こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

渋谷すばるのこと

週刊誌が渋谷すばるの脱退を報じた、という見出しをネットニュースで目にした時はコワいので中身を見ずに放っておいたのだが、その翌日だか翌々日だかに、メンバーが記者会見を開いて公式に発表したという記事を見た時には流石に中身を読まないわけにはいかなかった。

言うまでもなく、ファンにとってはメンバーが抜けるのは本当に辛いことだが、嘆いたところで戻るわけでなし、ましてや大の大人である本人が辞めたくて辞めたというのだから、我々ファンはなるべく早く気持ちの整理を付けて、今回のことのポジティブな面に目を向けるようにするのが、精神衛生上よろしいように思う。


今回のことのポジティブな面。それは第一には、「辞めたい人が辞めることができた」ということではないかと思う。
今更ではあるが、「人気アイドルグループのメンバーである」ということは実に珍妙なものである、と想像される。自分の顔写真が貼り付けられたうちわが大量に売り出されているのを珍妙と言わずになんと言おう? いくらそれが多くの人たちを楽しませているとはいえ、三十代も後半になった男が「もういい加減こういうことはやめて、別の生き方をしたい」と強く思ったとしても何の不思議もないと私は思う。
まあそういう理由で渋谷が脱退を決意したのかどうかは知らないが、とにかく私が思うのは、辞めたい人が「辞めたい」とちゃんと言うことができて、それを回りが必死に止めてくれて、でもやっぱり辞めたいとなった時にみんながそれを尊重してくれ、事務所はちゃんとした公表の場を設けてくれ、メンバーたちが温かく力強く説明の場に立ってくれる――これって素晴らしいことではなかろうか? ましてや関ジャニ∞のような大きなグループにおいてそれが果たされたということは、本人たちにとってもファンにとっても極めて幸運なことだったのではないかと思われてならない。


ただ残念なのはタイミングである。次のツアーには出てほしかった。それは「ファンに直接最後の挨拶をしてほしい」という思いもさることながら、「これで最後だ」という思いがこれまで以上のパフォーマンスを引き出すきっかけになったのではないかと思うからである。それを見てみたかった。
それからもっと欲を言えば、アルバムをもう一枚残してからグループを去ってほしかった。前作『ジャム』は決して悪いアルバムではなかったが、今ひとつ食い足りないという印象もぬぐいきれないものであった。どうせなら、痛快な一枚をドーンと作り上げてから、新たな道に進んで欲しかったものである。


ポジティブな面をもうひとつ挙げる。それはやはり今後の関ジャニ∞の音楽のことである。 渋谷が関ジャニ∞の音楽面の要であることは誰の目にも明らかであった。その彼が去ることの打撃もまた、誰の目にも明らかなわけであるが、それは逆に言えば、関ジャニ∞は現在、音楽的に大きく変化する又とない機会を得たということでもある。渋谷すばるという、技と力を兼ね備えた希有なシンガーを失った関ジャニ∞が、どのようにしてその音楽的窮地に立ち向かっていくのか、不安に思いながらも実は私は非常に期待しているのである(これは、ジョン・フルシアンテが(2度目に)脱退したときのレッチリに対する思いと似ている)。
渋谷の穴を埋めるという考え方ではなく、フォーメーションを1から組み直すという考え方で挑んで欲しい。おそらく試行錯誤の連続となろうが、その1場面を我々は次のツアーで見ることになるのだろう。