メンバーの書き並べ方（前編）
ビートルズのメンバーと言えばジョン、ポール、ジョージ、リンゴで、この順番は今も昔も*1、東も西も、北半球も南半球も同じと思う。
この順番の由来はちょっと複雑で（多分人気の順ではないだろう）、推察してみるに次のようなステップを踏んでいるのでは無かろうか。則ち、まずジョンが初期ビートルズのリーダー格だった（曲も沢山作っていたし、ポールよりも年上だった）ことから彼をまず筆頭として、次にジョンと並ぶメイン・ソングライター（≒メイン・シンガー）たるポール、がまず決まる。次に、ドラマーである（＝縁の下の力持ち）ということからリンゴが末尾に置かれて、この三者の間に置かれる形で3番目にジョージ、という具合である。
これは特殊な例で、普通はバンドのメンバー順というのはボーカル→ギター→ベース→ドラムとなる、これは常識と言って良いだろう。以下、例を挙げてみよう。
レッド・ツェッペリン：ロバート・プラント→ジミー・ペイジ→ジョン・ポール・ジョーンズ→ジョン・ボーナム
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ：アンソニー・キーディス→ジョン・フルシアンテ→フリー→チャド・スミス*2
ザ・フー：ロジャー・ダルトリー→ピート・タウンゼント→ジョン・エントウィッスル→キース・ムーン
などなど。これがトリオになっても、ヌケがあるだけで順番は変わらない。これはベック・ボガート＆アピスとかエマーソン・レイク＆パーマー（これはキーボードがギター代り）といったバンド名にもずばり表れている。クリームだってクラプトン→ブルース→ベイカーの順に並ぶだろう。グリーン・デイだってビリー→マイク→トレの順だろう*3。逆に、メンバーが増える場合は、キーボードがギターの次に来る。第2期ディープ・パープルはギラン→ブラックモア→ロード→グローヴァー→ペイスの順になるのである（多分）。無論、2人組の場合は単に目立つ方が先である（例、ホワイト・ストライプス：ジャック→メグ）。
上の例外としては、レッチリの所の注で述べたように、あるメンバーが（メイン・ソングライターである、オリジナル・メンバーである等の理由から）先に持ってこられる場合がある。ビートルズでも、ジョンがポールを誘い、その後でジョージが入り、レコード・デビューに際してリンゴが入った、という経歴がそのまま順番に反映されているとも捉えられるが、考えすぎだろう。なお、「ジョン・ポール・ジョージ」という年齢順に、後からの加入であるリンゴを加えた、という順番であるとも取れるが、これもそこまで考えてのものではないだろうという気がする。
例外的処置ということで言えば、バンド名などの影響を受けて順番が固定している場合がある。一体誰が「ガーファンクルとサイモンが」とか「オーツとホールに」などと言うだろうか？
ところで、ギタリストが表看板を背負っているような場合はどうなるか？ 例えば、第2期ジェフ・ベック・グループは、やはりベックが冒頭に来るだろう。その次に来るのは、（今では）ジェフの次に有名なドラムのコージー・パウエルか、ボーカリストということでボブ・テンチ（ソロ・アルバム出してるらしいですね）か。難しいところである。こういうバンドの場合、そもそも表看板のメンバー以外は一般的な知名度が低いことが多いので、メンバーの並び順というのも世論（？）が形成されにくい。
あと、熱心なファンでないと判らないのはキッスの場合である。僕なんかからするとジーン・シモンズが一番目立って見えるのだが、あのバンドのメイン・ボーカルはポール・スタンレー（今暫く名字が思い出せなかった）なのだろうか？ それならポール→ジーン→エース→ピーターかな。
ついでながら日本のバンドも挙げておこう。やはり同じ原則で貫かれるのである。
ラルク アン シエル：hyde→ken→tetsu(ya)→yukihiro
トライセラトップス：和田唱→林幸治→吉田佳史 *4
はっぴいえんど：大滝詠一→鈴木茂→細野晴臣→松本隆 *5
すかんち：ローリー寺西→ドクター田中→shima-chang→ポンプ小川 *6
などなど。ラルクはtetsuyaがリーダーだが、彼を筆頭に挙げて並べるのは余程こだわりのあるファンだけだろう。
他にも考えてみると、例えばポリシックスは、今はハヤシ→フミ→ヤノで問題なかろうが、カヨがいた頃は、キーボード＞ベースということでカヨ→フミだったのか、存在感の強さということで（？）フミ→カヨだったのか、ちょっと判らない。ジャンヌダルクなら、yasu→you→kiyo→ka-yu→shujiとなるのだろうか（と思ってウィキペディアを見るとka-yuがkiyoの先に来ている。事ほど然様にキーボードの位置付けは微妙なのである）。
例外的処置の在り方もやはり洋物バンドと同様で、例えばくるりは（今どういうメンバー編成なのか寡聞にして知らないが）、岸田の次は、ベーシストでありながら（岸田と並ぶオリジナル・メンバーであるということで）佐藤が来るであろう。
グレイのようにギタリストが2人いる（そしてドラマーがいない）という場合は、リード・ギタリストが先に来るのが普通と思われる。グレイはHISASHIがリードを務めることが多いらしいが（ウィキペディア）、ソングライターがTAKUROであるということで彼の方が先に来そうだ。そう言えば、彼はバンドのリーダーだったと思うから、TERUよりも先に来てもおかしくはないが、ウィキペディアを見るとメンバー紹介はTERUが先である。やはりボーカリストは強いのだ。
あと、日本だと2人組のグループというのが割と目立つようだが、この場合は当然ボーカルが先になる。B'zなら稲葉→松本、サーフィスなら椎名→永谷。ゆずの場合はどうなる？ ファンの中では決まりがあるのかも知れない。19はけんじ→ケイゴだったよなあ、多分。これはアクの強い順か。
表看板のメンバー以外は名を知られていないという状況は日本のグループだと一層顕著のように思われ、例えばMr.Childrenのメンバーを僕は桜井以外知らないし（桜井も名を知らない。あと、ベスト盤の販促写真みたいのを最近見たけど〈桜井が大きな卵を手にしているやつ〉、桜井以外はとてもアーティストに見えなかった）、スピッツも、草野マサムネ以外は、確かギターが三輪テツヤという名だったと思うが、他2人（だよな？）は全く判らない。サザンオールスターズも、桑田佳祐と原由子以外は判らない（関口という人がいたと思うが、ひょっとしたら辞めた人かも知れない）。タイガース（段々遡るなあ・・・）はジュリーとサリー（とトッポ）しか知らない。スパイダース（なんか字で書くと変だね、スパイダースって。スパイスみたいだからか）は、ムッシュとマチャアキと井上順の他は知らない（そもそも何人組だったんだ）*7。
というわけで、最後は脱線した感があるが、担当楽器によって書き並べるのは洋の東西を問わざる普遍性があることが判った。ビースティ・ボーイズのような場合がどうなるかは、知らない。
＊1 立川直樹『ビートルズの本』（1977年）で、この順番について述べたところがあったと記憶する。
＊2 フリーがアンソニーと並んでのオリジナル・メンバーだからジョンよりも前に来てもおかしくないかも知れない。また、今のギタリストは周知の通りジョシュ某だが、これは新参者ということで末尾に来ているかも知れない。
＊3 どうしてクリームのメンバーは姓で書いたのに、グリーン・デイのメンバーは名で書いたんだ、などと言われても困る。これはこれで考えるべき問題であろう。ビリーのことを「アームストロング」とは絶対に言わないよね。
＊4 どうでもいいけど、「ドラマーは最年長だが加入は最後」という点で、トライセラはビートルズと共通している。と知ったら和田唱は喜ぶだろうな。もう気づいてるか。
＊5 この順番はちょっと自信ない。キャラメル・ママになるともっと判らない。筆頭は細野さんか？
＊6 この順番もちょっと自信ない。
＊7 大野克夫、井上尭之を忘れてました。そう言えばキャプテンズってどうなったのかな・・・と思って調べてみると、新メンバーは既に決まったとのことでびっくり（でも素性はまだ秘密らしい）。
