こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

忘年会ライブ

 いや〜楽しかった。何がって、吾妻光良
 吾妻光良& The Swinging Boppersの忘年会ライブに行ってきました。六本木のBeeHiveというお店。インターネットで行き方を調べていたら後ろにいた知人に「クラブにでも繰り出すんですか?」と尋ねられた。クラブって・・・吾妻さんとの落差が甚だしい。
 この日(15日)は東京は雨だったが夕方には止んでいて、傘を差さずに済んだ。コンビニで小腹を満たすお菓子を買うとレジの店員さんの名札に「岡地」の文字が。まさか関係者ではないと思うが、なかなかの偶然だ(バッパーズのドラマーの名が岡地さんなのです。念のため)。
 ここで書いたように、吾妻さんを観に行くのは2回目だがバッパーズは初めてである。お店は住宅街にあって予想より遥かに小さい。ステージは地下にあって、客席は地下だけでなく一階からも(見下ろす形で)観られる。YouTubeで去年の忘年会ライブの映像が上がっているが、これは一階から見下ろすようにして撮ったものであろう。僕は地下のほぼ正面で観た。比較的後ろの方で柱にもたれて立っていたのだがそれでもかなり近い。日本の至宝・The Swinging Boppersがこの距離で観られるというのは、僕には勿体ないくらいの話だ。
 6時開場・7時開演。どうでもいいけど開場と開演の時間はなるべく短くして欲しい。手持ちぶさただから。指定席なら開演ぎりぎりに行けばいい話だが、オールスタンディングだと開場時間には来ていないといけないので。店に入ると何故だか駄菓子の詰め合わせを貰う。これが去年は魚肉ソーセージだったという。これまた偶然にも実はこの日、ライブに行く前に僕はビデオで『古畑任三郎』の木の実ナナの回を観ていたのだ・・・と言えば三谷ファンにはピンと来るであろう。今年も魚肉ソーセージが良かったな。値札が貼ってあるやつ。
 周りを見回すと僕くらい(20代半ば)の年代が大凡一番若い客層に当たるようで、後は30代・40代・50代が同じくらいの割合でいる印象。思いの外に女性客が多かった。「オジサンってなんであんなに可愛いんだろ」と言っているヒトもいた。そういう人気もあるのか。
 7時過ぎに特に演出もなく吾妻光良、牧裕(ベース)、岡地曙裕(ドラム)、早崎詩生(ピアノ)の各氏が舞台に上がって、この面子でオープニングのインストをおもむろに開始。次いで「My Sugar's Sweet to Me」(これ覚えはあるけど僕が持っているCDには入っていない。どこで聴いたのかな)。これ良い曲です。2番は日本語。
 この次辺りで(正確なタイミングは失念)、ホーン隊がソロを取りつつ入場。これで鶯谷ライブのDVDが眼前に再現された気分になる。メンバーは、金管隊は馴染みがある一方、木管隊が渡辺コーゾウさん(アルトサックス)以外は外部の人とのことであったが(MCで吾妻さんが「振り向いたら知らない人たちがいるもんだから・・・」と言って笑いを取っていた)、この中の安藤健二郎さん(同じくアルト)は、カセットコンロス(かっこいい名前すね)のメンバーとのことだが、めちゃめちゃ上手かった。この人が日本で一番上手いんだと言われたら素直に信じると思う。1曲でクラリネットも吹いていたがこれまた抜群に上手い。クラリネットってこんな甘い音が出るのかと感心した(まあその結果アルトサックスとあんまり音が変わらなかったような気もするが)。
 全体的に、吾妻さんのギターを堪能したのは勿論のこと(この人の出す音が本当に好きで、他でも書いたけれども僕にとってはジェフ・ベックと並ぶギター・ヒーローである。この音が聴ければいいんであって曲は二の次という面もないではない。なんか右手を叩くようにしてパタパタパタッと音を出していたが、タマランかったです)、岡地さんのドラムが超絶格好良かった。CD・DVDでもカッコエエなあとは思っていたが、実際見るとまた格別。あの音力! 日本のジョン・ボーナムと呼びたい。ちょっと違うか。なんか動きが妙に大きくて(いかにもクマさんという感じであった。表情も絶妙)、一見ムダそうに見えるところが、リンゴ・スターキース・ムーンジョン・ボーナムの系譜を感じさせるのである。
 2部構成で、なんと来年がレコードデビュー30周年とのことで(新譜出るか!?)今までを振り返るという形で第1部では洋モノのレパートリーをずっと演奏。歌詞も英語のまま。バッパーズの初期のアルバムは持っていないので知らない曲ばかりであった。知っていたのは先の「My Sugar's 〜」と、鶯谷ライブでも演った「Let Your Hair Down」(イントロのソロは渡辺氏。演奏後のMCでも評された如くSweet & Mellowで素晴らしかった)くらい。この曲は知っているせいもあってか非常に良かった。
 MCと言えば、吾妻さんが牧さんから以前ギターを貰ったことがあるのでお返しにエレクトリック・アップライト・ベースをあげたいのだが2万円に値下がりするまで待っている、という話をしていたが、全く同じ話を5月にもしていた。別の話題の時に「あ、デジャヴが・・・。ねえこの話前にもしたっけ?」などと宣っていたが、そういうことが間々あるらしい。
 25分くらい休憩を挟んで第2部では、洋モノに訳詞を付けたものや、オリジナル曲を演奏。「誰がマンボに”ウッ!!”をつけた」(これ原題が「Who put "Woo!" in the Mambo」らしいですね(正確ではないかも)。そのまんまじゃないか)で一緒に「ウッ!!」がやれたのは嬉しかった。
 未音源化(多分)楽曲では「昔だったら定年だ」と「ガンボ・デ・ツイッター」を演奏。前者もなかなか良かったが、後者は凄まじかった。この日のハイライトだったと思う。吾妻さんの歪み気味のギターも鳥肌モノで、バンド全体としても最早ハード・ブラス・ロックの趣であった。ただ歌詞はあんまりよく聞き取れなかった。歌詞はバッパーズの命なので、是非近い内に音源化してもらって歌詞カードで確認したい。
 他だと、クリスマス・ソングを演らないのは楽譜を忘れてきたからだという話から「そもそも日本なのにクリスマスなんてものに盛り上がるから・・・」という論調にやや唐突気味に移ったところで「これはアレを演るのでは!?」と思ったらやっぱり演ってくれた「Big 盆 Boogie」。渡辺氏の語りが聴けたのも嬉しかった。CDと一緒の声でした。当たり前か。ところでこの曲の「ご先祖様は大切にせなアカンのよ」「ちゃっかりしてるけどええ子やな」というのは、ミヤコ蝶々が昔やってた霊園のCMの文句だそうですね。と言ってもそのCMを知らないのだけど。やっぱりポップソングを聴く上でもこうした教養(雑学ともいう)は重要です(こちらでも似たようなことを書いた)。そう言えば「両手の皺と皺を合わせて・・・」というのもCMの文句ですね。これは線香のだったか同じく霊園のだったか。
 他に演った曲では、名曲の誉れ高いもののタイトルしか知らなかった「栃東の取り組み見たか」が観られたのは楽しかった。実際の取り組みもYouTubeで観られるようである。なるほどこんなだったか。相撲と言えば5月に観た「800 long」(則ち「八百長」)も演って欲しかったな。かなり盛り上がったので。
 あと「150〜300」も嬉しかった。「Sunny Side of the Street」も演ってたけどこれは第1部だったかしらん。
 「俺たち相性いいぜ」も最後の方に演った。ちゃんと聴くの初めてだったが、良い曲です。こんな歌詞。


 甘い羊羹にお茶 花に水 犬には散歩 猫に小判
 誰もが頷くさ 俺たち相性いいぜ
 春に桜 梅雨に傘 夏には海 冬はモモヒキ
 誰が見てもお似合いさ 俺たち相性いいぜ
 贅沢言わないさ 疲れていても 素敵なリゾート 近所のスーパー銭湯
 グリコにおまけ 鴨に葱 名古屋にういろう 東京にタワー
 大声で笑おうぜ 俺たち相性いいぜ


 いやあ素敵な詩ではないですか。これCDになっているのかな(歌詞はYouTubeにあるライブ音源を元にして記しました)。
 このテのロマンチックな名曲が実はバッパーズには「小学校のあの娘」「おもて寒いよね」など幾つもあって、一つの大きな魅力になっているのである。「ゴミの日来るまで」「飲むのはやめとこう」など、是非聴きたかった。哀愁モノでは「顔のシワ」「しかしまあなんだなあ」も。楽しいところでは「齢には勝てないぜ」「バッチグー」「道徳Hop」、そういや「クリムゾン・キングの宮殿」なかったなーどんなのか気になるよな・・・と、まあ言い出したらキリがない。
 アンコールでは「誕生日には俺を呼べ」、そしてシメがなんとなんと、翌日が選挙日ということで「福田さんはカッコイイ」。これは予想しなかった。改めて聴いてみると本当に痛快な曲である。先述の相撲の曲もそうだが、つくづく民衆の音楽という感じがするし、何百年も昔からこういう音楽が民衆を楽しませてきたのだろうなあと思う。そういう意味でも貴重なバンドである。


 そんなこんなでバッパーズの世界を大いに堪能したのだが、5月に味わった、座ってビール飲んで煮込み突っつきつつ小編成の演奏を目の前でやいのやいの言って観るというスタイルがかなりの快感だったので、それに較べると3時間立ちっぱなし(開演前を含むと4時間)というのは結構辛く、音もデカいんで最後の方は聴いているこっちがヨタっていた。近くで観られて有り難いと言っておきながらナンだが、もうちょっと広いところでディナーショーみたいな感じで(但し料理は煮込み)ゆったり観られるとなお良いなあと思いました。


 それはそれとして、上で書いたように来年は30周年ということだから、新譜も出るかも知れないしライブも沢山演るかも知れない。大いに期待したいところである。