何故だか最近熱心に聴いている『ズッコケ大脱走』。最初に聴いた時に(多分半年かそこら前のことですが)地味な曲が多くてどうもな、と思って(実際、次作の『PUZZLE』なんかと較べると、曲もアレンジも随分武骨に思える)、それ以来あんまり真面目に聴いてこなかったのだが、改めて聴くと、なかなか良いです。今まで関ジャニ∞は『8UPPERS』が問答無用の最高傑作だと思ってきたが…まあ今でもそう思っているが、それはそれとして、ひょっとして彼らはこの『ズッコケ〜』の方向を突き進むべきだったんじゃないかとさえ思いつつある。
1. Big Sky Blues
こりゃ村田陽一か、と思うようなブラスの効いた黒っぽいアレンジ。チャカポコ・ギターが気持ちよい。後半のフルート・ソロも良い。多分他のジャニーズ・グループでもそうなのだろうが、ニューヨークとかの敏腕スタジオ・ミュージシャンがオケを作っていたりするので、ヘッドホンなんかでしっかり聴くと伴奏がやたら気持ちよいのだ。
このテの曲が他にも3曲ほど入っている。前のアルバムが『F・T・O』という名前でこれは「Funky Town Osaka」の略だそうであるが(これを先日の「すごはち」で丸山が「Fujisan Tamatama Okkikatta」と解いていた)、これらの曲によってむしろこのアルバムの方がファンキーに色づけられているように感じられる。
「海は向うから来ちゃくれないけど空ならいつでも上にある」というのはナルホドなあと思わせる(実際の歌詞では「上にいる」。ちょっと違和感)。仕事は抱きしめちゃくれないけど、という歌詞も好き。
2. Speedy Wonder
これも村田風の1曲。前曲と言い、別に音数が少ないわけではないのだが、やっぱりシンセサイザーで過度に飾られた音楽に慣れていると、こういう曲は地味に聞こえるようだ。オルガンが格好良いです。
「花束買って カードまで書いて」というところ、大阪に縁のあったせいか、いつも「カードまで」が「門真で」と聞こえてしまう。そう言えば誰かが門真の出身じゃなかったか。錦戸だっけか。(追記。やっぱり錦戸らしい)
Bメロの「誰かと間違えたんじゃない」、「(リングに刻んだ)日付も間違えちゃいない」というのが洒落てて好きです。「商店街抜けて、銀行を曲がって」なんていうのもいい。後盤の「ちょちょちょちょちょっと待ってくれよ」の村上も頑張っている。
こんなタイトルではあるが歌詞はかの偉人とは全然関係ない(と思う)。
3. ∞SAKAおばちゃんROCK(type LAKJ2)
もう全っ然期待させないタイトルであるが、聴いてみると意外と悪くない。というか僕は結構好きである。
シングル・バージョンに較べると冒頭がやや落ち着いたテンション。ビッグ・バンド・ジャズ風の曲だが、やっぱり吉本新喜劇のテーマがPee Wee Huntというジャズマンの曲なことからも判るように(「Somebody Stole My Gal」。ディキシーランド・ジャズ?)、コテコテ大阪には明るいジャズが似合うようだ。アホみたいな曲であるが素直に楽しく聴ける。「か〜んじゃにじゃに♪」というのもいいよね。何がいいのかと訊かれると困るのだが。まあつくづく無邪気なところがでしょうか。
コント部分は特に面白くないが、「アメちゃん呼ばれよ」というのはネイティブも納得のフレーズ。あと「田中さん、犬逃げてるよー」の完璧なアクセント(ネイティブだから当然だが)も毎回笑わせられる。しかしどの台詞もTOKIO城島に聞こえるな。
グループ名において、数学記号の∞をアラビア数字の8に見立てたのも上手くやったものだが、同じ∞を今度はoosakaのooにしてしまったというのも、これまたなかなかのアイディアやなと思う。
ただ、最初の掛け声、「はよ起き〜!」とあるが、ここは当然「はよ寝え〜!」とあるべきだった。まあそれじゃ曲が始まらん、ということなのだろうが、でもなあ、「ヨソはヨソ、ウチはウチ」と来て「はよ起き〜」はおかしいよ、やっぱり。
4. 二人の涙雨
このアルバムのリリースは2007年だそうであるが、とてもそうは聞こえない、1981年くらいの感じである。ベタベタ。次作『PUZZLE』に収録されている「My Last Train」もベタベタだったが、あれが一応洋楽にも目配りしたベタベタであるとするならば、この曲のは日本・韓国に特有?の演歌・歌謡曲直球のベタベタである。イントロのティンパニも心憎いし、サビ前のヴィブラスラップも、もうここしかない!というタイミングで「カァ〜〜ン」と鳴ってくれる。挙句の果てにゃ、間奏ソロは高らかなトランペットである。「もうこれ以上歩けない…」なんて歌詞も湿度たっぷり。終盤のサビ転調も、普通なら平々凡々たるものなのにこの曲では効きまくりだ。
1番のAメロは、錦戸と渋谷のプレイスタイルの相違が明快に現れていて面白いが、言うまでもなくこの曲の主役はBメロの大倉である。異常なほど色っぽい。もうノリノリで、明らかに実力以上の上手さが発揮されている。後年の「モンじゃい・ビート」も上手かったが、こういう演歌・コブシ・歌い込み系が得意なのであろうか。
5. 強情にGO!
バンド・ナンバー。疾走感があって、アルバム中一番短い3分33秒。余談ながら、このアルバムはバラードが少ない割には各曲が長くって、13曲で計58分もある。LPだったら収まりきらないところだ。
この曲は2009→2010のカウントダウン・コンサートでも演っていた。見てきたような口ぶりだがDVDで観ただけだ。指弾き主体の丸山もこの曲ではピックを使っていた。サビ部分は、CDで聴くとひたすらダウン・ピッキングでやっているようだが、カウコンDVDを観ると丸ちゃんは多分オルタネイトで弾いていた。あと、この曲は最後サビ前のピック・スクラッチが格好良い。上のDVDでは安田がES-335でやっててかっこよかった。
各メンバーのボーカルがはっきり聞けるのも嬉しい。2番のAメロは大倉と村上。大倉、前曲の絶唱とは別人かと思われるほどの棒読み(棒歌い?)。「何回だって挑戦すっぞ!」の村上は張り切ってる感じで好印象。
6. Great Escape 〜大脱走〜
これも村田陽一風の1曲。イントロが面白い。が、この曲もJポップ慣れしていると退屈じゃないか。でも昔(森がいた頃)のSMAPもこんな感じだった気もするしなあ。別にいいのか。この曲はエンディングもちょっとしつこい感じだし、歌詞も「Big Sky Blues」の焼き直しのようにも思えるし、今のところ僕の中ではあんまり評価の高くない1曲。「さあみんなで逃げようぜ」というメッセージ自体は割と好きであるが。
7. さよならはいつも
バラード。ま、2007年でバラードと言えば普通はこういうのを持って来るわな。「二人の涙雨」の方が異常なんであって。サビなんかもいかにもジャニーズ向けという感じがする。コンサートで演ると一緒に歌えていい感じ。きれいにまとまっている。悪く言えば面白いところのない曲である。
ただ、終盤で高音(安田?)などが重なってくるところは聴き所と思う。あと、オーボエ・ソロ(サンプリングかも知れんが)があるのがちょっと嬉しい。
8. 地元の王様
また来た村田曲(村田陽一さんは参加してません、多分。念のため)。期待できないタイトルだが、聴いてみると意外と良い。朴訥な感じの「そうなん?」(by横山)がいい。「オレがバーンゆうて…」というやつもいいけど。
曲は、テンションが高くって「Great Escape」より楽しめるように思う。ズルズルと引きずらないでスパっと終わるのもいい。
あと、結構ソロボーカルの部分が多いような。Bメロは1,2番とも丸山だろうか。どっちもいい感じ。
9. ズッコケ男道
名曲。
ウルフルズ「ガッツだぜ!」のパクリである、と言うと言葉は悪いが、まあ元ネタというか、「『ガッツだぜ!』みたいな感じの、ディスコ・ミュージックで暑苦しい応援を歌うような曲…」というのが念頭にあったことは間違いないと思う。即ち「ガッツだぜ!=気張ってこーぜ!」である。音楽の基盤も、キーボードのウネウネさせ方なんかも含めて非常によく似ている(ついでながら、「ガッツだぜ!」のPVは、「∞SAKAおばちゃんROCK」のPVの元ネタになっているような気がする)。
ただ、この曲の偉大なところは、そうした明確な(つまりすぐバレる)元ネタを持ちながら、その元ネタを凌駕する出来栄えになったという点である。「ガッツだぜ!」も勿論名曲だが、聴き手を鼓舞するのがこのテの曲の一義的な目的であるとすると、その目的をより高度に達成しているのはむしろこの「ズッコケ男道」ではないかと思う――要するに、この曲の方が聴いてて「アガる」。
その要因はいくつかあるだろうが、単純(しかし重要)な点として、「イェイイェイイェイ!」「ブンブン!」「ハイ!ハイ!ハイ!」といった、正に国籍無用!のツボ突きフレーズが連打されていることが挙げられよう。特に「ハイ!ハイ!ハイ!」は、後で「無責任ヒーロー」でも使われたが、凄いよなあ。宴会のお囃子をポップソングに盛り込むというのはアホっぽいがかなりのアイディアと思う。
終盤のサビの連続はちょっとしつこすぎるような気がするが、実際のコンサートではみんな大合唱なのだからこのくらい長いのがいいのだろう。
また、Bメロもいい。「ガッツだぜ!」のBメロも良いが、「ズッコケ男道」のBメロは(PVで涙ちょちょ切れているだけあって)かなりメロウで、日本人なら大抵の人はここでグッと来るだろう。そこからあのサビに繋がるんだからみんな大盛り上がりだ。
その他にも、細かい芸が効いている。横山の「ウーッ!」(マンボかっ!)から始まる奇抜さには初めて聞く人も目を剥くだろう(この部分はPVだともっと面白い)。演奏も、基盤としてはこのアルバムに散りばめられた村田風のファンク・ナンバーと同じなのだが、やはりキーボードが張り切っているせいか、ドーンと派手である。まあファンクとディスコという違いもある。エレキギターも、「チャカポコ」ディスコと「ジャギャーン」ロックの併せワザだ。間奏のソロは、名演。
ボーカルは、それほど各人の個性が出ているとも思われないが、やはり初めて聞く人にはBメロなんかでの渋谷の独特の歌唱は耳を引くだろうし、サビでの安田の「(振り切ってこーぜ)ほらぁ〜」というちょっと粘っこい歌い方も、僕は好きだ。あと、終盤の大サビ冒頭(明日は明日の風が吹く〜ハイ!ハイ!ハイ!の次、3:45辺り)で飛び出す錦戸の「気張ってこーぜ!」のガナリ度合がかなりキツくて、毎回聞き入ってしまう。これがOKになったのも凄いが、印象的だからアリか。
錦戸と言えば、PVで、2番のBメロ後半「蹴飛ばしてこーや」でキックを入れるところがカッコイイですよね。PVは所々日清焼きそばUFOのCMをちょっと髣髴させる感じである。僕は誰が誰か見分けが付くのに結構時間がかかった。錦戸と渋谷はすぐ判るのだが、他が。
ついでながらこの曲は、意識的に聴くようになる以前から僕が知っていた数少ない(2曲)関ジャニ∞の曲であった(もう1曲は「好きやねん、大阪」)。
10. エネルギー
小品風の雰囲気もあるが凄くキャッチーで、多分人気曲だろう。僕も大好きだ。今後も演ればいいのにと思う。これはバンド曲なのかな。この時期のコンサートDVDを観たことがないので判らない。
判らないと言えば、この曲、冒頭のサビを歌っているのは丸山と思うが、その後のAメロ(吹っ飛ばす風の道…)も丸山に聞こえるんだけど、連続してこんなに長く歌うのはちょっとおかしいから、だとすると安田か。判らない。(補記:やはり安田である旨、御指摘頂きました)
11. 旅の涯には
最初、おっロック調の曲だ、と思って嬉しくなるのだが(ちょっとリズムが掴み難いところが、「You wake me, wake me so good」でリズムがはっきりする、というのも気持ちよい)、Bメロ→サビでなんかポップに収まってしまうのがちょっと残念。これもバンド曲なのかしらん。これは2回目のAメロ(0:35〜)とかサビなんかで小さくコーラスが効いていたりするので、ちゃんとしたステレオやヘッドホンで聴くと楽しめそうだ。
この曲は小芝居(ズッコケお宝パニック!)の印象も強い。
12. ありがとう。
こんな気持ち悪いタイトルの曲聴きたかねえよ、と思うのだが、井上陽水奥田民生の同名曲然り、ツェッペリンの「Thank You」という曲もなかなか良かったし、意外とこのタイトルの曲は信用出来るのかも知れない(12/16追記。忘れていましたがポリシックスの「ありがとう」も傑作)。関ジャニ∞による「ありがとう。」(この句点もあざといよな、なんか)も、サウンドがいかにもカラオケ映えしそうという気持ち悪さはあるものの、軽快でなかなか聴き良い曲である。サビの、「考えるより心からの言葉」というところの「こころからぁ〜♪」と上がるのが気持ちよい。ベースギターが動きまくりなのも気持ちよい。
この曲の超実験的なところは、出だしである。よくこんな静かなところを横山に任せたな。これに留まらず、後半の静かな「たった一度だけ…」というところは、村上に充てられている(3:02〜)。随分冒険したもんだ。CDは勿論どちらもサマになっているが、コンサートではどうだったのか。上手くいっている可能性もあるので、ちょっと確認してみたいところだ。
13. 関風ファイティング
作曲は馬飼野康二ということで、90年代に幼年期・少年期を過ごした人間としてはいかにもジャニーズ!という感じの曲に聞こえるが、いつの頃からか僕はこの曲が大好きになっていた。ひょっとしたら今や「ズッコケ男道」より好きかも知れない。重層的なサビは――と言うのは、「恋に破れて〜」と「ドラゴンが〜」という2つの聴き所があるという意味であるが――ポップソングとして完璧ではないかとさえ思える。
かと思えば、2:35からの間奏(ウ・ハー/ヨッシャーという部分)では歪ませたエレキギターがなんか気持ち良いような悪いような、ヘンテコな音を出していて(これはつい最近気付いた)、これも一つの聴き所になっている。
思えば、初めて観た関ジャニ∞映像作品たる2009→2010のカウントダウン・コンサートにおいて、この曲の間奏シメで丸山がポーズ(雨上がり決死隊の「宮迫です!」というギャグと同じやつ)をキメていたのを見て、(どういうわけだが)凄く好印象を抱き、それが関ジャニ∞ファンになった1つのきっかけである……と言ってもそうそう過言ではないのであって、そもそもからしてこの曲には思い入れがあったのだとも言える(でもあのDVDではサビしか歌ってなかったな)。
ところで、間奏後半の、各人がアドリブ?でセリフを入れていく部分は全然面白くない。特に渋谷が面白くない。あれは上のDVDなんかではかなり改善されているように僕には思われる。