こんなんだったっけ日記

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「まだ見ぬ地図」などについて

 関ジャニ∞の『オモイダマ』とエイトレンジャーの『ER2』というシングルが相次いでリリースされたのだが、なかなかタイミングが合わなかったのと、どうにも食指が伸びなかったので買わずにいたのだが、ファンとしてそういうわけにもいくまいということで昨日渋谷のタワレコで買ってきた。
 それでカップリング曲を含め何度か聴き返したので感想を以下に掲げるのであるが、今回は割と酷評している曲が多い。特に「オモイダマ」については、はっきり言って、「関ジャニ∞のシングル曲の中で史上最低(かも)」というのが現在の私の評価である。
 書くからには単なる悪口ではなく批評になるようには心掛けたつもりだが、徹底はしていないし、そもそもが所詮は素人の感想であるから、「「オモイダマ」泣ける!」という人は読まない方が精神衛生上宜しいと思う。


『オモイダマ』
 まず3曲目の「まだ見ぬ地図」について書く。この5曲入りCDの中で現在のところ愛聴に値する曲がこれだけだからである。1曲目と2曲目で疲弊していた心に潤いを与えてくれる曲だ。快作と言って良い。
 まずエレキベース単体のイントロに意表を突かれる。明らかにフリー(レッチリ)っぽいが、もっとポップにしたような感じだ。その後のちょっと歪ませたエレキギター主導のイントロはまあ「普通」という感じだし、丸山ソロの歌い出しも「普通」だが、かなり早い段階でハモリが入ってきて、これがなんとずっと続く。これが面白い。ハモリもたまにユニゾン(オクターブ違い)を取り混ぜていたりして、耳に残る。サビでもガンガンにハモっていて、ちょっと異様なくらいなのだが、それが魅力になっている。
 ハモリがハデ過ぎて歌詞があまり耳に入ってこないのが難点と言えば難点か。でもサビ冒頭の「ただ叫ぼう、叫ぼう」なんて、耳にガーンと入ってくる。
 この過剰ハーモニーのアイディアは作曲者によるものか編曲者によるものか判らないが、とにかく英断である。なお作者はAgree2なる方、編曲は高橋浩一郎


 他の曲についても書く。まず表題曲。イントロのへなちょこなファンファーレでのっけからがっかり。なんでこんな音量なんだろう。もっとガツンと入れれば良いのに。フリューゲル・ホルンを埋もれさせないという意図があるのだろうが、この奥まった音像は本作に2曲収められたブラス・バージョンでも同様なので、編曲者であるYOKAN氏の趣味なのだろう。
 それが済んで、いきなり歌が入る。近年非常によく聞かれる「ラップっぽいメロディーで夏っぽさ表現」で、目新しさ皆無。Bメロでもっとラップっぽくなるところも常套手段。サビのメロディーもどっかから拾ってきたとしか思えないような面白みのないものだ。
 これでも歌詞さえ面白かったら、この曲の「何回も聞いたことあるよソレ」感もギリギリ許せるのだが、実を言えば(恰も楽曲に対応させようとするかのように)歌詞もバリバリ「何回も聞いたことあるよソレ」なのだ。まあ甲子園のテーマソングに斬新さを求める方が無茶なのだと言われればそれまでだが。それにしてもなあ。夢の舞台に向って苦しみながら頑張ってきた、一人じゃないから頑張れる、みたいな。そりゃ甲子園だもん、そういうこと言いたくなるのは判るけれども、恥ずかしくないんだろうか。
 そしてサビの後に1人1行ずつ、なんかメッセージっぽいラップ風メロディーが歌われる。この部分(2箇所出て来る)、歌詞カードでは表記が斜体になっているのだが、ひょっとして高校生から歌詞を募った部分ってココなのだろうか。どうもそんな感じがする。と言うのは、この部分の歌詞が飛び抜けて酷いからである。わざわざ引用しないけれども、1回目と2回目の歌い出しがそれぞれ「ありがとう大切な人へ」「限界超え見えた扉破れ今」であると書けば、続きは推して知るべしと言うべきであろう。聴きながら頭を抱えてしまったのは決して私だけではないと思う。
 「高校生なんぞにマトモな歌詞が書けるはずがない」などと言いたいのではない。例えば、予めメロディーを提示しておいて、最優秀者1人の歌詞を丸々1曲分採用するということであれば、かなりの力作が見られた可能性は決して低くないと思う。ところが、「甲子園の応援ソングに用いるフレーズ募集」なんてことになれば、思い浮かぶイメージにかなり強固な制限が働こうし、他のフレーズとの意味的な整合性の問題もあるし、あまり一つのフレーズだけが強烈な個性を放っていても見栄えが良くないしで、結局愚にも付かないものばかりが残るのは目に見えていたのではないのか。
 そんなこんなで、一言で言えば「只でさえ凡庸であった曲が「甲子園」というテーマのせいでどうしようもなく陳腐になったもの」というのが、現在における私の本曲に対する評価である。今後この評価に変化があれば撤回しますが。


 次「純情恋花火」。これ、確か「十祭」で歌われましたよね。まさか新曲とは思わず、てっきりジャニーズ・メドレーの一環だと思っていた。それくらい古臭い曲である。タイトルがタイトルだから、そういうのを「狙っている」のであろうが、狙った結果どういう良いことがあるのであろうか。確かにメロディーにキャッチーなところはある。Bメロのシメ方なんかは、つい一緒に歌ってしまいたくなるが、「こんな曲前にどっかで聞いたわ(何度も)・・・」という意識(音楽的良心と言うべきか)が、この曲を素直に楽しむことを妨げるのである。その点を措いておけば、よく出来た楽しい曲だと思います。


 次いで4曲目と5曲目は「オモイダマ」と「キング オブ 男!」の編曲版。編曲者はYOKAN。「ブラスバンドver」とあるが、サックスやらピッコロ、オーボエなどの音も聞こえる。ブラスバンドは「金管楽器+パーカッション」と思っていたのだが、違うのかな。あとドラム・セットが積極的に用いられているが、野球応援だと普通ドラム・セットは用いないものだが、応援に用いてもらおうという意図はないのかな。色々な楽器に見せ場が用意してあって、喜ばれそうなのだけど。
 所謂ロック・ポップスの伴奏との大きな違いが、低音域がエレキ・ベースではなくチューバによって担われていることで、実際の吹奏楽だとチューバはあんまり聞こえないんだけどここではポップス風の音量バランスで、結構チューバが目立っているのが経験者としては嬉しい。
 編曲についてであるが、オリジナルの「オモイダマ」オープニングと一緒で、「どうしてこんなに前に出てこないアレンジなんだろう」というのが全体的な印象。具体的には、どうしてトランペットにもっと張りのあるプレイをさせないのか。例えば、有名な「コパカバーナ」なんかの吹奏楽アレンジを聴いてもらっても判る通り、トランペットがブロウしまくる、更にトロンボーンやサックスとユニゾンでハモる、これこそがブラス・サウンドにおいて聴き手に高揚をもたらす最も重要な技法なのではないか。吹奏楽に限らず、ブラス・ロックにおいても、例えばチェイスの「Get It On(黒い炎)」なんかを聴いても、それは判ると思う。何故それをやらないで、こんな奥まったモコモコしたサウンドに甘んじているのか。ひょっとして私の耳が年寄りで、今の若い耳はこういうのを格好良いと思うのだろうか。それならばまあ、いいんだけど。

Chase - Get It On
 あと、歌メロをそのまま管楽器に移すとどうしてもダサくなる(スーパーのBGMみたいになる)ところがあるもんなんで(「キング オブ 男!」の「チャンスなんてもうどこにもねえ」云々とか・・・)、そういう箇所はメロディーに変化を付ける工夫がもっとあっても良かったのではないかと思う。
 

『ER2』
 続いてエイトレンジャー2年ぶりの新作。まず表題曲。なんちゅうミもフタもないタイトルか。作者も同じ(と言っていいのか、前作はUNIST作で、今作はそのメンバーたるGAKU作)。
 タイトルのせいでどうしても「ER」の兄弟作として聴いてしまい、そして実際よく似たサウンドなんだ。私は「ER」を好きになれなかったので本作についても殆ど期待していなかったのだが、聴いてみると「意外と良かった」というのが本音である。イントロのサウンドなんかは「ER」をモロに思い出させるもので、「またこれか・・・」という感じだが、Aメロから良くなる。まずサウンド(ミキシングと言うべきか)が前作よりもゴリゴリとガッツがあるのが良い。歌唱は、1番Aメロの渋谷も良いが、2番Aメロの村上のハモリ(下ハモは誰?)も格好良い。(補記:下ハモは大倉である旨、御教示頂きました)
 しかし何と言っても、1番・2番それぞれのサビ前の丸山のシャウトだろう。これは素晴らしい。なんて言っているのか歌詞カードを見ないと全然判らないんだけど、この歪な感じ、ノイジーな感じ、ちょっとパラノイアな感じが非常に上手い具合に表出されていると思う。この部分だけ何度も聞き返している。この曲はこの部分のためにあると言っても良い。
 だがしかし、それに次ぐサビが、イントロと一緒で「ER」の焼き直しで、そもそも「ER」が好きでなかった者としては全然心に迫るものがない。サビにこの程度のものしか持って来られなかった点にこの曲の(企画的な意味での)限界があるのだと思う。


 次いで「陽炎」。映画を観ていないので知らないが、おそらく劇中歌なのであろう。前作にもカップリングには魅力に乏しいバラードが入っていたが(最早どんな曲か覚えてすらいない)、この曲もまあそんな感じである。別に悪くないんだけど、こんな感じのバラードでこれより良い曲が幾らでもあるってことだ。作曲・編曲は高橋浩一郎。ちょっと凝っている点が無いでも無いのだが、愛聴するには全く至らない。高橋氏、「まだ見ぬ地図」は良かったんだけどなあ。


 「そして強くなれ」。これも劇中歌なんでしょうか。曲名からして、そして編曲はPeachだしで、てっきりハードなナンバーかと思っていたが、全然違った。イントロに驚く。これもなあ、聴くべき点が全くないってわけじゃあないんだけども、楽曲の基本的な魅力に欠くとしか言えん。作風は、まあジャニーズ・タレントのシングルB面曲っぽいよねと言えばそうなんだけれども。
 あと曲の締め括り方がダサすぎる。マジでやっとんのかコレ。