こんなんだったっけ日記

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ロイヤルミルクストーリー!!

 遅まきながら、関ジャニ∞のニュー・シングル「ロイヤルミルクストーリー」が発売されました。
 いやいや、勿論A面は「涙の答え」である。であるけれども、個人的には、飽くまで僕個人としてはだけれども、本作の「成果」はこの「ロイヤルミルクストーリー」に相違ない。だって超いい曲だから。こんなに何度も聞き返したくなる関ジャニ∞の曲は久しぶりかも知れない。
 結局TAKESHIの曲がいいのかよ保守的だな、と言われるかも知れないが、そんなこと言ったって好きなものは好きだからしょうがない。前作の「へそ曲がり」はA面曲ということで非常に力の入った出来で、それはそれで大変良かったのだが、「ロイヤル〜」の、プレッシャーなく伸び伸びと作り上げられた雰囲気も素晴らしい。
 尤も、両曲TAKESHI作とは言っても共通するのは詞だけであって、「へそ曲がり」は曲はTAKESHI、編曲は大西省吾であったのに対して、「ロイヤル〜」は作曲は鈴木ともひろ、編曲は久米康隆である。なおブラスはYOKAN。
 この作曲の鈴木さんという人を知らないので、ちょっと不安であったのだが(まあ編曲が久米さんなのでおかしなことにはなるまいとは思っていたが)、思いの外に良くって嬉しかった。今後もこのトリオで提供してもらいたい。
 それでこの曲の魅力であるが、まずイントロからして、ハッピーなムードはありながらエレキギターがちょっとヘンテコなフレーズを奏でていて、のっけから期待させる。このイントロ凄くいいですね。続いての「You make my」云々というコーラスは、まあよくある感じ。でもエンディングではこれが良い感じに響いています。
 メロディーはAメロからお洒落だけれどもサビが殊に良い。このサビは、メロディーと歌詞とが絶妙にマッチしていて、このメロディーのおかげで「どうして?」と「通して」、「から」と「カラー」の言葉遊びが活きている(勿論、このメロディーに歌詞を合わせたというのが実情であろうが)。
 あと「ティースプーンを回すふたりが 似てくるのはどうして?」というのは本当に素晴らしいフレーズだと思う。カップルの幸せな雰囲気が陳腐でなく嫌らしくもなく伝わってくる。本作を通して僕は作詞家としてのTAKESHIを見直した。この人も割と理屈っぽい歌詞を書く人だと思うが、この曲のサビは「これぞ詞!」という感じで、とても良い。
 編曲も相変わらず良い。ブラスが効いておりムードを盛り上げているが、基礎はピアノを含むバンド・サウンドである。飽くまで歌の引き立てに回っていて、Aメロなんかはボーカルをきちんと堪能できる嬉しいアレンジである。しかしその一方で、伴奏の音もかなり大きな比重を占めている。楽曲は歌と伴奏とで魅力を作っているのだと言うことをよく感じさせてくれる。これカラオケバージョン(入っていないよCDに! 通常盤なのに!)で聴いたらすごく気持ち良いだろうな。ドラムが跳ねまくっています。
 2番が特殊な構成になっている(1番とはメロディーが変えてあって、サビもない)せいもあって、テンポの割には3分40秒とかなりコンパクトに収まっている点も宜しい。


〇涙の答え
 感想は以前に書いたことと大凡変わらない。基本的にはオーソドックスなバラードであってその意味ではそれほど面白いものではないけれども、でも悪くはないです。
 問題の詞ですけれども、やっぱり理屈っぽいよな。「「僕らは」はいつの日か「僕」と「君」になっていたんだね」とか。「正解」と「間違い」とか。しかし1番で「何度も「間違い」に追いかけられて」となっていたのが最後では「何度も「正解」に追いかけられて」となっているのは良い趣向だと思う。
 編曲は野間康介(傑作「モノグラム」の作編曲、「T.W.L.」の編曲等)ですが、これ演奏はSEKAI NO OWARIなんでしょうか。ベースなどなかなか格好良いです。あとドラムがかなり大きめに録ってある(フレーズも格好良い)のですが、大倉主演の映画の曲であることを意識として・・・とは思えないけれども、とにかくこれバンドで演ってほしいですね。


〇絆奏
 「絆(きずな)」の音読みはバンである。絆創膏の絆ですね。それはともかく、この曲はドラムが踊りまくっていて格好良いとは思うのだけれど、どうも心理的に乗り切れないところがある。理由は大体判っていて、雰囲気がまんま「湘南乃風」なのである。歌詞というよりは、アレンジが。合間の「oi!」とかいうのもそうですが、なんか安っぽいヒロイズムだか男気だかを見せられている気分になるんだよな(これはこの曲についての感想であって湘南乃風批判ではありませんので悪しからず)。
 あと歌詞は歌詞で引っかかるところがあって、「どうせなら価値ある絆を持て」とか「守るなら価値ある絆にしろ」とかいうのは、人付き合いは避けられないものである以上は誰に対しても真摯に向き合うべきだ・・・という意味なのかな、と一応解釈しているのですが、でも「守るなら価値ある絆にしろ」というのは言葉通りに受け取るならば「価値がないと思う絆は放っておけ」ということですからね。それってちょっとどうなんだろうかと思う。勿論一つの態度としてアリではあるんだろうけど。じゃあ「価値ある絆」って何? ということについて何か主張があるようにも見えないし。
 あと、これも好みの問題ではあるのだろうが「やべぇ 本当にどんなに感謝しても 全然たりねえ」というフレーズが最後の方に出て来ますが、こういうのもいい加減勘弁してもらいたい。
 そんなワケで、疾走感があって格好良い部分もあるのだが(1番Aメロ後半でベースの入りなんか魅力的)、ちょっとこのままでは楽しめないなという感想。


〇∞th ANNIVERSARY Single's Remix
 編曲は大西省吾。大変な労作ですねこれは。前作収録の「愛でした。」リミックスよりも随分良い出来になっていると思います。
 現在の日本のポップスにおいて、演奏者が揃って「せーの」で録音したもの(俗に言う「一発録り」)をそのまま商品化するというケースは殆ど絶無であって、シンプルなバンド・サウンドであっても「ドラムとベース」「ギター」「ギター2本目(或いはキーボードなど)」「ボーカル」「コーラス」と、まあこれらを別々に録音して、それらを重ね合わせてバランスを調節したり音質を整えたりして一曲にまとめあげたものがCDに収められたりデジタル配信されたりするのが普通なわけである。所謂多重録音というやつだ。
 逆に言えば、例えば「大阪ロマネスク」という楽曲一つ取っても、「ベースとドラムだけ」とか「ギターだけ」とか「村上のボーカルだけ」とかいったデータが制作者の手許には存在するわけである。また「大阪ロマネスク(マイナス渋谷・錦戸)」みたいなバージョンも割合簡単に作れることになる。
 こういった、言わばパッチワークのそれぞれの切れ端のような音源を最大限に利用して、本作のようなリミックス曲が作られるわけである。本作では「切れ端データの貼り合わせ」を基礎にして、テンポの上下・音程の上下などの加工を随所に施し、更に新しい音源の追加などを行なって、一つの作品にまとめ上げている。
 こういう作品の面白いところは、今まで小さくしか聞こえなかった所が大きく聞こえて今までになく細かいニュアンスが掴めたりするところである。本作だとグループがグループだけにやはりボーカルが注目どころで、「好きやねん、大阪」のコント部分や語りなどが非常にクリアに聞き取れて面白い。また、「大阪ロマネスク」の「la la la...」というコーラスは、オリジナルでは全員斉唱だったと記憶するが、このリミックスでは上述の多重録音が幸いして(?)、各人のソロ・パートの掛け合いにされている。これもファンにとっては大きな聴きどころであろう。
 また僕みたいに楽器の細かいフレーズを聴いて喜んでいるような人(こういう人は結構多いと想像する)にとっては、今までボーカルのバランスが大きすぎて聞こえにくかったようなところがはっきり聞こえたりするような「拾いモン」がある場合がある。例えば「∞SAKAおばちゃんROCK」のベースなんか非常によく聞こえる。あとエンディングでの「好きやねん、大阪」のベースのフレーズも、今まで以上に細かいニュアンスが聞き取れて嬉しい。色っぽいですこのベース。「好きやねん〜」では、本作5:00辺りから流れる(♪空に浮かぶ太陽が〜)ベースも非常に良い。これ最後は歪(ひず)んでたんですね。いいなあ。「ER」もベースが結構聞こえる。
 更に、別々の曲を一つにまとめあげているのを聴き取る面白さもあって、こういう試みはアマチュアでもやっている人がいてYouTubeにアップロードされていたりするが、流石にプロが音源を与えられてやるとレベルが全然違う。これまでの作品を聞き込んだファンほど面白いであろう。例えば「好きやねん、大阪」のコント場面のバックに「大阪レイニーブルース」や「関風ファイティング」の伴奏が流れているのなんか洒落ている(「関風〜」が流れると大阪と言うより神戸という感じがするが)。
 また、関ジャニ∞は「お囃子」みたいなボーカルが結構多いグループなので、そういった細かいボーカルのフレーズを思わぬところに持ち込んだり加工して放り込んだりしている。「無責任ヒーロー」のBメロ前半では、元々はイントロにあった裏拍の掛け声をブツ切りにして表拍に入れていて、笑える。
 こういうリミックスものは、遊び心があればあるほど面白いもので、本作では、曲で言えば「好きやねん、大阪」「∞SAKAおばちゃんROCK」「無責任ヒーロー」などが特に面白い。冒頭の「無限大」や「浪花いろは節」ではまだちょっと良い子ぶっていて、「好きやねん〜」から本領発揮という感じ。「いろは節」も面白いけどね。「好きやねん〜」、「∞SAKA〜」、「無責任〜」は「喋くり」が多い分、使い勝手の良い「切れ端」も多かったと見えて、遊びまくっている。「∞SAKA〜」では、Aメロの渋谷のボーカルを敢えて遙か後方に追いやってしまって、コントの方をメインに据える趣向が面白い。
 「無責任〜」は元々のロックンロールの面白さは敢えて捨ててしまって、ピコピコ音をふんだんに入れてファンシーなムードに仕立てていて(後半は割とそのまんまだけど)、別バージョンとしてはこれもアリと感じた。
 個人的に一番「やるな大西!」と唸らされたのは「急☆上☆Show!!」で、オリジナルのハッピーなムードをなるべく出さないで、音源のループを強調したヘヴィーな雰囲気に仕立てている。非常に格好良い。
 「ズッコケ男道」はテンポをぐいっと上げてハードロック風にしてあるが、多分伴奏は新たに録音したものと思う。面白いけれどまあそれだけと言えばそれだけである。一発ネタというか。
 「LIFE」をトランスに仕立ててあるのも驚かされたが(この曲をリミックスに使うとは思わなかった)、これもまあ「それだけと言えばそれだけ」のパターンかな、個人的には。トランスにするともう「こうにしかならない」という感じで、それが面白さを削いでいるというのはあるな。まあトランスの雰囲気というのが苦手というのもあるが。好物の人も多いと思いますが。
 「ツブサニコイ」は元々バンド曲なのを、バンド部分を取っ払ってオーケストラなどをフィーチュアしたアレンジ。ああ金かかってたんだなあ、ということが判ります。なんかゲーム音楽みたいですけどね。「勇者の凱旋」みたいな。
 「ER」は元々がリミックスみたいな曲であるせいもあって、何の違和感もなく鳴っている。ちょっと音数を減らしているのか、オリジナルよりも音が良い印象。
 「大阪ロマネスク」のBメロで「好きやねん、大阪」のコントをバックに入れるのは凄いアイディア。上手い具合に(当初は予想だにされなかったであろう)切ない雰囲気が出ていて、グー。
 そんなワケで、別に期待せずに聴き始めたんだけども、(まあコレを書くためもあって)結構細かく聴き込ませてもらいました。大西さんお疲れ様。第2弾も是非。