こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

『ジャム』感想(各論篇2)

7. パノラマ
シングル曲。SHIKATA提供である。ひどい言い方になってしまうが、「またお前か」という感が強い。
SHIKATA氏は『JUKE BOX』の「Sorry Sorry love」以来アルバム毎に1曲受け持ち、この度は遂にシングル曲を担うことになった。打ち込み色が強い作風のせいもあって、これまでの作品も正直それほど気に入るものはなかったのだが、今回も同様。というか、ある意味では今回が一番ひどい。
尤も、サウンドは(相変わらずデジタルっぽさを散りばめてはいるが)かなり王道のジャニーズ・ポップスらしさがあって、聴きやすいし、メロディーもなかなか良い。テンションが高すぎてせわしない感もあるが、私は嫌いではない。
では何故「一番ひどい」などと言うか。それは偏に歌詞の故にである。全くなんなのだコレは。
まず冒頭の「今日も1日がスタート/カバンを忘れてしまった」。「カバンを忘れてしまった」ってじゃあお前は何を持って家を出たんだよ、と突っ込みたくなるが、これはまあ良いとしよう。冒険の始まりを導く「ツいてない毎日」の描写なのだなと一応は理解できるからである。
しかし次の「俺がカメかウサギかってどうでもいい」というのは、一体どういう意味なのだ? 「カバンを忘れてしまった」ことと関係がある気がするが、童話「兎と亀」には、忘れ物をするキャラクターはいないはずだ。だから喩えが意味不明だし、そもそも「どうでもいい」ならそんな喩えを持ち出さなければ良いではないか。でも、これもギリギリ許そう。「上手くいかなくてくすぶってる様子」の描写であると理解できるから。
で、次。「100回やり直したって100%やり切れば/どんなことでも大抵はそう/笑えるさ」。あれ? 唐突なポジティブさに驚かされる。カバンを忘れて「どうでもいい」とうそぶいていた彼はどこに行ったのか。この後はずっと、「胸が躍る」「秘めたその情熱」「楽観的志向」「絆」「勇気の火」「笑顔」いう感じなのである。で「最高で最強な瞬間はパノラマ」なのだそうだ。そりゃあいいけど、じゃあ最初のネガティブさは一体何だったのか? 転換のプロセスが一切描かれてないので冒頭の一節が完全に浮いてしまっている。
「繋がってない」感じは実はポジティブ部分に移っても変わらない。例えば、「東へ西へダンシング/いじめっ子にはグーパンチ/メソメソすんな、今日がダメでも明日があるさ」というところ、描写のカテゴリーがあっちこっち飛んでいて殆ど支離滅裂である。あるいは1番のサビを見てみても、「解き放て、秘めたその情熱で鐘を打ち鳴らせ/勇気の一歩踏み出せたらもう1人じゃない/大事な人守るためにいざ立ち上がれ」云々。確かにそれらしいフレーズが連なってはいるが、よく見ると各々のフレーズが全然関連付いていない。
この曲は少年向けアニメ(モンスターハンター ストーリーズ RIDE ON)の主題歌として提供されたものであり、歌詞のテイストも明らかにそれに沿ったものとなっているが、上で述べてきたように非常にツギハギの印象を与える。私は思うのだが、この歌詞は「それらしいフレーズ」(=少年向けアニメ的なワクワク感が出るフレーズ)を適当に当てはめていくことで出来ているのではないか?(これは全くの妄想だが、「パノラマ」というタイトル自体、ドラゴンボールZCHA-LA HEAD-CHA-LA」の歌詞にある「体中に広がるパノラマ」というフレーズに起因するものかも知れない)
いや、各々のフレーズに具体的な元ネタがあるか否かは別にどうでもいいのだが、とにかくこの歌詞は1つの文章としてのまとまりを有しているようには全然読めないという点を問題視したいのだ。子供向けの楽曲と思っていい加減な歌詞書いてるんじゃないの?と言いたくなる。
ところで「百人馬力」という言葉が2番に出て来るのだがコレは何であろうか。「百人力」と「百馬力」がごっちゃになったものだと思うのだが・・・もしアニメに人馬が出て来るのであれば、まあ良いのだけど。


8. Never Say Never
すっかり定着したメンバー自作曲。今回は安田章大単独の作詞作曲である。特に今回は単なる「アルバムの中の1曲」ではなくタイアップ(『スパイダーマン ホームカミング』吹替版)が付いたので存在感が大きい。自らコンペに出したとの由。
映画のCMにも使われたので度々耳にすることになった。CMには関ジャニ∞も出演していた。これマズかったですね。「洋画のCMになんでジャニーズが出てるの?」と思う人は多いだろうし(私だって思う)、その上CM自体の質も低かった。幾つか種類があったと記憶しているが、特に村上が「茶碗蒸し」とか言ったりするやつ、あれはちょっと見てられなかったな。「やっちまったな・・・」と思いましたよ。スパイダーマンに関心のない関ジャニ∞ファンの私ですらヒいたくらいだから、関ジャニ∞に関心のないスパイダーマンファンの方々の心証は、察するに余りある。本当になんであんなCM打っちゃったんだろう。
まあそれは良いのだ。肝心の音楽であるが、CMで流してもキッチリ耳に残る、良く出来た曲だ。安田の曲については毎回言っていることだが、シングルにしても良かったんじゃないか。
曲調としては「レスキューレスキュー」や「ER」「ER2」と同系列の曲と言えようか。デジロック的なやつ。メロディーがかなり凝っていて、面白い。特に「近道は仲間信じる道のり」というところなんて、奇妙なメロディーなんだけどやけに耳に残る。
ただ凝ったメロディー故に、全体的に言葉が上手く乗っていなくて何を言っているのかあまり聞き取れないのは残念である(その中にあって、さっきの「近道は仲間信じる道のり」だけは何故か妙にハッキリ聞き取れるので印象が強い)。
前回の記事で、「えげつない」にて「これまで関ジャニでは聴くことのなかったインダストリアル・メタル的なビート」と書いたものの、この曲でも出てきますね。これバンドで演れないかな。せっかく大倉はツインペダルを使っていることだし。


9. 侍唄(さむらいソング)
シングル曲。確か前のアルバムが出てすぐにリリースされたシングルであった。
錦戸主演のドラマの主題歌。このドラマは江戸時代の武士がなんと現代にタイムスリップするという斬新な設定で・・・って、それ前にもやっとったがな錦戸。忘れもしない『ちょんまげぷりん』だ。と言っても中身は全く覚えていないが。
まあ、それはいいのだ。とにかくそういうドラマの主題歌なので「レキシ」こと池田貴史にお声が掛かったわけだ。尤も実際の楽曲は「きらきら武士」のようなコミカルなものではなく、比較的直球のバラードである。伴奏もレキシのバンドが付けている。これは結構珍しいパターンである。お陰でいつもの関ジャニ∞らしいサウンドとはまた違ったサウンド(よりロックバンドらしいというか)になっている。アコギが効いているのも新鮮。
錦戸主体で、アコギが効いていて、バンド曲のバラードで、と、なんか「ツブサニコイ」を思い出しますね。ただ「ツブサニコイ」は弦楽が効きまくっていたのに対して、この曲はあくまでバンド主体。サウンドとしては私はこちらの方が好み。
サビを中心に、ハモりの聞き所が幾つもあるのが印象的。ただ、これも「なぐりがきBEAT」と同じで、あと一つ何かあれば好きな曲になったのになあ〜という感想である。
ところで今フと思い出しましたけど、「サムライブルース」という曲もありましたね。沢山の人に楽曲を提供してもらっていると、どうしてもこういう「ネタ被り」が起こってしまう。あ、あと「侍戦士(サムライソルジャー)」というのもありました・・・。


10. S.E.V.E.N 転び E.I.G.H.T 起き
ユニコーン提供。私は奥田民生は大好きだが(ソロデビューから『E』『LION』辺りまではほぼ全て愛聴している)、ユニコーンはあまり好きではないのだ。タイトルもなんか・・・。「S.E.V.E.N 転び E.I.G.H.T 起き」。言うまでもなく「七転び八起き」ということで、7と8が入っているから確かに関ジャニにピッタリの語句ではあるのだが、当然既に使われているのだ(「West side!!」。でも「七転八倒」は初めてかな)。曲中に「エイトのビート」というフレーズも出てくるが、これも「もんじゃい・ビート」で使用済みである。これらも「ネタ被り」の例である。
でもこの曲は良いですね。「関ジャニ∞ユニコーンの曲を演る」ということがまさしく具現化していると感じる。楽しい。
「サタデー・ナイト」を下敷きにした掛け声。そしてディープ・パープル「紫の炎(Burn)」を下敷きにしたギター・リフ。但しそれ一本で押し通すのではなく別のギターを対旋律的に加えてくるのは気が利いている。
曲全体としては、最初はコレも「もうちょっとヒネりが欲しかったよなあ」とか思いながら聴いていたのだが、段々「まあこのくらいが良いのかな」という気分になってきた。リフ、合いの手、ハモり、アンサンブルのキメ、と、ロックとしての盛り上がり要素は既に充分備えている。ライヴでの盛り上がりが目に浮かぶようだ。当然バンド形態でやるのですよね?


11. NOROSHI
最後のシングル曲。「キング オブ 男!」が提供されたヤンキー映画の続編?への提供曲とのこと。作者は異なるが、「キング オブ 男!」と同じ路線で、ただ「キング オブ 男!」はB級感が強めだったんでそこはちょっと抑え目で・・・というような打合せのもと書かれた曲と想像する。良くも悪くもそういうテイストの曲である。
太いベース音にエレピが絡んでくるイントロ。カッコいい! すぐさま加わるエレキギターもいい。この後でトランペットも入ってくるし、明らかにバンド形態を意識したアレンジと思うけど、これ村上弾けるのか? 観てみたい。
全体的にアツい曲ではあるが、特にドラムがアツい! 大サビ前の「守るべきものに守られていた日々に気付くでしょう」のバックで叩きまくる大倉を観てみたいよ私は。その直後の、渋谷の「掌が背に触れた」もいい! 何度聴いても実に痺れる。
そんなわけで全体的にかなり好感触なのだが、歌詞にもう少し聞き所があれば、もっと良くなったのになあと思う。あと「ハッ!」という気合い入れみたいなのが要所要所に出てくるけど、聞く度に和田アキ子を思い出してしまうのもちょっと難点。いや別に和田アキ子が嫌というわけではないのだが、なんか気になる。
あとサビの歌詞に「NOROSHI 高々とぶち上げろ」とあるけど、狼煙って「高々とぶち上がる」ものなのか? なんか煙がノロノロと空に登っていくイメージなんだけど。花火みたいに打ち上がる狼煙もあるのかな。
ところで、「NOROSHI」という曲名、なんか聞き覚えがあるな、似たような題名の曲があったような・・・と暫く考えてやっと思い出した。「ケムリ」だ。「無責任ヒーロー」のカップリング。「ブリュレ」っぽい格好良い曲で、コンサートでも披露されていたがDVDには収められなかった不遇の曲である。懐かしいな。


12. 青春のすべて
アルバム本編を締め括るのは「いきものがかり」の水野良樹の提供曲。私はいきものがかりについては「うさんくさい連中」というイメージがあったので、この曲についても多少の偏見を持ちつつ聴いたのだが、思ったより良かった。なんか「人気あるのも判るわ」という感じ。
イントロの音作りなんか実に「プロの仕事」を見せられている感じがする。めちゃめちゃカラオケ映えしそうなサウンドである。メロディーも綺麗だ。
・・・ただこの曲が好きかというと、別に、それは。まあ映像で見ると印象が良くなる可能性はあると思うが。