椎名慶治のライブは昨年末の『Phase』ツアー(というのか)以来。ZEROとのコラボ(・・・)でCDとライブがあったのだが、どっちもスルーしていたからなあ。その昨年末のライブでも宣言されていたように、今回は「サーフィスの曲は演らない」という条件下でのライブ。考えてみればソロ・デビューして早5年目、サーフィスに準えるとベスト盤『SURFACE』が出て一区切りしたくらいの時期である(自分で書いてみてびっくり)。
ちょっと数えてみたところが、ソロ名義でリリースされた曲が既に36曲もある(重複曲、インスト曲、バージョン違い、サーフィスの曲のリテイクを除く)。これに忌まわしきアストロノーツやらZEROとのコラボ(・・・)曲やら、英語の参考書の付録曲やらを合わせると約40曲になる。サーフィス時代の同時期と遜色ない働きぶりである。良い曲が沢山生まれている。だからこの「ソロ曲だけで勝負」というテーマは、僕には非常に好ましく思えたのであった。
場所は恵比寿LIQUIDROOM。名前は昔から知っていた(結局リキッドルームってどういう意味なんだ?)が行くのは初めて。思ったほど大きくない。なおサーフィスの解散が発表されたのがここでのライブ中(確かファンクラブ会員向け)だったそうである(さっき検索して知った。神戸だと思っていた)。
サーフィス時代も含めて、椎名慶治のツアー・グッズは好みに合うものが少ないのだが、最近は割と良い気がする。今回のツアーTシャツは2種類あってどちらも食指の伸びるデザインだったのだが(鳥獣戯画風の兎が拡声器を持って「HENSEIKI!」とシャウトしている)、いかんせん高い(Tシャツに4000円も出せるか!)のと混んでいたのとで、断念。
ちなみに僕には「ライブには、そのバンド以外のバンドTシャツを着て臨む」というしきたり?があるのだが、今回は絶賛マイブーム中の旺福のTシャツ。これはコレクターズの通販サイトで1250円で買った。
最近、椎名のライブでは割と早い番号の整理券が取れることが多いのだが(競争率が落ちているのか?)、今回も50番台となかなかのもの。スタンディングで、ド真ん中の4,5列目くらい。これまでで椎名が一番近かったかもしれない。良かった。
6時開場、7時開演。毎度思うことだが、スタンディングのハコでこの「開場から開演まで1時間ある」という状況をいい加減何とかしてほしい。30分でいいだろう。一応本を持って行きはするのだが(今回は小松茂美『手紙の歴史』岩波新書、1976年)、一時間読み耽るほどの集中力もないしなあ。立ちっ放しだし。
メンバーは佐藤大輔(ドラム)、櫻井陸来(ベース)、戸谷誠(ギター)、磯貝サイモン(ギター、鍵盤)。見覚えのある顔自体は多いのだが、佐治山口友森磯貝という「お馴染み」の面子とはかなり異なる。山口寛雄とはもう一年以上演っていないのじゃあるまいか。ケンカでもしたのか。ところでトニー(戸谷)って音楽をやめて実家に帰るみたいなことを言っていた気がするのだが、撤回したのだろうか。
それはともかく、このバンドはなかなか良かった。特に佐藤のドラムが良かったなあ。タイトだけれど腕の動きに余裕のある感じで。顔も男前だった。顔といえば、櫻井陸来はまるで高校生のようなあどけない顔つきだったなあ。調べてみると僕より年下のようだ。でも椎名とは7,8年前に知り合ったとか言っていたから、かなり若いころから活躍しているのだろう。上手かったと思うのだけど、こちらの立ち位置のせいか殆ど聞こえなかったのが残念。
椎名の歌唱も、歌詞の漏れ落ちはそこそこあったものの、声はかなり良く出ていて満足できた。
MCの方は相変わらずで、「3割非常に面白いが、6割非常につまらない(残り1割は普通)」という感想を持ち続けている。しかしながらこの6割で大ウケしているのが椎名(サーフィス)ファンの主層なわけであって、毎回「友達になれんなあ」と思う。椎名のMCがつまらないのは、椎名がつまらないのではなくてファンがつまらないのだというのが僕の持論である。そんなわけでかれこれ16年、孤独なサーフィス・ファンであり続けているわけだ。
・・・それはともかく、このバンドは「Frustration No.5」という、ちょっとナンバーガールの楽曲を想起させる上にサーフィスのアルバム名とも被っているような名前であるそうで、1曲目はこのバンド名を冠した新曲だった。意外でありつつも嬉しかった。考えてみればもう新曲をバンバン出してきてもおかしくない時期なのだ。
さて、上述のように今回はソロ曲のみからの選曲という。アンコールも含めて大体18曲くらい演るとして、予想しておいた演奏曲目は次の通り。
・愛のファイア!
・ガブッ!
・可能性は無きにしも非ず
・取り調べマイセルフ
・コングラッチュレーションズ
・I Love Youのうた
・RABBIT-MAN
・バレちゃいけない
・よーいドン
・フラット♭
・遮ニ無ニ
・いざ尋常に
・I'm a サラリーマン
・はないちもんめ
・お節介焼きの天使と悪魔と僕
・いわゆるひとつの愛
・声
・Pussy Cat
実際の曲目は次の通りであった(ゴチックは的中した曲)。
・(新曲)フラストレーションNo.5
・可能性は無きしにも非ず
・疑似パラドックス
・カタムスビ
・いっこずつ
・Giant Step
・いざ尋常に
・愛のせいじゃない 愛は関係ない
・CALL
・いまさら好きだと伝えちゃダメかな?
・声
・I'm a サラリーマン
・バレちゃいけない
・(新曲)
・愛のファイア!
・遮二無二
・お節介焼きの天使と悪魔と僕
・WAIT!
・取り調べマイセルフ
(アンコール)
・I Love Youのうた
・RABBIT-MAN
まあ、的中度合いはボチボチといったところか。知らない曲が3曲もあるとは思わなかった(「カタムスビ」はZEROとのコラボ(・・・)曲)。あと『RABBIT-MAN』からの選曲予想が結構外れたなあ。でも「声」を当てたのはなかなか鋭かったと我ながら思う(MCによるとバンドで演ったのは初めてだという。ほんまか?)。「Pussy Cat」ではなく「疑似パラドックス」を演ったのも「そっちかー」という感じ。
ライブで聴いたことがなかったので個人的な願望があって入れた「可能性は無きにしも非ず」をバッチリ演ってくれたのは嬉しかった。
どの曲も良かったのだが、アレンジを変えた「愛のせいじゃない 愛は関係ない」は特にビリビリ来たなあ。久しぶりに聞いた「バレちゃいけない」「声」も良かった。壮大系のバラードはあまり好きではないのだが、「いまさら好きだと伝えちゃダメかな?」には感動。考えてみたらこの曲、ZERO介入バージョンで演奏されることが多くって、オリジナルのアレンジで聴いたのは久しぶりだったのだ(今のところバラードにZEROを介入させるのは、この曲の他にも「君の声で 君のすべてで...」「冬の終わり」と、いずれも台無しになっているので、そろそろ懲りてもらいたい。アッパー系の曲だと良い働きをしているのに)。
演って欲しくないという願望も込めて予想選曲からは外したものの、でも演るかなあと思っていたら果たして演ってくれた「Giant Step」。これがまたイントロで盛り上がるんだ客が。個人的には、オリジナル・アレンジの「Giant Step」は椎名が(サーフィス時代を含めて)これまでに歌ってきた中で断トツで最低の曲であった。『I & key EN』収録のバージョンでアレンジ面ではかなり改善されたとは言え、基本的な感想に変更はない。でもライブで演奏されると、悲しい哉、ついノッちゃうし歌っちゃうんだ。「♪悔しさをメモライズ」とか、本当にしょーもない歌詞だと思うのに何故だか覚えている自分が悲しい。
ボヤキはこの辺にしておこう。「愛のファイア!」もひょっとして久しぶりだろうか。元々テケテケ風味の曲ではあるのだが、間奏に「Pipeline」をしっかりワン・コーラス入れていた。このように他人の曲をそのまま入れ込むというのは椎名は初めてやるのではなかろうか。面白かった。
「WAIT!」はソロ曲なのか? でも盛り上がったなあ。こんなに「WAIT!」で盛り上がった(自分が)のは初めてかも知れない。そして、こんな風にサーフィスの曲はオマケ程度に1,2曲演るので充分だと思った。サーフィスの曲は、演ったら演ったで嬉しいには違いないのだが、そのせいでソロ曲が削られるのはやはり健全でないと思う。今日演らなかった曲でも聴きたいものは幾つもあるのだし、ましてや新曲は今後どんどん増えていくのだから(今年中にアルバム出るようだ。期待)。