こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

関ジャニ∞『Re:LIVE』感想(前編)

 正直に言えば関ジャニ∞からは遠ざかっていた。渋谷すばる、次いで錦戸亮が脱退し、5人体制での初シングル「友よ」は、テレビで流れていたので耳にはしていたが、悪くはないと思うものの気に入るには至らず。このまま関ジャニ∞のファンではなくなっていくのかなあ、などと思うこともあった。

 9月初旬のある日、テレビCMで新曲「Re:LIVE」を聞いた。これは、なかなか良さそうだった。ここ数年来彼らのシングルは買っていなかったが、アルバムを待っているといつになるか分からないので、買ってみようと思った。で、検索してみると例によってバージョン違いが幾つも出ておるのだが、その内の一つはなんとツアーDVDが2公演分付いているという。すごい。翌日近所のCDショップに買いに行った(ちなみに現在大阪は高槻市在住なので、関ジャニ∞関係を買うのはいつもタワレコ高槻店である。こういうところ(https://minjimo.com/osaka/takatsuki-city/652/)です)。

Re:LIVE(期間限定盤B)

Re:LIVE(期間限定盤B)

  • アーティスト:関ジャニ∞
  • 発売日: 2020/08/19
  • メディア: CD
 

  で、聴いた。観た。どちらも良かったが、特にツアーDVDは観てよかった。心打たれたと言ってよい。それでまたブログを書くことにした。

 まず新曲「Re:LIVE」について。これは曲調からして、現状打破と言いましょうか起死回生と言いましょうか、彼らのやる気が感じられる、いい曲だ。CMでサビを聴いた時はダンスナンバーかと思ったが、通しで聴くとバンドナンバーに思える。ありていに言うと、「LIFE ~目の前の向こうへ~」の影響を濃厚に受けた曲であるが、よく出来ている。

 歌詞は各メンバーの作詞を合わせたものだそうだが(メンバー作詞曲がシングルA面になるのは初めてだっけ?)、横山パートの「名前のない理不尽な雨が降る」なんて面白いし、サビの「守るための強さが 受け容れるやさしさが」なども良いフレーズだと思った。あと何と言っても、終盤の「信じてくれた勇敢な君を 僕らが連れ出すよ」、これはファン感涙でしょう。私もグっと来た。

 またサウンドについても、メンバーが抜けて予算が削られて録音の質が落ちていたらどうしよう、と危惧していたのだが、ちゃんとこれまで通りの、生演奏主体の良い音だったのは嬉しかった。

(DVD編につづく)

渋谷すばる『二歳』各曲感想(C面・D面)

 前稿の続き。後半である。他の音楽に気が向いて暫く本作を聴いていなかったのだが、改めて聴いてみると本当に良い。傑作と言っていい。こういう1枚を作れたんだから、ソロになった甲斐があると思う。

 
7. 爆音

 静かな前曲(「なんにもないな」)からの仕切り直しという意図を明確に感じる。楽曲単体としては、もうちょっとヒネりが欲しかった気もするが、これはライブではかなり良い感じに響く気がするので、映像で観てみたい。それから、これは次の曲も同様だが、シンセサイザーを積極的に鳴らしていることを物珍しく感じた。むしろもっとアナログ推しで来るかと思っていたので。でも決して悪くない。

 

8. ベルトコンベアー

 ここからが良い。アルバムの勝敗を決めるのは、後半に良い曲をしっかり置けるか否かだと私は常々思っているのだが、その点でこのアルバムは「勝った」。ここから良い曲・面白い曲を畳み掛けてくるのだ。

 この曲は、怪しげな雰囲気と明るいサビが好対照を成していて、面白い曲だ。単なる良い曲というのではなくって、こういうフックのある、「引っ掛かる」曲をちゃんと置けるのが、アルバムを魅力的なものにするためには重要だと思う。

 それぞれの楽器がバッチリ鳴っていて嬉しいが、特に耳に付くのは先述のシンセサイザーと、合間を縫ってくるエレキベース。瑞々しいドラムも良い。もちろんギターも良いよ。

 
9. ライオン

 ここから終盤に向かい、叙情的な曲が続く。ともすれば「くどい」という印象を与えかねないのだが――そして実際、「くどい」一歩手前まで来ているとは思うが――そこをギリギリで回避している。それは曲調の微妙な差異と、そして各曲のクオリティーの高さによるものである。

 「ライオン」「TRAIN と RAIN」「生きる」はいずれも切々と訴えるところのあるバラードだが、その中でも特に感情の高ぶりが大きいのはこの「ライオン」ではないかと思う。後半サビの「俺のもの 俺のもの 俺だけのもの」というところは、まさしく「絶唱」と呼ぶに相応しい。こういうのに出会えるから、音楽を聴くのは止められない。

 

10. TRAINとRAIN 

 これもアルバム前半の楽曲「来ないで」と同じように、人とモノとを重ね合わせる歌詞の曲。

 優しげなAメロから、盛り上がりの大きい、声を張り上げるサビに至る。でもそのサビの終わりではまたAメロのムードに戻り、

 「僕は電車。」

 と、優しく締め括る。そこが良い。 

 前曲の「ライオン」もそうだけれども、自伝的なムードを感じる歌詞である。これは、私が涙ぐんでしまうくらいだもの、ファンは泣くだろう。

 「でも僕の体は鉄作り 何があったってひしゃげるものか」というフレーズがとても良い。古めかしくも、また時代を超えているようにも感じる。

 電車の進行音をモチーフにしたパーカッションのようなサウンドが面白い。

 

11. 生きる

 最後から2曲目だが、この曲が実質的なアルバムのエンディングであると見て良いだろう。

 最初のギターは、エレキとアコギが同時に鳴っているように聞こえるが、これはエレキの音をアンプからの出音だけではなくギターそのものの生音も併せて録音したものだろうか。その後は、伴奏が大きく鳴るアレンジになっているが、個々の楽器の響きがはっきりしている、裏を返せばちゃんと「空白」のある音像なので、音そのものの大きさに比してうるさく感じない。昔ながらのロックファンを喜ばせる録音である。前稿でも触れたように、これはアルバムのサウンド・ディレクターである山森大輔の功績だろう。

 1番のサビで「一歩踏み出すなんてしなくてもいい/いつもつま先だけはあの方向へ」とあるのだが、その後を聴いていくと、やがてその「つま先」が前へと向かっていくことが示される。そこが素晴らしいと思う。

 最後は、「生きる」という歌唱部で曲が終わるのだと思いきや、その後にアウトロが付いていたことが嬉しい驚きだった。この音源ではごく短いものだが、ライブではこのアウトロを是非もっと長く演ってほしい。

 

12. キミ

 弾き語りのデモをそのまま収めたような作りになっている。だからアルバム本編は前曲「生きる」で終わり、この曲はオマケというか、ボーナストラック的な気持ちで聴くのが良いのだろう。

 ところで、ジョン・レノンの実質的な初ソロ・アルバム『ジョンの魂』の最後の曲は、"My Mummy's Dead"という短い曲だが、テレコに録ったらしいアコギの弾き語りを収めた、実にラフな仕上がりになっている。渋谷すばるの実質的な初ソロ・アルバムである本作の最終曲がそれと同じ作りになっているのは、果たして偶然かどうか、非常に興味を惹かれる。前の記事で書いたように、『二歳』の発売日はジョンの誕生日の10月9日である。

 

二歳(通常盤)

二歳(通常盤)

 

 

ドクター田中を悼む

 "すかんち"のキーボーディスト兼サブシンガーとして知られるドクター田中が逝去したとの一報が入った。
 バンドの初期~中期を担ったメンバーで、アルバムで言うと『OPERA』を最後に脱退、その後を小川文明が担った。ドクター田中は、その強烈なルックスだけでなく、楽曲・歌唱の面でも、この時期のすかんちに重要な色付けを行っていた。


 私がすかんちを知ったのは――90年代に幼少~少年期を過ごしたほとんどの人は同様だと思うが――『天才てれびくん』で使われていた「タイムマシーンでいこう」「YOU YOU YOU」によってであった。その後、タレントとしてローリー寺西を知り、ロックが好きになり日本のロックにも関心が向かう中で すかんちを「再発見」したのだったが、CDを手に入れてちゃんと聴いたのは割と遅く、大学院に進学した辺りだったかと思う。その後、どんどん聴いていった。
 最初に聴いたオリジナル・アルバムが先述の『OPERA』であった。当然のようにローリー(だけ)がボーカルと思い込んで聴いていたところに、4曲目の「恋人はアンドロイド」で、明らかにローリーとは違う男声ボーカルが入ってきたので、驚いた。そのボーカルは・・・何と言うか、ローリーと比べると高音がかなり効いた声質で、奇妙にナルシスティックな印象を与え、それなのに快活な雰囲気もあり、且つ歌唱としては朗々としていて上手い・・・という、良くも悪くも相当に印象深いものであった。
 
 ハッキリ言えば「気持ち悪い」というのが第一印象だったのだが、にも関わらず妙に気になる、聴いてしまう、という、そういう歌声・歌唱であった。インパクトそのもので言えば、ローリーを超えていたと言っても良いだろう。それがドクター田中だった。
 アルバム後半に収められた「涙の選択科目」も同様であった。2曲とも、楽曲自体は妙にストレートなポップスで、全体を支配するローリーの作風の中では「浮いている」ように思えた。「アルバムに1,2曲」という位置付けからすると、ビートルズにおけるジョージ・ハリソンを連想しそうなものだが、ジョージみたいなシブい感じではないのだ。大袈裟に言えばジョージの代わりにフレディー・マーキュリーが入ったみたいな感じである。艶っぽい声とした声とスキっと爽やかな楽曲(そしてビジュアル)との強烈なミスマッチが、えも言われぬ個性・魅力となっていた。

 最初は違和感の方が強かったドクター田中の楽曲・演奏であったが、上にも述べたように、聴いていく内にどんどん「これが無くては」という気持ちになっていく。それが彼の音楽とすかんち全体との不思議な関係であった。
 彼の楽曲はもちろん他のアルバムでも聴くことができるが、特に印象的なものの一つに「欧羅巴奇譚2」がある(『恋の薔薇薔薇殺人事件』収録)。基本的にすかんちの「爽やか」(カッコ付きなのが重要)を受け持っていた彼ではあるが、この曲ではドラマチカルな楽曲で、その声の個性をビシっとマッチさせている。
 その「爽やか」路線で言えば、同じく『恋の薔薇薔薇殺人事件』収録の「涙のサイレント・ムービー」を挙げなくてはなるまい。これは本当に美しく感動的なポップスの傑作だ。
 もう1曲挙げるならば、バンド自体の代表曲の1つ「恋のT.K.O」だろう。これはローリーの歌唱が主体の曲だが、後半のCメロでドクター田中が入ってくる。その対比が実にイイ! 正にこの時期のすかんちが堪能できる曲と言えるだろう。
 
 ボーカルの掛け合いということで言うと、shima-chang、ドクター田中、ローリーの三者の掛け合いが楽しめる「好き好きダーリン」(『恋のロマンティック大爆撃』収録)も必聴だろう。普段ならローリーが言いそうなフレーズをドクターが発しているところも面白い。
 
 ドクター田中の冥福を祈る。私は、あなたが好きだった。