こんなんだったっけ日記

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ディアフーフ『ブレイクアップ・ソングズ』(2012年)

 ディアフーフDeerhoof)は『Milk Man』(2004年)を聴いて以来のファンで、『ロッキング・オン』誌から教わったバンドとしてはホワイト・ストライプスと並ぶお気に入りのバンドである。ノイズ・ロックとかオルタナとか呼ばれるようであるが、そのような括りにされるバンドの中では唯一好きなバンドかも知れない。因みにdeerhoofというのは「鹿の爪」という意味で、デイヴ・グロールだったかが「鹿の爪なんて名前のバンドが悪いはずないよね」というような素敵なことを述べていた。
 魅力はなんといっても激しく刺激に満ちたサウンドで、ギターのフレーズのセンスも大変良いのだけれど、何と言ってもドラムが素晴らしい。ドラマーはグレッグ・ソーニア(Greg Saunier)という人であるが、バシャバシャした感じがたまらん良い。一番好きなドラマーの1人である。
 メロディーが思いの外ポップで安直ならざるところも良い。ボーカルは日本人のサトミ・マツザキさんで、この人の独特の歌い回しと歌詞世界もなかなか癖になる。わんわん君がわんわん君がぽこぽこぽんぽんぽーん(Dog on the Sidewalk)。マツザキさんは近年はベーシストも兼ねていて、ヘフナー・プレイヤーである。
 2011年のアルバム『Deerhoof vs. Evil』は、ちょっとイマイチかなと思うところもあったが(あれはジャケットが印象を落としていると思う)、翌年に(いつの間にやら)リリースされた新作『Breakup Songs』、これは一押しである。
 全11曲で30分、と聞いて随分短いなあと思ったが(YouTubeで公式にアルバム全体が配信されているらしい)、よく見ると前作『Deerhoof vs. Evil』も、ボーナストラック(ライブ音源。最高です)を抜くと同じくらいの長さなんですね。本作はボーナストラック入っていません。それはいいんだけれども、僕はこのCDを都内のタワーレコードで買ったのだが、海外盤と帯付きの国内盤らしいものとが両方置いてあったのですね。前者が1500円で、後者が2100円。海外盤でいいかなーとは思ったのだけれど、好きなバンドだし、歌詞はネット上で見られるにしても対訳はなかなかネットでもないだろうから、と思って600円高い国内盤を買った。そしたら歌詞も対訳も解説も、なーんにも付いてなかった。帯に600円払ったわけである。今思い返しても腹立つ。
 前作はギターが叫び、ドラムがもっと叫ぶというこれまでのスタイルとちょっと変わって、デジタルな風味を入れてややスタイリッシュ?に収めた風のところもあって、本作でもその雰囲気は残っている。それによってドラムの叫びどころが減っているのは僕としては残念だが、曲は面白いです。細かくて単純(時に複雑な)フレーズを、驚くような組み合わせで提示して楽しませてくれる。2曲目の「There's That Grin」なんかにそれが顕著である。1曲目の表題曲はベスト盤を作るなら是非入れたい痛快な出来で、(ノイズを含めた)音で聴き手を叩きのめす方法論や、リズムの作り方にホワイト・ストライプスと同種のものを感じさせる。どっちもライブ観に行ったことないんだよな。ストライプスは(いつの間にか)解散しちゃっていて、ライブは叶わぬ夢となったが、ディアフーフは是非観ておきたい。今度来日したら逃すまい。
 ところで本作には「Flower」という曲が入っているが、前作のボーナストラックにも同名曲があった。で、中身が全然違うんですよね。どういうことだろうか。