こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

『JUKE BOX』(通常盤Disc 2)感想

 もうすぐツアー「LIVE TOUR JUKE BOX」が始まる関ジャニ∞。今回はドームでしか演らないということやら、ポールの来日公演の方に力をかなり注いだことやら、その他色々あって、参加は見送る形になってしまった。アルバムが思いの外に良かったもんで残念ではあるが、まあ皆様楽しんできて下さい。なんか丸山が新しいベースを買ったという噂を聞いているので、楽器に詳しいエイターさんはその辺りレポート頂けると私としては嬉しい。そういや、「TAKOYAKI in my heart」のPVで渋谷が弾いている特製ZO-3は商品化しないのかな。フェルナンデスさん、ついでにピックも作って売れば一儲けできますぜ。
 ところでこの「TAKOYAKI 〜」のPV、メンバー各人がとても良い表情をしていて、観ていてとても楽しい。特に安田がいい。惚れ直しましたわ。曲の評価も結構上がった。
 さてそれはともかく、ツアーと言えば、『JUKE BOX』通常盤の2枚目に収録されている3曲(このくらいなら本編の後にまとめて入れたらええがな、と思ったのだが、CDの容量ギリギリなのか)の内の冒頭2曲は、メンバー7人が2組に分かれての対決企画であり、その内容は、どちらのユニットがより魅力的かをコンサートの観客が投票で決め、負けたユニットは「過酷な罰ゲーム」としてデートをするというものらしい。率直に言って私なんかにはなんだか意図のよく判らない企画である。
 まあ意図はともかくとして、単純に曲を聴いてみてどっちがより魅力的かというと・・・なかなか甲乙付け難い。両方とも85点くらいの感じで、絶賛には至らないもののかなりよく出来ている、という印象である。


ビースト!!  作詞:錦戸亮 作曲:朱鷺羽ソウ 編曲:高橋浩一郎
 錦戸・丸山・村上のユニット。ユニット名は「侍戦士(サムライソルジャー)」だそうである。ウケ狙いであることがハッキリ判るから辛うじて許せる、というレベルのダサさである。
 冒頭のベース・ライン、ありがちなフレーズではあるがやはりワクワクする。実はここに限らず、ベースはこの曲全体が聴き所である(ベーシストはお馴染み種子田健)。曲調は「Kick」を想起させるハードなスカっぽい感じで、そう言えば東京スカパラダイス・オーケストラのライブ盤でこういう曲を聴いたような気もする。
 また、曲名からも推察されるように、かなり下世話なムードを持っているのも一つの特徴で、非常に楽しい。サビの締めくくりなどに特にそのムードがよく現れている(「どうしよ、ちょっと待って、何にしよ!?」のところ、似たようなのをどこかで聴いたことがあるようにも思うのだが、失念)。このテイストの曲をコンサートでどのように演出するのか、非常に興味がある。
 錦戸亮による歌詞も良い。今までになくコミカルというか、戯画化した感じのある歌詞だが、こちらの方が手法としては成功しているのではないか。「青いのはこの地球か? 俺のケツだったのか?」って、いいなあ。「月とスッポン」という諺があるが、地球とお尻とでは、形状のみならず「青さ」の共通性もあり、しかも両者の「コントラスト」の鮮明さは、月とスッポンより大きい。素晴らしいひらめきである。ついでながらこの部分は丸山が歌っていて(終盤では村上も歌うが)、彼が前面に立った「あおっぱな」との共通性をも感じさせる。奥が深い。
 そしてこれをも凌ぐ出来映えなのが錦戸自身が歌うBメロのフレーズ。
  通勤ラッシュに揉まれて両手は上に
  あれ? 何やってんだ俺? 冤罪防止だっけ? 
  or 誰かに向かってやってたんだっけ「降参」!
 素晴らしい。このモチーフ自体はそれほど独創的なものとは言えないであろうが(実際、「満員電車のバンザイはギブアップじゃない冤罪対策」というフレーズがファンキー・モンキー・ベイビーズの「ヒーロー」という曲にあるそうである)、「降参!」のシャウトのキレの良さ(最高!)と相まって、何度聴いても震えが来る。本編の「Your WURLITZER」もそうだが、ちょっと下品になるくらいに力を込めた作品の方が、錦戸は魅力が出るんじゃないだろうか。なおこのBメロは2番では丸山が歌っているが、1番での錦戸と較べると歌手としての性格の違いがはっきりと出ていて興味深い。
 歌詞では、終盤の「どこにいるの? 寂しくない? 泣いてるの?」というのも、独りよがりな感じが非常に好きだ。
 話は変わるが、2番に出て来る、主人公が一目惚れする相手方の声色(「いらっしゃいませ」と「店長〜」)に、私は毎回イライライライラしてしまうのだけれども、皆さんは平気ですか。まさかこれが現代日本の標準的な「美人の発声法」なのだろうか。所謂「ブリッコ」よりも一段上のノータリンさを感じるのだけれど。ともかく私だったらこんな喋り方する女の人には絶対に惚れない。
 ついでながら、この部分の村上の必死な口説き文句、最終的に「とりあえず、ハンバーガー一つ」という「日常の言葉」に着地するのが笑える。落語や小咄のオチのようである。
 なお、このセリフに後続する村上のソロ歌唱は、なかなか良い出来だ。特に最後の寂しげな「俺のケツだったのか?」が、冴えない感じが出ていて非常に良い。ここから一転、ドラを鳴らしてクライマックスに入るというのも良い。
 終盤での丸山「This is Japanese Style!」の後に、どう文字化すればいいのか、とにかく「ハッハー」みたいに言う奴、ありますよね。ウエスタンみたいなの。これ、彼は今までにも何度かやっていると思うのだが、何がキッカケで彼はこれを自家薬籠中のものとしたのであろうか。面白い。日本の歌手であんまり多用する人いないんじゃないか。
 上で女性の声にイライラすると書いたが、実は女声は他にもあって、多分1番、2番ともにサビのバック・コーラスは女声ではないかと思うのだが、間奏を挟んでの大サビでは大々的に女声のコーラスがフィーチュアされている。「いらっしゃいませ」「店長〜」と対照的に、こちらはかなり気持ち良いです。クレジットには「堀 望美:Chorus」とあるが、ひょっとして両方この方なのだろうか。


狩(仮)  作詞:ヨシャオ族 作曲・編曲:大西省吾
 タイトルのセンスからして、渋谷がこっちにいるのだろう、と推測していたが、偶然か否か知らないけれどとりあえず正解だった。こちらのユニット名は「伝説の狩人」。ちょっと「ズッコケ大脱走」の寸劇を思い出させる。そう言えば安田もこっちにいる。
 「狩人」というと、(あずさ2号は措くとして)なんとなく昔のヨーロッパの雰囲気をイメージさせられるのだが、聴いてみるとアフリカだった。のっけからスキャット、そしてビーチ・ボーイズばりのコーラス。これをコンサートでちゃんと再現するか否かで評価はかなり変わってくる。
 冒頭部は丸山のアノ曲を連想せざるを得ない雰囲気であるが、全体的には結構ハードな作りである。作曲は大西省吾。「ビースト!!」もハードな曲であるが、ムードは全く違うのが実に面白い。これは歌詞や楽曲構成の違いもさることながら、伴奏の色合いがかなり違うことも大きいだろう。「ビースト!!」はバンド+金管セクション+パーカッション(シロフォンも)という、ビッグバンドのスタイルで、「生演奏」の色合いが強いのに対して、「狩(仮)」はそもそも曲の作りからして生演奏にこだわるのは現実的ではないと言うことで、打ち込み色が結構強く、お遊び的な楽器の音(これも打ち込みだけど)も色々入っている。結果的に、現代日本が舞台である「ビースト!!」よりも、未開人(って差別用語っぽいので避けたいのだが、適切な代替案が浮かばないので取り敢えずそのままにしておく)を彷彿させる「狩(仮)」の方がデジタル風味がずっと強くなっている。面白い。
 冗談のようなフレーズをちょいちょい挟み込みながら(でも全編真顔で歌わなきゃなダメだな、コレは)、サビなんかはいたって真面目な感じだし、エンディングには「ひょっとしてこれは感動的なのでは」と錯覚させる、壮大な作りである。作詞はヨシャオ族とある。ヨこやま・シぶたに・ヤすだ・オおくら、を合わせてヨシャオなのであろう、多分。そんな彼らによる冒頭のフレーズ。
  男の本能それは狩り
  朝から晩までそればかり
  狙い定め間合いを計り
  明日へ繋ぐ光り
 なんと美しい脚韻であろうか。凄いよこれ。4人で考えたのかな。最後を「かり」にするという縛りがあるのに、各々のフレーズに全く無理がない。正直に言って、この曲の歌詞の中でこの部分がズバ抜けて良い。
 それに続く「仲間を守るため仲間を信じるんだ/家族を守るため自分を信じるんだ」という部分は、まあ家族の方は「狩り」というテーマと密接に関係しているので良いとして、「仲間」というのが個人的に歌詞に出て来る言葉としては好きでないので、マイナス。
 尤も、上記の冒頭部以外にも惹かれる歌詞はあって、「お前への愛だけはかれない」というのは枯と狩が掛かっていて、上手い。ただ直前の「命をかけて涙を狩った」が意味がはっきりしないのが惜しい。
 楽曲的にも、本編の「TAKOYAKI in my heart」ばりに豊かな展開を持っていて飽きさせない。サウンドも、アフリカ風ということでドラム/パーカッションが強調されていて、打ち込みっぽい雰囲気も強いのだが(あのホラ貝は打ち込みだよな)、意外とベースやアコースティック・ギターも魅力的に鳴っている。また、ラップ調の一番激しい部分を経ていきなりパイプオルガンが鳴り響くのも大変面白い。それに続くのはこんな歌詞。
  だけど思うように狩れない時もある
  そんな日に限ってお前をキツめに抱いてまう
  もう疲れたよ慰めておくれよ
  甘えるな甘えるな明日はきっと上手くいくさ
 いきなり「大阪レイニーブルース」的な世界観になってしまうのが凄まじい。これがさほど聴き手に違和感を与えないのは関ジャニ∞の役得と言えよう。ここは4人のボーカルも効いている(ここが肝心であることを本能的に察知したのであろう)。特に2行目の「そんな日に限ってお前をキツめに抱いてまう」は、他の3人が歌ってもそれなりに味わいは出たであろうが、渋谷が歌うと格別に、なんというか、ナマナマしい感じが出ている。素晴らしい。あと、安田の「甘えるな、甘えるな・・・」というのも、歌詞・歌唱ともに非常に良い(いや、4人とも良いけどね)。この部分、「大丈夫、大丈夫・・・」でも文意は通じるし、そちらがむしろ「普通」の選択だと思うのだが、「甘えるな」の方が100倍良い。
 ちなみにこの部分は3行目からのベース・ギターも非常に魅力的です。気付かなかった人は是非聴き直して欲しい。


All is well  作詞:関ジャニ∞ 作曲:安田章大 編曲:野間康介
 All is well. あれ、allって単数でいいんだっけ、と心許なくなるが、シェイクスピアの「終り良ければ全て良し」の原題は「All's well that ends well」だそうで、だから大丈夫なのだろう、おそらく。
 さて安田章大の提供曲と言えば、直前が「クルトン」、その前が「Dye D?」で、実験的な作品が続いていたが、今回はかなり正統的なJポップのバラードになった。その点、個人的にはちょっと喜びきれないところがあるのだが、しかし今回も曲は本当によく出来ている。はっきり言って楽曲的にはシングル・カットしない理由はどこにもないだろう。メロディー・編曲ともにありきたりと感じられる部分もあるが、Bメロなんかとても良い(1番の村上、いいですね)。サビのメロディーも意外と凝っている。
 また、最後のサビが転調するのだが(これ自体は非常に良くあるパターン)、これが、伴奏がいきなり静まり、鍵盤がポーンと鳴って転調するというもので、人によっては違和感を覚えるんじゃないかと思うほど唐突なやり方なのだが、私はここが大好きで、とてもドラマチックだと思う。何度聴いてもハッとさせられる。
 また、2番後の錦戸パート(溢れ出す想い〜♪)をCメロとすると、最後のサビが終わって、Dメロとでも言うべき新しいフレーズが出て来て(歌詞自体はサビと共通)、これがバックの「All is well」のコーラスと共に展開していくさまは本当に美しく、恍惚とさせられる。見事に楽曲のクライマックスを飾っている。
 さてエイター的にはこの曲の最大の見所は、メンバーがリレー式に歌詞を書いているということであろう。私が一番好きなのは2番Bメロの安田で、「いつまでも続く様 夜空にも架けるよ 消えることない虹を」というのはとても美しいイメージで(ディズニーみたいですね)、素晴らしい。虹が微かに関ジャニ∞を想起させるところも良い。また、最初の3人、則ち渋谷・丸山・村上によるフレーズもなかなか良いと思う。他3人は、ちょっとありきたりでフックに欠くかなと、私には感じられる。
 ただそれよりも気になるのは実はサビで、これは作曲者である安田が担当したとのことだが、先ほどのソロ部分とは打って変わって、なんとも面白みのない歌詞である。これは、7人それぞれのフレーズをサビで集約しなくてはならないが故の、致し方ない部分はかなりあると思うのだが、結果としてJポップ的なメロディーにJポップ的な歌詞が載っている、というだけのことになってしまっている。ちょっと残念である。
 ところで、この曲はバンド曲なのであろうか。どうもそういう感じがある。だとすると、村上忙しいぞ。期待したい。