こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

椎名慶治『I & key EN II』

 セルフカバー音源(スタジオ&ライブ)を出したり、英語の問題集のオマケソングを発表したり、ZEROとユニット組んでCD出したり(聴いていない)、DVDを出したり(観ていない)、玉置浩二のカバーを出したり(聴いていない)していたが、所謂オリジナルの音源集としては実は『S』以来2年弱!ぶりのミニアルバムである。

I & key EN II

I & key EN II

 このジャケットは・・・なんじゃろうなあ。ウサギの着ぐるみは「人生スパイス」のPVに対応しているわけだが、それよりこのマリスミゼルみたいなメイクと表情と背景は何なんだ、と。
 それはともかく、これまで椎名はミニアルバムを2枚出している(『I』と『I & key EN』)。これがどちらも非常に優れているもんで、それらに較べると今作は地味かな〜と最初は思ったものの、聴いている内に沁みてくる。今作もやはり良いです。


1. key 2 the light
 タイトルからしてイントロダクション的な奴かなと思ったら果たしてそうであった。英詞(井上洋平氏が担当)だが、歌詞カードには載っていない。この辺り、『ROOT』のオープニング曲「√」を思わせる。イントロはセルフカバー版『Phase』「空っぽの気持ち」の趣き(デジロック)で、「あら、まだこのノリで来るのか?」と思わせるが、聴いている内に、このデジタル風味も「√」に近いものなのかも知れないと思えてくる。
 「byte × bite -type S-」からの引用があるのが面白い。


2. 人生スパイス -go for broke-
 アルバムに先行してPVが出た曲。あんまり期待させないタイトルであった(go for brokeってどういう意味なんだ?)(補記:「とことんやれ」「当たって砕けろ」のような意味の俗語だそうです)。PVを見た時にも「な〜んかな〜」という印象だったのだが、二度三度と聴く内に「なかなかいいじゃないかコレ」と思えてくる。作曲はUnison Square Garden田淵智也。しかしメロディは椎名風(サーフィス風)なんだよな。わざとなんだか元々の作風なんだか知らんが。音源でも田淵がベースを弾いているがPVでは別人(櫻井陸久)。
 「出来ることだけやっていれば生きていけると迷走中」というフレーズがいい。あと最後の大サビで、1回目のサビが「わりとマジで」によって2回目のサビに繋がっているのが面白い。



3. 歪
 この漢字はユガミともヒズミともイビツとも読めるので、このタイトルはどう読むのかなあと思いつつ聴いていたらサビのアタマで「イビツな愛〜♪」と出て来たので、イビツかーと思っていたら最後に「イビツにユガんでヒズムほど美しくて〜♪」となってズっこける。タイトルは読み方不特定ということでよろしいか。
 なお作詞は野口圭。オールド・ファンには眩暈のするほど懐かしい名前であるが、サーフィス時代には椎名との共作ばかりで野口単体の作詞曲というのはなかった筈。
 作曲に山口寛雄が関わっていて、ベースも弾いている。本作ではこの1曲のみ。今凄い売れっ子ですからね(椎名林檎の新作でも弾いていた)、椎名(慶治)に付き合う時間はあまりなくなっちゃったのであろうか(なんか僻みっぽいな)。
 それはいいんだけど、本作ではこの曲がちょっと足を引っ張っているな。なんかイントロからして、「あ〜エヴァネッセンスとか流行ったよなあ10年位前に・・・」という感じ。編曲は大久保友裕なる人。なんか『I Love Youのうた』のカップリングに上手く収まりそうな感じだ。まあ別に編曲だけが悪いんでなくて、サビのメロディーもちょっとナニかなあと思う。別に嫌いではないものの。


4. コンティニュー?
 これは確か今春のライブで演ったんですよね(DVD観なきゃなあ)。サラリーマン3部作だとかなんとか。そう言えばイントロのコーラス、散々歌わされたなあライブで。
 サーフィス時代から「ゲーム好き」が椎名の特徴の一つとして知られていたが、この曲もそれを思わせるタイトル。「恨み辛み妬み嫉み」なんて歌詞は、オールド・ファンにはグッと来るものがある。ただ曲としては、椎名ファンとしては嫌いにはならないが、あと1,2歩足らない感もある。
 「死ぬほど辛いと思っても死にはしないから 足掻いてみてTo Be Continued」というのは、明るくはないが前向きで、いい。


5. 悲しきマリオネット
 磯貝サイモン提供(作曲。詞も椎名と共作)。椎名がブログだかツイッターだかで「納期ギリギリにサイモンが超俺好みの曲を出してきた」みたいなことを言っていたが、この曲かな。
 寒々しいほどにダサいタイトルであるが、曲は非常に良い。本作で一番良いかも。これはちょっと嫌いになりようがないな。一つ一つのメロディーはどこかで聴いたことがあるようなものなのだが、その組み合わせ方が実に魅力的。Bメロなしでサビが2段になっているような構成も気持ち良い。
 歌詞は、浮気の主体が逆だけれども「alibi」を思わせる。「一緒に踊ろう」というのが(タイトル通り)悲しくって良いですね。


6. komorebi
 さる演劇作品に提供された曲とのことだが、これは・・・サーフィスだ。しかもsurfaceでなくSURFACEの色が濃くって、『Phase』『fate』『ROOT』の雰囲気をそれぞれに取り混ぜた色合い。その意味では、今までになかった曲だ。
 全体的なムードとしては、具体的には「たまり場」(心なしかタイトルも似てますね)や「らしさ らしく」を思わせる(いやーそれにしても、おれも随分サーフィスを客観的に観られるようになってきたものだなあ)。
 ただ、そのようになんとなく似ている、というのではなく、要所要所のフレーズを具体的な曲で説くことが出来るように思われる。敢て試みないが。例えばエンディングなんか、ファンならば明らかに既視感ならぬ既聴感があるはずだ。
 椎名が意識的にやったのか無意識にやったのか・・・多分前者かなあ。
 とにかく、サーフィス・ファンなら嫌いになりようがない曲である。抗えないよ。サビの「傷ついたり」や「ねぇ?」にグッと来ない人がいるとしたら、その人はサーフィス・ファンじゃない! Aメロの「(思いが)成仏出来ずに」からしてもう、「ああ椎名の歌詞だ・・・」とクラクラ来るではないか。


7. カタムスビ -SHIINA Ver.-
 えーと、これも今春のライブで演ったんでしたっけな。ZEROとは共作CDも出していて、買ったんだけど聴いていない。いかんなあ。
 サーフィス及び椎名慶治にとっては、ありそうでなかった曲、「どうして今までこういう曲を出していなかったんだろう」と思わせる曲想。ダンサブルなサビが楽しい。
 歌詞は今まで散々やっているテーマだが、そのことを逆手にとって「一人じゃないって 何遍言わせんだ」なんてフレーズが活きている。
 歌詞では2番サビの「結局君じゃないと何もかもが そうさ絶望的に味気ない」というのが気に入った。


 愛聴に足る作品をまた一枚リリースしてくれたことを、ファンとして嬉しく思っております。