こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

『FIGHT』感想

 今更ながら、安田主演の『ばしゃ馬さんとビッグマウス』のトレーラーがアップロードされているので見てみたが、どうもテーマソングは関ジャニ∞じゃないみたいですね。じゃあアルバムはいつ出るの? もうモノ自体は完成しているじゃないかと思うのだが・・・以前に書いたダブルアルバム疑惑、充分あり得ると未だに思っております。
 まあそれは措くとして、オリジナル・アルバムとしては今のところ最新作である『FIGHT』、実はリアルタイムで聴いた初めてのアルバムでもあるのだが、その感想をまだこのブログで書いていない。どうして書いていないかと言うと、書くのがちょっと躊躇されるからである。どうして躊躇されるかと言うと、本作に対する私の評価は決して高くないからだ。
 最初に聴いた時にも「うーん、ちょっとなー(決して悪くはないんだけど、うーん)」と思ったし、今でも大凡同様の意見である。だから『FIGHT』が大好き!というヒトは以下の文章は読まない方がいいと思う。


(1)総論篇


 好きな曲が全然ないわけではない。それどころか「T.W.L / イエローパンジーストリート」は関ジャニ∞のシングル曲として屈指のものだと思うし、PVも作られた「Fight for the Eight」はいつ聴いてもめちゃくちゃカッコイイ。しかし、全体的に見ると、いまひとつ「乗り切れない」印象がある。「面白さに欠く」と言っても良い。
 どうして私にとって『FIGHT』はイマイチなのか。例えば『PUZZLE』と較べて何がどう違うというのか。これを明快に説明するのはなかなか難しくって、というか自分自身でもよく判っていなかったりするのだが、ともかく考えてみるに次のような要因が挙げられると思う(以下に書くのは「私が個人的にイマイチに感じてしまう理由」であって、「客観的に見て芸術作品としてイマイチである」と言いたいわけでは全くないので、そこは誤解のなきよう)。


・音が分厚くてボーカルが埋もれている気がする。
 伴奏がどの曲も非常にリッチで、金がかかっていることはよく判るんだけど、どうもボーカルがあんまりクッキリと聞こえてこない印象がある。アルバム中でバンド曲が3曲あるのだが(「宇宙に行ったライオン」「ツブサニコイ」「イエローパンジーストリート」。PVでバンド演奏をしている「マイホーム」「Fight for the Eight」を含めると5曲)、これらもサウンドが非常に凝っているもんで「バンド感」ということでは却って減退している。それでまあ、どの曲を聴いても音の壁が分厚くて、ちょっと息苦しい(私みたいな「小編成のスカスカな音の方がむしろ好き」というような人間にとっては特に)、ということになる。
 あとボーカル自体も、『GIFT』『8UPPERS』なんかに較べると各人をきちんとフォーカスするというスタンスではないように感じられる。そのせいで7人いる割には層が薄い感じがする。「7人感」とでも言うべきものが希薄になっている。
 実は、こうした問題は映像化すると解消されるのである。ライブではCDにおけるようなボーカルのバランス調整が利かず、それで結果的に7人が均等に、とは言わないまでも、各人であまり差がなく聞こえてくるし、また視覚的に認識できることもあって演奏上のボーカルの目立ち具合がCDより結構高くなる。また歌っていなくても姿は映っているから、「7人で歌っている」というイメージが容易に得られる。これも「聞こえ方」に少なからず影響する。
 実際、私はFIGHTツアーにも足を運んだけれども、コンサートで観た時には「『FIGHT』の曲もこうして聴くと結構ええな」という印象を持った。またCDでは声が埋もれて平板な印象があった「Dye D?」を、8ESTのツアーでは非常に格好良く感じたのも、ライブでは各人のボーカルがガツンと前に出てきていたからであると思う。


・バラードが多い。
 アルバムが長い、というのも要因に挙げようかと思ったが、長いのは『ズッコケ大脱走』や『PUZZLE』も同じである(『8UPPERS』が傑作である要因の一つはズバリ「長さが適切」ということだと思う)。アルバムを長くするのはバラードであるが(テンポが遅い分、どうしても4分台、5分台になりがち)、前々作『PUZZLE』のバラードが1曲(「My Last Train」)、前作『8UPPERS』のバラードも1曲(「願い」)だったのに対して、本作のバラードは「365日家族」「ツブサニコイ」「Water Drop」「wander」と4曲もある。バラードが14曲中4曲というのが多いか少ないかというのは、人により感じ方は様々であろうが、私にとっては多すぎる。
 しかもどの曲も結構ベタベタのバラードだ。もうちょっと小品的なバラード、或いは「desire」「願い」のようにあまり仰々しくないシックなバラードであれば印象も違ったと思うのだが。
 バラードが多い分、ミドルテンポのポップスがなくなった。これは『PUZZLE』でいう「渇いた花」、『8UPPERS』で言うと・・・まあ「アニマル・マジック」かな。『FIGHT』だと「マイホーム」があるにはあるが、シングル曲ということでやや華やかすぎる。
 やっぱりこれまでの作品に比べて「音の隙間」がある曲が少なくなった(シングル曲の割合が大きいということもこの傾向を導く一因であろう)というのが私には非常にマイナスに感じられるのであろう。


・好きになりきれない曲が多い。
 こりゃーもう完全に好みの問題ですが、なんかねえ、「きちんと聴いてみると決して悪くはないのだが、好きと言うにはナンカ足りない」という曲が結構あるのだ。折角なので本作の曲を「A.大好きな曲」「B.比較的好きな曲」「C.イマイチな曲」に分けると次のようになる。
A.「Fight for the Eight」「T.W.L」「イエローパンジーストリート
B.「365日家族」「Dye D?」「マイホーム」「wander」
B〜Cのビミョーなところ.「モンじゃい・ビート」「宇宙に行ったライオン」「Fly High」「フリーダム理論」
C.「Water Drop」「ツブサニコイ」「輝ける舞台へ」
 要するにビミョーな曲が多いのだ。悪くはないし、好きな部分もあるが、ちょっと面白みに欠く気がする。上記の下2段はそういう曲だし、Bの曲にもそういう印象が少しはある。


・ソロ曲集が詰らない。
 これは異論のあるエイターが多かろうと判った上で敢て書くが、本作のディスク2、則ちソロ・ユニット曲集は、本当に詰らない、と私は思う。前作『8UPPERS』のソロ曲集とは全く較べものにならないし、『ズッコケ〜』や『PUZZLE』のと較べてもなお劣るというのが私の感想である。
 曲数も少ないが、内容も面白みに欠く。「スケアクロウ」はまあ、いつもの錦戸ということで良いとしても、「夜な夜な☆ヨーNIGHT」は「こういう曲」としての完成度は認められるにしても繰り返し聴きたいとは思えないし、「パンぱんだ」も「可愛いね」と思わなくはないがなんか物足りない。そして「あ」は歌詞が私には全く受け付けられない(か・ん・じゃ・に・え・い・と!というところは好きです)。この歌詞にこのメロディー(アレンジ)という組み合せも許し難いほどにありきたりと感じる。
 ソロ曲集への斯くの如き評価の低さが本編である『FIGHT』の評価にも悪影響を及ぼしている気がする。


 最後についでながら書くと、確かFIGHTツアーのパンフレットだったと思うが、錦戸が「今回は制作にあまり関与できなかった」というようなことを語っていた。これは結構不安感を煽る言葉である。私が本作に対して感じる違和感が、もし彼らが「あまり関与できなかった」という点に多少なりとも起因するものであるとすれば(その可能性は高くない気はするものの)、本作よりも更に忙しいであろう状況下で制作される次回作は、更に違和感を与えるものになりはしないか・・・。ちょっと不安だ。
 以上がアルバム全体に関する現在の感想である。今後意見がコロっと変わって「『FIGHT』こそが傑作だった!!」と言い出すこともないとは限らないが、その時には改めて感想を書き直します。
 さて、各論篇は別稿とするつもりだったのだが、ここで終わってしまうと悪口ばかり書いてかなり感じが悪いような気がするので、それを和らげるために(和らぐかな?)各論篇も以下に併せて載せてしまう。


(2)各論篇


1. モンじゃい・ビート
 前作『8UPPERS』ではコミカルな歌謡曲は省かれていたので、「普通のJポップ歌うだけのグループじゃないですよ」ということをド頭で示したのはエライと思う。いきなり駄洒落だしな。
 怒髪天の提供。歌詞はシンプルな「男気」の歌ではあるが、例えば「エイトビート」のエイトに∞を宛てたのなんかは関ジャニ∞への提供曲ならではだし、あと個人的に「どや顔」という新語が結構気に入っているのでこの言葉が使われているのも嬉しい。努力はするが辛そうなところは見せない、という一つの美学がここでは示されている(全くの余談ながら同年にリリースされた椎名慶治「RABBIT-MAN」でもこの語が用いられていた)。ロザリオス中村達也RIZEのKenKenなど、演奏陣が豪華なことも話題になった。重力逆転風に見せたりカラオケ画面を模したりで遊びまくりのPVも楽しかった。「総論篇」でB〜Cのビミョーなところに位置づけたが、Bでいいかな。
 惜しむらくは、やはりメロディーにもう少しひねりが欲しかった。感情が入れやすくてカラオケで歌いやすいのはいいんだけどね。そう言えば2番Aメロは大倉、村上ともに非常に良い仕事をしている。


2. 宇宙に行ったライオン
 これは新境地と言うべきで、童話ないし寓話調の歌詞も新鮮だし、サウンドエレキギター(イントロ超格好良いなあ。それに絡むエレキベースも良い)、アコースティックギター、ピアノが綺麗に鳴り響いて、それにバンジョーなんかも入ってきたりして、実に華やかである。そしてこれをバンドで演るとはちょっと思わなかった。
 曲は、「遠くへ」の1フレーズ連続だけで出来たBメロにも高揚させられるし、しかもこのフレーズがサビに至ってもバックで鳴っているのが何とも言えず良い。
 ボーカルの処理も独特で、近年の楽曲では珍しいほど渋谷を前面に出している。そりゃ真剣に聴けば他メンバーの声も聞こえては来るが、普通に聴けば「渋谷リードボーカルの曲」と捉えられる。これが私にはちょっと違和感あるんだよな。ライブならいいとして、音源だと総論篇で書いた「7人感」が見えてこない。まあ「これはこういう曲」と思って聴けばいいものではあるのだが。


3. Fight for the Eight
 素晴らしい。本作の非シングル曲の中では断トツで好きな曲。
 シンプルなギター・リフからパワフルなドラミングに連なるイントロからして非常にカッコイイし、ちょっと軽快な感じのAメロから、Bメロ(冷たい風も何故か心地いい・・・)で急に緊迫感が出てきて、サビ前で一気に爆発するところなんか最高に爽快である。サビもクール。「いつか叫んでたSOS」というのも惹かれるフレーズ。「カサノバ気取りで」いきがっていた未熟者がいきなり現実を叩きつけられて怖気づいた様子、と私は捉えているが、全然違うかも。
 PVでバンド・スタイルも部分的に映しているだけあって、演奏も格好良い。ギターとドラムについては上述したが、ベースも最高。これ練習しました。終盤がアドリブちっくで複雑なので、そこはあんまり手をつけられていませんが。ベースは1番はサビ前で初めて入ってくるのだが、2番ではAメロから鳴っている。ここでの音程差が結構あるフレーズがシンプルながら痺れる。
 PVも良い。バンド・パートとダンス・パートに分かれていて(前者は安田・丸山・大倉の三人だけだったと記憶するが)、どちらも格好良い。安田の髪型なんかはパンクっぽくて、珍しく黒いレスポール(渋谷が以前使っていたやつに非常に似ているが、ピックガードがついている)を使っているのもそれに雰囲気を合わせたのか。丸山がプレベを弾いている(映像ソフトとしては現在唯一)のも、パンクならプレベでしょ、ということ・・・なのかも知れない。しかしバッチリ化粧した渋谷はパンクというよりもザ・キュアーだよな。
 ダンスはPVでも格好良かったが(サビの手をふらふらさせる仕種が好きだ)、これはツアーでは電飾を使ってド派手に仕立てていた。PVのゴシック・ホラー調とは大違いだが、あの思い切った転換は大正解だったと思う。生で観ていて、カッコエエ〜(さっきからカッコイイばかり書いてるな)と思いました。
 これもまあ「7人感」は比較的希薄な気がするけれども、曲と演出がサイコーなので気にならない。
 

4. T.W.L
 シングル曲。これも大好きです。ハイテンションのシングル曲はこれまでにもあったが、彼らとしては今までになく現代的なパワー・ポップである。提供はゆずの北川悠仁(翌年にセルフカバーを発表)。曲名はタオルの意味(というか略記)だそうで、コンサートで観客がタオルをぶんぶん振り回したくなるような曲を目指したということなのであろうか、確かにこれは聴いていて「アガる」。イントロの「アッアー、アーアアーアー」というコーラスを聴いた時は「なんか安直な感じやなー」と思ったのだが、あの畳み掛けるようなAメロに早速やられた。のっけから「前世今世来世いいぜ人生」って、凄いよな(余談ながら「今世」よりも「現世」の方が一般的な語と思うが、確かに「今世」の方が語呂は良い)。そして次が「廻り廻って僕らまた逢って」。なんかもう世俗的感覚を一行目から超越している。カッコイイです。
 楽曲も、メジャーコードでガンガン飛ばしていて爽快だし、Aメロに対してBメロがブースターのようになっているのは「イッツ マイ ソウル」を思い起こさせる。このBメロがまた、いい。ライブだと安田の上ハモが強調されて殊に気持ち良い。安田と言えば間奏前の「好きにやっちゃて〜えぇ〜えぇ〜」も気持ち良い。間奏後の、フィルター掛ったような状態から始まる渋谷のソロも面目躍如の出来栄え。
 間奏と言えば錦戸のブルースハープ。ここでこの楽器を持って来たのは「ゆず提供ですよ」という一種のパロディ感覚であろうか。ライブでは当て振りながら毎回ちゃんと錦戸がブルースハープを取り出しているのが可愛らしい。


5. Fly High
 前作で「Baby Baby」を提供してくれたロッカトレンチ。「Baby Baby」は70年代、或いは一周回って90年代と言うべきか、いずれにせよちょっと昔風な雰囲気を持つ曲であったが、今回は一転してかなり現代風。だからダメってことはないのだが、アレンジに工夫は見えるものの今一歩の印象。ライブでは結構楽しかった。


6. 365日家族
 この曲は伴奏が非常に丁寧な作りで良いです。ストリングスが利いて結構壮大な曲のイメージがあるが、基盤のバンド・サウンドが思いの外気持ち良い。イントロのベースからして非常に魅力的だし、Aメロのアコギと、左で小さく鳴っている空間系のエフェクトを掛けたエレキギター、Bメロのピアノと歪みのエレキギター等、どれも聴きごたえがある。ドラムのサウンドも好きだ。ウインドチャイムはちょっと余計な気がするが。意外とストリングスは補助的な役割で、むしろ重要なのはピアノか。いずれにせよ非常に出来の良いバックトラックだと思います。またメロディーも綺麗だし、下ハモが利いているサビ冒頭(365日か〜ぞく〜♪)も良い。
 ただ歌詞がちょっとな。私は苦手なんだ、こういう、感動を誘わんとする歌詞が。
  性格や顔や言葉や時代が違っても同じことがある
  それは人は誰も人から生まれてきたこと みんな泣きながら
 反論のしようがないことである。しかしなんつーか、相田みつをみたいっつーか、こういう「反論しようのない名言」みたいなのって、ちょっと素直に受け止められないんだよな。私の性格に問題があると言えばまあ、それまでですけど(と言いつつ、ライブで安田が手話を交えてこの曲を歌うのを見た時は感動した)。
 あと、提供先のドラマの内容も関係しているのかも知れないが、男としてはこの歌詞にはつい「父親の立場はどうなるねんっ!」とツッコミを入れたくなる。「子にとっての母の大きさに比べれば父なんてさ・・・」という事実?を前提として歌っているのならば、まあ唸るしかないが。タイトルに「家族」とある割には母子関係しか歌っていないような。


7. Dye D?
 煌びやかなバラードの次にこの曲を持って来た選曲センスが心憎い。短い曲でもあるので(約3分)、インタールード的な役割を意図したものであろう。
 詞曲は安田章大。メンバーの曲がアルバム本編に入るのは「ONE」を除くと初めてであろう。詞はBメロ以外英詞である。未だに何を歌っているのかよく知らない。タイトルはどういう意味であろうか。dyeは「染色する」の意味でいいのかな? 後続のDがドラキュラの意味ならば、ドラキュラ色に染め上げるということでありましょうか。
 編曲はアコギを強調した部分もあるがかなりサイバーな感じで、間奏でも大胆にリズムを分解している。これが脱構築というやつか。違うか。
 その点でダンスナンバーとしては扱いにくいはずだが、ライブではこの部分に操り人形のような振付を当てて上手く処理している。流石である。
 既に総論篇の方でも書いたように、CDで聴いた時には間奏に驚かされこそしたものの、ボーカルが埋もれて平板な印象を受けて、あまり大した楽曲とは思われなかった。FIGHTツアーの東京ドームでもその印象は変わらなかった。変わったのは8ESTツアー(於 静岡エコパアリーナ)で比較的まっとうな音響の中で聴いて、ボーカルがしっかり前に出てきているバージョンを聴いた時だった。ありゃあ格好良かったなあ。きちんと定位すればカッコイイ曲なんじゃん、とそこで気付かされた。∞祭バージョンも、勿論最高です。


8. Water Drop
 なんだこれは。いや、ちゃんと聴いてみると、よく出来ているんです。作りこまれていて、耳に心地よい。これは多分「関ジャニ∞もジャニーズなんだぜ!(標準語)」というところを見せる曲なのだろう。コンサートでも噴水とライトアップを採り入れて(日本の演芸で扇子とかから水がぴゅーっと出てくる芸があるが、あれに似ていた)、いかにもお洒落であった。
 でも如何せん、わざわざ聴こうと思わせない曲なんだよな。あ、後半の「今も僕の隣で笑ってくれてた?」のメロディーは好きです。
 これも意外と短い曲なんですね(約3分半)。
 

9. ツブサニコイ
 まずは気になるタイトルの意味であるが、これは漢字仮名交じりにすると「具に恋」となるものであろう。ツブサニというのは副詞であり、副詞は用言を要求するから、後続部分には動詞なり形容詞なりがあってほしい。ところがこの題はコイ(恋)という名詞で終わってしまっており、据わりが悪い(ツブサナコイなら何の問題もない)。これを解消するには二つの解釈がある。
 解釈その一。コイを単なる名詞でなく動詞的に捉える。則ち、「恋する」ないし「恋している」という動詞句のいわば省略形として「恋」という語を用いている、と見る。これはキャッチコピーなどの短いフレーズには比較的よくあることで、例えば「輝く君に、一目惚れ」という広告文があったとすると、この「一目惚れ」は辞書上の分類では「名詞」になるが、ここでは「一目惚れしてしまった」又は「一目惚れしそうだ」という動詞の意味で用いているのである。このセンで解釈すると「ツブサニコイ」は「(相手のことを)事細かに(=ツブサニ)恋している(=コイ)」という意味になる。
 解釈その二。後続の用言が省略されている。実際の歌詞の中では、「ツブサニコイ 上手く言えずに」となっている。この場合、コイ(=自分の恋愛感情)について、相手に上手く、ツブサニ(=事細かに)伝えられずに、という風に、ツブサニは動詞である「言う(言えずに)」に掛っているのだと考えることができる。つまり「ツブサニコイ」は文ではなく文の一部である。
 しかしこれだと、2番の「ツブサニコイ 馬鹿正直に生きてはいつも転んでしまう」ではツブサニがどこに掛っているか判らない。また、間奏後の「仕種に愛」の解釈にも困る。
 解釈その一の方が説得力は高そうである。実際、作詞者であるTAKESHI氏自身が「『ツブサニコイ』とはズバリ「あなたの全てに恋しています」って意味です。」と本人のブログで語っており(2011年7月10日の記事。「恋しています」と動詞形になっているのに注目)、この解釈が適切であったことが判る。「全てに」というのは、「事細かに、詳細に」というツブサニの意味をやや和らげて言ったものであろう。
 ところで、インターネット上でこの曲名の意味に関して、ツブサニを「古語でヒタスラニの意味」と説明しているものを見かけるが、一体何に拠ったものであろうか。私はこの語をヒタスラニの意味で用いた例を知らないが、それはまあ私の不勉強としても、『日本国語大辞典』(小学館、第2版)でも「(1)すべてそなわっているさま。もれなくそろっているさま。完全なさま。」「(2)こまかくくわしいさま。つまびらかなさま。詳細。」を掲げるのみである(1の意味は現代語にまだ残っているのかな?)。そもそもツブサを古語と言い切ることに非常に違和感がある(「文語表現っぽい」とするものもあり、これだと納得できるが、しかしヒタスラニの意味での実例が示されているわけではない)。
 なんだかタイトルだけで随分書いてしまったが、肝心の楽曲について。「Dye D?」を挟んでいるとは言え、バラードが3曲も続いてちょっとしんどい感じである。楽曲としても、私は「365日家族」の方に軍配を上げたい。決して悪くはないが、ちょっと仰々しいし、ストレート過ぎてもう少しフックが欲しい感じもある。
 実は歌詞にもやや違和感があって、特に間奏後の大倉ソロ部分。
  仕種に愛 君は美しい 見た目以上にその全てが
 この「仕種に愛」っていうの、最初聞いた時「乳房に愛」に聞こえてビックリしましたが、まあそれはいいとして、「君は美しい 見た目以上にその全てが」ってヘンじゃないですか。「見た目だけじゃなくその全てが」なら、まあ判るけど。現状だとちょっと日本語が練れていないと思う。また仮に「君は美しい 見た目だけじゃなくその全てが」だったとしても、「そんなことあるかねえ…」と感じてしまう。恋は盲目と言えばそれまでだが、「紳士ぶってウケルとか言う」なんかの方が遥かにリアルではある。
 PVはみんなスーツでキメてなかなか格好良かった。あと、ライブだと錦戸のアコギがかなり利いていて嬉しい。


10. イエローパンジーストリート
 作者はTAKESHI。偉い。この曲を初めて聴いた時は、「関ジャニ∞もこんな曲を歌うようになったかあ」とちょっと感慨深くなりました。『クレヨンしんちゃん』劇場版のエンディング・テーマになったそうだが、これ映画館で聴きたかったなあ。行けば良かった。
 この曲については主にビジュアル面についてザ・ビートルズとの関連を書いて褒め称えたことがあったが、勿論楽曲自体も大好きである。ビートルズの影響も勿論窺えるが、私はむしろ70年代のアメリカン・ロックの雰囲気が強いような気がする。例えばボストンが好きな人なんかにもウケが良いのではなかろうか。
 バンド+ブラスのサウンドも非常にカッコイイ。これコンサートで演ったことあるんでしょうか。FIGHTツアーでは「シングル曲なのに演らないのか!」と驚愕した。
 難しくって演奏できないのかと思えば、テレビ番組(少年倶楽部プレミアム)では一回披露しているんですね。
 しかも悔しいことに、これが大変出来が良いのだ。なら演ってくれよ! 今からでもいいから。
 弦楽器はアコギ、エレキ、ベースがそれぞれ利いている。特にベースはビートルズのファンには堪らないアレンジで、私も例に洩れずコピーした。『BAND SELECTION』に楽譜が収録されているが、細かいフレーズは省略されていたり僅かながら誤りも見られるので、そこは耳コピでカバー(テンポが遅めだし、ベースの音量も比較的大きいので助かった)。ただ、2番Aメロでなんかピッキングハーモニクスのような音が出ていてカッコイイんだけれど、同じように鳴ってくれないので下ハモの音を足して誤魔化している。再現のコツを知っている人がいれば教えてもらいたい。
 なお最後にアドリブっぽいフレーズが入るのだが(バンドスコアでは省略)、上記の映像だと丸山はこの部分も割と忠実にコピーしている。
 ボーカルも結構各人が目立っていて、良い感じである。ところでCDでは1番終わりに「Hey!」という掛け声が入っているのだけれど、異常に音量が小さいのは一体どうしたわけであろうか。
 

11. フリーダム理論
 スキマスイッチの提供。多分アルバム曲の中で人気が高いものの一つではないかと思う。ツアーではアンコール曲じゃなかったかな。曲もよく出来ているし(歌詞は前作の「BOY」を彷彿させる)、演奏もピカ一だ(Bメロのベース格好良い)。でもなんか足りない。


12. 輝ける舞台へ
 ケツメイシの提供。私にとってはアルバム中で一番評価の低い曲である。メロディーはともかくとして、アレンジがあまり気に入らないが、何よりも歌詞が嫌だ。
  なりたい僕は強い男 忘れない感謝清い心
  決して目立たず人を持ち上げ 頼られるいざという時だけ
  沈んだ気分である者を思い 自分が自分であることを誇り
  相手を倒す人間でなく 何度も立ち上がる人になる
 文字を打ち込んでいるだけで気分が沈んでくる。いわゆる説教ラップというやつであるが、先述の「365日家族」と同様、ここで歌われている内容には文句のつけようがない。私だってそういう人になりたいと思っているのだ。
 しかしその一方で、こういう歌詞には反抗心がふつふつと湧き出るのもまた事実である。何故か。こんな小学生の頃には既に親から教わっていたようなことを、どうして今更ことごとしく言われにゃあならんのじゃ!とムカついてしまうわけである。おそらくそういう人は私以外にも結構いるんじゃないかと思う。
 そしてこの曲の歌詞は、そんなフレーズばっかりだ。内容も言い方も、どこかで聞いたようなものばかりである。勿論、こういう歌を聴いて改めて「そうだ、感謝の心を忘れないようにしよう!」と思い立つ人がいるのならばそれは紛れもなく音楽の効能である。しかし私にはちょっと耐えられない。
 ライブでは結構楽しかったですけど。


13. マイホーム
 これは結構好きな曲です。風通しがいい感じで。でもあんまり書くことないな。PVも良かった。演奏シーンがありましたが、バンドで披露したことはあるのかな?


14. wander
 wonderではないので注意。片仮名で書くとどちらもワンダーだが、原語では発音が異なる。wanderは放浪するという意味ですね。ポール・マッカートニーに「wanderlust(放浪癖)」という名曲があって、私はそれで覚えた。
 これも、メロディーから言っても歌詞から言ってもサウンドから言っても、私の好きなものでは決してない。メロディーは、Aメロのだらだら続く感じのフレーズがなんか嫌だし、歌詞はなあ、歌詞カード見てもゴタゴタしてて読む気が削がれる。なんか精一杯「内容のあること」を書こうとしている気がする。気のせいかもしれんが。サウンド久米康隆が編曲を手掛けている割には私の好みに合わずツヤツヤな感じである。まあ曲には合っているのだろうけど。
 などと言いつつ、この曲には憎みきれないところがある。上でけなした歌詞にしても、
  やっと出来あがっていた等身大のパズルは 心臓部分のピースだけが抜け落ちていた
 というフレーズは胸に迫るものがあるし(ここは安田の歌唱も素晴らしい)、また終盤のラップから連なってくる、
  降りる途中で途中下車した俺の目の前に
  少年が両手いっぱいに夢や希望抱え込んで笑ってた
  見覚えある 俺は一目で誰だかわかってた
  こんな風に笑えてたんだ 思い出せば答えはあった
  そう 大切なもの 俺は綺麗な花を咲かせたかったんだ
 というところも、白状すると聴くたびにちょっとウルっと来る。フレーズ自体も好きなのだが、この部分、ずっとソロで順々に歌っていて、それぞれの歌唱の出来栄えが非常に良いのだ。
 そう、実はこの曲、(渋谷が目立つ部分が比較的多いとは言え)各人のボーカルがかなり充実している。1番Bメロ村上良い! それに続く丸山も良い! 村上は後半のラップ部分も良いぞ。横山も上記の「見覚えある…」というところ、バッチグーだ。他4人もきっちり魅力を出していて、7人ともばっちり聴かせどころがある。「7人感」はアルバム随一と言えるのではないか。その意味でアルバムを締め括るに相応しい曲である。