こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

旺福来日之記2015(後半)

(前半はこちら
 29日。渋谷モディに入っているHMVトークショー。ってドコだそれ、と思ったらタワレコの向かいだった。前回の来日時はそのタワレコトークショーしたそうですけどね。一体何があったのか。
 トークショーを観るのは無料なのだがその後のサイン会に参加するにはこの店でCDを買う必要がある。よって購入。台湾盤を含めると3枚目の『阿爸我要当歌星』である。税込み2300円と比較的リーズナブルなのと、バッヂが貰えたので良かった。こうして見ると日本盤のジャケットも良いな。紙ジャケだし。
 常設らしき小ステージの前に丸椅子が並べてある。ざっと数えると7脚×5列で35脚。予定時間(12:00)の10分ほど前に行くと結構埋まっていたので最後列に。立ち見も十数人できていたので、計50名程度か。
 スタッフが「用紙を配りますので旺福に質問がある方は書いて下さい」と言って配り始める。なるほどそういうのがあったか、じゃあ「小民以外のメンバーは曲作らないんですか?」(「両個恰恰好」ってTwiggyとの共作だったよな)とか訊こうかなと思っていたら、僕の前の列で配布が終わった。暫く待って「紙来てないんですけど」と問うと、「もうなくなりました。それにもう始まりますから。申し訳ありません」と。そっちで椅子を35脚置いてんだからせめて35枚は用意しとけや、とイラっと来たが、勿論何も言わない。35枚もアンケートがあっても司会(加藤ひさし)が捌ききれないから、という配慮なのかも知れない。それになまじアンケートを出してしまうと、自分のが読まれるかどうかばかり気にしてしまってトークショーに身が入らない恐れが充分にあるので、結果オーライだったのかも知れない。
 定刻になり、加藤氏の紹介で旺福の4人が登壇。4人ともお洒落な私服っぽい出で立ち。お洒落と言えば、Twiggy以外の3人はフレッドペリーを着ていた(ロゴが見えなかっただけでTwiggyもそうだったのかもだけど)。おまけに加藤氏まで。ちょうど最近まで「レコスケくん」がフレッドペリーとタイアップみたいな短期連載をしていたのだけど(http://www.fredperry.jp/featured/recosuke/)ここでも「フレッドペリーとモッズ(とモテ)」がテーマだった。ファッションに滅法疎いせいで、まさか本当にモッズ界隈でフレッドペリーが流行っているとは思わず、「ほんとに流行ってんだ・・・」と驚いた。あ、余談だけど、このタイアップ連載の前半ってブラーが扱われているのだけど、『阿爸我要当歌星』のYouTube上の全曲試聴の画像レイアウトってブラーの『ザ・マジック・ウィップ』のジャケットが元ネタなんじゃないかとずっと思ってるんだけど、違うかな。
 閑話休題トークショーは先述のように加藤氏が司会。通訳はバックにいて、それを基に加藤氏がメンバーのコメントを観客に紹介する形であった。で、これが一長一短で、加藤さんの語り口自体は面白いのだが、茶化し癖があるというか、本当にメンバーの発言を忠実に示してくれているのか、かなり不安なところがあった。特にこの日は肚皮の髪型がヘンテコリンだってので、何かにつけそこに話を持って行くのがどうも・・・という感じであった。
 観客は結構中国語が判る人が多いみたいであった。そうすると加藤氏のユーモアも含めて二重に楽しめるということなんだろうけど、中国語判らない者にはちょっと心許なかったかな。
 アンケートの方は思いの外に良い質問が飛んでいて、「小旺福はもうやらないんですか?」というのも良かったが(小民曰く「肚皮がまた髪型を改めた時に検討します」)、より興味深かったのが「ハロウィンのライブはソフト化しないんですか?」という質問。これについては「映像は撮ってある。出す場合にはクラウドファンディングになる」という発言があった。最終的な発言者が加藤氏なので本気度が判らなかったのが実にもどかしいのだが、マジなら出資しますよ。旺福は何しろPVが充実している割に公式のライブ映像がほぼ皆無であるというのが残念だったのだ。ネタがあるならどんどん出して欲しい。
 あと、質問というか「好きな曲は「エブリデイ、ワウ!ワウ!」です」というのも読まれていた。1曲挙げるのって難しいですよね。僕ならどうしようかな。「鳥唄」かな。まあ用紙貰えなかったんだけど。
 そしてサイン会へ。持参した台湾盤のジャケットにサインしてもらう。こっちの方が絶対いい。後でどれが誰のサインか判りやすいから。
 中国語は話せないので英語で挨拶せざるを得ず(肚皮に「「夏夕夏景」のドラムが大好きです」と伝えるために「夏夕夏景」の発音だけ予習したが。シャーシーシャーチン)不安だったが、とにかくTwiggyに「僕もベースやってます。あなたとポール・マッカートニーが好きなのでリッケンバッカー買いました」というのと、小民に「旺福は去年知ったばかりだけど僕にとって特別なバンドです。あなたは素晴らしい」という、最低限言いたかったことは言えたので、とりあえず満足。小民に「I believe you're a genius!」と言うと、ちょっと慌てつつ「加藤さんがgenius」との返答があった(隣に加藤氏がいた)。隣で茶化すように笑うTwiggyがキュートでした。
 とにかく旺福にこれ以上ないほど近づけたということで、この辺りは半ば茫然自失であった。


 13時頃にサイン会も終わり、渋谷で時間を潰して夕方代々木へ。ザーザズーは西口出ると看板が見えるので判りやすい。入ってみると、こちらでも加藤氏がDJ。PAはレッドクロスよりも結構クリアに感じた。気になった曲幾つか。まずクラブっぽいけどコーラスなどが非常に格好良い女性ボーカル曲。これは「You can call me a queen bee」という歌詞が辛うじて聞き取れたのでそれをメモして、帰って検索するとLordeという歌手の「Royals」という曲であった。良いです。あと「う〜ん、マンダム」という台詞と共に始まった下手くそな男性歌手の曲。これは題材(チャールズ・ブロンソンからしみうらじゅんに違いあるまいと思って調べると、果してそうであった。田口トモロヲとのデュオ、その名も「ブロンソンズ」(そう言えばあったな、そんなの)。これは元曲があるそうです(勿論マンダムのコマソン)。あと、いかにも60年代ブリティッシュ・ビート・ポップス風の曲が流れてきて、このメロディーどこかで聴いたな・・・と思ったら、すかんちの「炎のロックマシーン」のBメロとまんま同じだった。言うまでもなくパクったのはすかんち(というかローリー寺西)の方であろう。「炎のロックマシーン 元ネタ」で検索すると、なんとザ・フーの「The kids are alright」だった。曲名だけは耳に馴染んでいたが、考えてみたらこの曲がどんな曲か知らなかったんだ俺。色々な意味で勉強になった。
 ソールドアウトと聞いていたが、客は70〜80人程度で、まだ20〜30人程度は入りそうに思われた。チケットが入手できなかった方には気の毒であった。
 17:30に前座の許哲珮が登場。英名?はペギー・シュー(Peggy Hsu)。これってバディ・ホリーのペギー・スー(Peggy Sue)が元ネタだよねえ。音楽的には全然そういう匂いはしなかったけど。
 サポートにアコースティック・ギターとチェロを加えた、面白い編成での演奏。彼女の楽曲もちょっと予習してあったのだけど、なんか退屈かなあと感じていたのだが、ライブで観るとなかなか良かった。まず、歌が上手い。旺福の歌唱が良くも悪くもバンドやってる兄ちゃん姉ちゃんの歌だとすると、ペギーさんの歌はちゃんとレッスンを受けている人の歌であった、良くも悪くも。
 30分ほどのセットだったと思う。デビュー曲「気球」(これは予習していた)の他には、最新アルバムのジャジーな曲(曲名失念)や、「瘋子」(lunaticという意味だ、と紹介していた)という曲を演っていた。

 いいですねこれ。
 続いてメインの旺福が登場。服装は前日とも本日の昼とも違って、ちょうど日本盤のジャケットのような服装。これがねえ、実際に見ると色合いがハッキリしすぎていて、なんかアニメの「ドラえもん」みたいだった、正直言って。Mamiはベレー帽まで被ってたしな。クリスチーネ剛田じゃないか。肚皮は眼鏡と髪型が相俟って、服の色自体は水色だったにもかかわらず、のび太だった。
 まあそれは良い。機材は、TwiggyとMamiは昨日と同じだが、小民は昨日とは別モデルのテレキャスターフェンダーの黒ロゴあり)。これも見たことない気がするなあ。色は(バタースコッチでない)ブロンドで、フロント・ピックアップはポールピースが見えていた。ストラップは前日と同じ。
 1曲目は前日と同じく「オツカレサマデシタ」かと思いきや、なんとなんと「天天天天(日本語詞なので「エブリデイ、ワウ!ワウ!」)」! 昼のアンケートで読まれた内容が直接に影響しているか否かは勿論不明だが、こんなのファン冥利に尽きるよねえ。他人事ながら嬉しくなった。
 セットリスト全体は、記憶の限りでは以下の通り(*は日本語詞)。曲順は所々曖昧です。
 

天天天天 *
愛洗蝦米 *
阿爸我要当歌星
媽媽我不要載眼鏡 *
搖滾阿伯
我夏流 *
珈琲恋曲 *
塞車恰恰 *
迷你裙
オツカレサマデシタ *
Starry Starry Night
On and On
(アンコール1)
愛有什麼不好 *
我小的時候都去Spin
(アンコール2)
Do Re Mi(許哲珮と)*


 こうして見ると、日本語詞曲の割合がかなり大きかったんだな。この、旺福の日本語詞バージョンということについては、僕は結構否定的なのだが、実際にライブを観ていてあまり気にならなかったということは、これはこれでなかなか良いということに・・・は、ならないな、やっぱり。
 日本語詞版は、「それ自体を観る分には」決して悪くないのだ。「コーヒー・ラブソング」も「愛がいっぱい」も「渋滞チャチャ」も、いいと思う(特に「渋滞チャチャ」は、好き)。ただ、意味が判らないなりにも原詞で馴染んでいると「ソコは『会〜いた〜い』じゃなくって『愛洗蝦米』って歌って欲しいなあ」と思うし、ましてや偶々原詞の意味を知っている場合には、「そうじゃないんだ!」と思ってしまう。「珈琲恋曲」はそんなベタベタなラブソングじゃないんだ!とか。
 この日それを特に痛感したのがアンコールでの「愛有什麼不好」(というか「愛がいっぱい」)だった。この曲のサビの「Say I love you, say you love me」という部分、オリジナルは「愛是擁抱、愛是微笑」(愛は抱きしめること、愛は微笑むこと)である。本当に美しいフレーズと思う(ビートルズの「Because」、或いはジョンの「Love」みたいだと思いませんか?)。オリジナル通りに歌ってくれていたら多分、泣いていた。大好きな曲なだけに、「日本語詞じゃなかったら・・・」という思いを強くしたのだった。加藤さんには悪いけども。
 まあ、そんな文句はありつつも、全体としては昨日と同様の感想。つまり、非常に楽しめました。やっぱりレッドクロスに較べてかなり音が良いと感じた。
 なお演奏は所々、同期(シーケンサー)を入れていた。多分肚皮の傍にコントロールするパッドが置いてあったのだと思う。例えば「我夏流」ではウクレレが、「阿爸我要当歌星」ではシンセが、「塞車恰恰」ではブラスが、「On and On」ではコーラスとかが同期で加えられていた。ライブでの同期って、ちょっとズルっぽいというか、なんかつい「同期か・・・」と思っちゃうんだけど、まあ結果的には良い方に作用していたと思います。特に「愛有什麼不好」は、Mami以外の3人しか楽器を鳴らしていないライブ・バージョンをYouTubeで観たことがあるけど、流石にスカスカだなあと感じたので、同期でブラスや鍵盤の音が加わったのは良かった。
 曲目は、新譜からは昨日の3曲に「搖滾阿伯」と「On and On」をプラスで計5曲。もうちょっと演ってくれても良かった。「韓信点冰」とか「動一動」とか「年軽人終究是年軽人」(これベース格好良いんだ)とかね。「搖滾阿伯」はギターソロ終わりできっちりライトハンドしてました。スタジオ版ではこの後にアーミングかましてるんだけど、テレキャスなので出来ず。ビグスビー付きのを持ってきたら良かったのにね。あと何と言っても驚いたのが「On and On」。この曲の最後のサビのところで、それまでルート弾き主体だったベースがいきなり弾きまくりはじめたのだ。超格好良かった。帰ってCDで該当部分聴き直してみたけど、全然ベース聞こえない。前日の「印倫情人」同様、ライブならではというわけか。いいもん観ました。(補記:ちょっと聞こえにくいけど、以下の動画の7:09からのフレーズです。音量を上げて、Twiggyの手元を見ながらヘッドホンで聴くべし)

 この曲は全体としても、ライブでバンド・サウンドを前面に感じながら聴く方がCDよりも印象が良かった。
(補記)この後、なんとこの日の「On and On」のライブ映像が加藤ひさし氏によって公開された。件のベースもばっちり聞こえる。感謝感激である。


 新譜以外だと、一番好きなアルバムである『旺福愛你』からは昨日の「印倫情人」の代わりに「珈琲恋曲」と「愛有什麼不好」を演ってくれて、嬉しかったけど、日本語詞というのがどうしてもネックだった。あと、やっぱり「迷你裙」が印象に残ったな(これもベース格好良い)。確か「旺福のNo.1ヒット曲」と紹介していた気がするな。因みにこの曲の歌い出しは、『旺福』収録バージョンだと小民、『飛向你飛向我』収録バージョンだと女性陣2人ですが、今回のライブでは両日とも小民だった。
 終盤、(確か「ボーナス」として)「Starry starry night」と曲紹介された時には、まさかのカバー(ドン・マクリーン)か?と思ったら、何のことはない「有星星的晩上」のことであった。これはJudy時代の曲で、Mami時代に再録していないと思う。そのせいかあまり思い入れもなかったのだが、ライブで聴くと非常に良いと思った。小民はこの曲でのみスライド・バーを使用。「愛你一兆年」や「給我一個讃」なんかを聴くに小民はかなりのスライドの達人なのではと思っていたのだが、この演奏では正直、よく判らんかった。
 MCも面白かった。小民は全力で三枚目を通してますね。曲に入る前に「Are you ready?」と叫んで即座に「Yes, I am ready!」と自分で叫び返しているのが笑えた。あれ自分のバンドでも真似したいな。
 あと、今更ながら「Have Some Fun」演りませんでしたね。アルバムにも入らなかったし。公式サイトのトップ画面は未だにコレなんだけど。どういう位置付けなのだろう。単にアメリカツアー用だったと言うことか?


 結句。今まで旺福のライブ映像はYouTubeで何度となく観てきたが、基本的に1曲ずつの動画であって、ライブ全体として旺福がどのようなセットリストを組んできたか、ということについては全く無知で、未体験であった。今回のライブは彼らにとっては海外遠征だし、また他の国とは違って日本語詞バージョンで歌わなくてはいけないし(本当は歌わなくていいんだけど)、またレコ発でもあるし、というような事情はあっただろうけども、とにかく「旺福のライブ丸々1本」を堪能できたことが凄く僕にとっては価値のあることだった。
 「楽しい時間はすぐに過ぎる」ということを久し振りに、つくづく実感させられたライブだったし、また彼らのことが益々好きになるライブだった。きっとまた来てくれると思うけども、なかなか来てくれなかったこちらから台湾に行かなくては。