らなかったのはいかにも残念だが、憂歌団は年明け以降もボチボチ活動するそうなので、「また観に来なはれ」ということであろうか。また観たい。