こんなんだったっけ日記

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『JUKE BOX』ツアーDVD感想(総論篇)

 『JUKE BOX』ツアーのDVDは、通常盤を買った。前回の『8EST』ツアーのDVDのように、限定盤のボーナス・ディスクに本編とは別の曲が入っているとかいうわけではなさそうだし(補記:ブルーレイだと「ここにしかない景色」が観られるらしい)、共同生活の罰ゲームには全く興味がないし、ドキュメンタリーにバンドのリハーサル風景が入っているならそれは見たいんだけど、でも値段が2000円も違うしなあ、限定盤はディスクが多くて出し入れも面倒だし・・・といった、ちょっとした逡巡があって(結局はケチって)通常盤を買ったのである。後で「罰ゲームの映像中で即興の自作曲を演奏している」「バンドのリハ風景も面白い」といったことを御教示頂いて、後悔しているところである。でも今更6000円とか出して限定盤を買うのもちょっと・・・。
 まあ、それはそれとして通常盤。かなりオシャレなジャケットである。『FIGHT』の時なんかとはえらい違いだ(何だったんだろう、あのジャケット)。中身を開けると、いつものように1枚刷り2つ折りの素っ気ないリーフレットが入っている。表側は大阪ドームの巨大な天井の下にいるバンド・スタイルの7人という写真で、かなり格好良い。あとシールが付いている。嬉しいんだけど使いどころが判らない。未だに『愛でした。』に付いていたシール(エイトサウンドなんたらとかいうやつ)も使ってないしな。それはそうと、外装のビニール袋に貼ってあるシールの「さぁこんな歌と映像はいかがですか?」っていうキャッチコピーはいかがなものか。まあ意図は判るんだけどさ。「と映像」はやはり蛇足に思える。
 以上どうでもいいようなことをダラダラと書いてきたが、肝心の中身について。先日ちょっと書いたが、本作は素晴らしいです。あまりに素晴らしいので本稿は「総論」に留め、各々の演奏曲目については「各論篇」として後日に期す。
 さて、何が素晴らしいか。一言で言えば、本作には「音楽」があるのである。
 勿論、今までの関ジャニ∞のツアーDVDにだって音楽はあった。魅力的な音楽を提供してくれるからこそ、早数年、彼らのファンをやっているのである。これまでのツアーDVDにだって音楽的な感動は幾度となく感じてきた。
 その一方で、彼らのコンサートは歌唱・演奏以外に踊りや演出も少なからぬ比重を占める「総合演芸」的趣きの濃厚なものでもある(これは他のジャニーズ・タレントのコンサートも同様であろう)。ところが、本作『KANJANI∞ LIVE TOUR JUKE BOX』では、これまでになく「音楽」を前面に押し出しているのである。私は「総合演芸」を楽しんできた一人ではあるのだが、この変化はやはり嬉しい。非常に嬉しい。
 今回のこのような趣きは、「ジューク・ボックス」という基本設定の存在と、ミュージシャンとしての関ジャニ∞の成長とが相俟ってのものであろう。
 では、その「音楽を前面に押し出す」とは、具体的にはどのようなことか。まず一つには、このツアーに先立つアルバム『JUKE BOX』が非常に質が高く、且つバラエティに富んだものであったということがある。則ち、新曲を歌い、演奏するということ自体が「音楽的に豊かな関ジャニ∞」を見せることになっている。
 次いで、バンド曲の多さがある。且つその半数以上は初披露曲である。しかも既発曲である「ブリュレ」のバンド・アレンジ(これをオープニングでやる!!)や、バンド曲ではない「青春ノスタルジー」や「クラゲ」「T.W.L.」といった曲にもメンバーの楽器演奏を採り入れるという試みがあって、これまでにない積極性が感じ取れる。MCで横山が「『音楽してる』思うた」と語っているのが正に象徴的である。彼らの演奏そのものは、「∞祭」の時のようなアンプラグド形態ではなく、音源の補佐があるものなので、彼らの真の実力を捉え難いものではあるが、各々の成長は感じ取れるものになっている。
 しかしながら、本作がこれまでになく「音楽」を感じさせる点は、実はそこではない。
 本作が関ジャニ∞のライブ映像作品として真に画期的である点は、むしろバンド編成以外の曲にこそある。則ち、本作ではそれらの曲も、タコヤキオールスターズによる「生演奏」なのである。
 こう書けば、「タコヤキオールスターズは『FIGHT』ツアーからいるじゃないか」という反論が出るかも知れない。しかし『FIGHT』『8EST』両ツアーにおけるタコヤキオールスターズによる演奏は、DVDでは、全てCD音源に差し替えられていたはずだ。それが、本ツアーではDVDでも彼らの演奏がきちんと残されているのである(本来これが当たり前なのだが)。私の聞きなしでは、そもそもが打ち込み主体の楽曲である「Sorry Sorry love」「Dye D?」「Water Drop」「狩(仮)」以外は、全て生演奏であった。
 DVDで見るなら生演奏だろうがCD音源だろうが関係ないだろう(どっちにせよプロが演奏しているのだから)と思う人もあるかも知れない。私も今まで、CD音源をバックに関ジャニ∞が歌っているのを聴いて、特に不満に思うことはなかった。しかし、今回初めてタコヤキオールスターズによる演奏のバージョンを聴いてみると、明らかにこちらの方が「気持ち良い」のである。特に「無責任ヒーロー」や「あおっぱな」といったハイテンションのシングル曲が、ライブという場で、プロのバンドによって「再現」されているのには、随分興奮させられた。
 やはり、予め作られた音楽の上に歌唱を載っけるのと、伴奏と歌唱とが同時にその場で生まれているのとでは、生々しさが全然違うと言うことなのだろうか。
 ちょっと逆説的なようだが、多分この生演奏の感動は、関ジャニ∞のCD音源を沢山聴いている人ほどハッキリ感じることと思う。だってCD音源を大して聞き込んでいない人だったら、これまでのツアーDVDの伴奏がCD音源の差し替えで、今回から生演奏になった、ということにそもそも気付かないだろうから。CD音源を沢山聴いて、そのハイレベルな伴奏が身に沁みている人ほど、それがリアルタイムで(つってもビデオなんだけど)「再現」されているということに感動と興奮を覚えるのではなかろうか。
 バンドに毎回演奏させるには、出演料を始め様々なコストがかかるし、音響面でのリスクもぐっと高まる。しかも関ジャニ∞のファンの中心層は、おそらくメンバーの顔と声が堪能できれば充分であって伴奏にまで意識が及ばないという人達であろう。そんな状況下で敢えてバンド生演奏という形式を開始し、そして継続している運営側の意図はハッキリ言って不明であるが、沢山の若きファンに音楽演奏の魅力を知ってもらうためだとしたら、天晴れと言うほかないし、素晴らしいお金の使い方だと思う。
 本作ではバックバンドを映したシーンがこれまで以上に多い。「伴奏を聴かせよう」というのは、やはり本作の意識的な方針と言って良かろう。
 元々、近年の関ジャニ∞の作品はアイドル・グループとしては「異常」と思えるほどに生演奏の楽曲が多かった。『FIGHT』ツアーからそれがライブの場に及び、本作に至ってようやくビデオにまで及んだということになる。これが、私が本作を「画期的」とする所以である。今後も是非継続してもらいたい。
 素晴らしい映像と、タコヤキオールスターズ及び関ジャニ∞自身の演奏によって、アルバム『JUKE BOX』の楽曲群は一層その魅力を増しているように思われる(勿論、CDならではの魅力も依然として存するが)。本作は、『JUKE BOX』という優れたアルバムの、完成形とでも言うべき映像作品である。絶賛に値する。

KANJANI∞ LIVE TOUR JUKE BOX(通常盤) (初回プレス ステッカー付) [DVD]

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