こんなんだったっけ日記

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風立ちぬ

 スタジオジブリの新作『風立ちぬ』を観てきました。
 映画としては、面白いところもあった一方で、詰まらないところもあった、というのがシンプルな感想であるが、その逐一についてはわざわざ書かない。そんなことはどうでも良いのだ。大事なのは、エンディングの荒井由実ひこうき雲」である。
 この曲が用いられることはCMか何かで事前に知っていて、まずいなーこんな名曲を劇場で聴かされたら泣いちゃうんじゃないかと思ってはいたが、実際泣かされた。
 歌詞の内容は、よく読むと映画の主人公の二郎とも、ヒロインの菜穂子とも完全には一致しないのだが、それまで見ていた映画の数々のシーンと歌詞のフレーズとが重なり合って、何とも言えず感動的であった。二番の「けれど、しあわせ」なんかもう涙腺崩壊。
 映画本編はこの曲を導く序章である、とさえ考えたくなる。
 そんなわけで初期ユーミンファンは必見だ。映画館でキャラメル・ママの演奏が聴けるだけでも観に行く価値あり(いいなあ林立夫のスネア)。


 ついでながら映画本編についても少々。

・問題にされていた庵野秀明の二郎の演技であるが、私は気にならなかった(というか、すぐに慣れた。そもそも私は、世間で評判の悪い、トトロの父親の声(by 糸井重里)も全然気にならないのだ)。二郎で言えば少年期の声の方が気になった。なんか、セリフは明治時代風なのだけれども喋り方(発声含め)が全然それに対応できていない感じがした。
・あと、声では本庄役の西島秀俊の喋り方が耳についた。なんか今風のアニメの声優っぽく感じられた。菜穂子役の瀧本美織というひとは、本職が何なのかよく知らないが、(菜穂子のキャラクターはともかくとして)演技には違和感なかった。西村雅彦、國村隼も良かった。
・人物は、黒川さんが良かった。この人は登場シーンからして「あ、これは良いキャラだな」と感じさせたが、最後まで良かった。
・二郎少年がいじめっ子に立ち向かう場面、「てめえ何者だっ」とか「さ、おゆきなさい」とか、台詞回しがテンプレすぎて笑えた。あれはギャグということでいいのだろうか。
・いささか長かった。飛行機と恋愛の二本柱、個人的には後者はザックリ削って頂いて良かったのだが、そうすると最後の「ひこうき雲」が活きないんだよなあ・・・。
・いきなり結婚しちゃうのはどーかと思ったが、結婚式のシーン自体はとても良かった。仲人の二人が「申す・・・」から始まる極めて演劇的な遣り取りを交わすのには、「ああ、儀式ってこういうものだよなあ」と思えた。現代の結婚式における賛美歌とか誓いの口吻とかが同様の役目を果たし得ているかどうかは、知らない。
・三菱に赴任した二郎が颯爽と仕事を始めるシーンも、格好良かったなあ。あの定規が欲しくなる。
・私自身はバリバリの文系なのだが、理系への憧れや劣等感が刺戟される映画であった。
関東大震災のシーンはびっくり。あの震動は誇張だよね? 違うのか? 第三新東京市が出て来るのかと思った。
カストルプ氏の顔はピーター・バラカンを連想させた。