こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

あの曲ナンだっけ?

 自室でボケっとしていたら何の脈絡もなしに「フーテナニー」という言葉が頭の中に浮かんで、どういう意味だっけ?と思って辞書を引いたら「観客を歌わせるタイプの、フォーク音楽の1960年代に流行ったコンサート様式」だそうである。ふうん。最近ディランに凝っているので、彼の初期の活動に関する文章を読んでいて憶えた語であろうか。もっと以前から知っていた気もするのだが。
 このような、「あの言葉どういう意味だっけ」という日常的な疑問は、ここ十数年のインターネット・コンテンツの充実化によってかなりのところスムーズに解決できるようになってきた。恐ろしいことに、フと思いついた疑問の大抵のところは、ネットで検索してみれば「ヤフー知恵袋」か何かで誰かによって既に質問されているのである(そこで提示された「回答」が必ずしも信用できないという問題はあるが)。
 しかしながらそんなインターネットでも容易に解決しかねる問題が未だ残されている。その一つが、「あの曲ナンだっけ?」である。フと頭の中に思い浮かんだメロディー、しかしその曲名も歌手名も思い出せない。テレビなどでよく流れている有名なものであれば周囲の人に訊くのが有効である。また歌詞がある程度思い出せるのならばその歌詞をネットで検索すればヒットする可能性が高い("I love you baby"みたいなのだと望み薄だが)。しかし、おおよそのメロディーしか思い出せず、歌詞は判らない(あるいはそもそも歌詞がない)、しかも明らかに有名な曲ではない、という場合は、うんうんと頭を絞る以外の有益な方法は未だないのではないか。聞くところによると「鼻歌を聴かせるとサーチしてくれるソフト」というのが存在するそうであるが、使ったことがないのでその精度については全く判らない。 


 僕もこの「あの曲ナンだっけ」現象にはこれまで幾度となく悩まされてきた。頭を絞った結果思い出せた曲も多いが、結局その場では思い出せなかったというケースもある。例えば、今から7,8年前のことと思うが、寝ようと思って布団に入ると唐突に「♪ナ〜ナ〜ナナナ〜ナ〜ナ〜ナナナナナナ〜ナ〜」というメロディーが頭に浮かんだ。ナナナなのは歌詞が思い出せないのではなく、実際の曲でナナナで歌われていたものなのだ。しかし誰の、何の曲だったかどうしても思い出せない。散々苦しんだ挙句、諦めて寝てしまった(と言っても気になってなかなか眠れないんだこれが)。
 結局、それはレッド・ツェッペリンの「オーシャン」であったことを後になって思い出した。(下の動画の2:00頃の部分。それにしてもこのライヴ動画はえらいかっこええなあ)。
 
 判ってしまえば「どうしてこれしきのことが思い出せないのだ!」と思うのだが、その時はどうしても思い出せないんだよなあ。年を取るにつれてこういう経験が増えるのかと思うと哀しい。


 ごく最近もこの「あの曲ナンだっけ」に悩まされた。また唐突にメロディーが頭に浮かぶのだ。今度は「オーシャン」の時と違ってメロディーもやや曖昧である。そのメロディーに乗っかっている歌詞も憶えていた気がするのだが、思い出せない。とにかく軽快な感じ。でもブルースの雰囲気もある。でも音像はあんまり古い感じではなくって、1980年前後ではなかろうか・・・。
 とにかく最近聴いた曲であることには自信があるので、最近聴いた音楽で上に合致しそうなものをガサゴソと漁ることになる。最近よく聴いているのはボブ・ディランだが上に合致するような曲はない。ジョージ・ハリソンも違う。ライ・クーダー『ボーダーライン』の曲だろうと思ったのだが違った。ジョニー・ウィンターの『レイジン・ケイン』かな、と思って一曲目を聴き始めた時にこれまた唐突に、アッと思い出した。「"Stuck in the Middle with You"だ!」
 2,3ヶ月前に、バンド仲間が『レザボア・ドッグス』という映画(確かクエンティン・タランティーノの最初の監督作品)のサントラを貸してくれて、僕はこの映画を観たことがないのだが、確かにサントラは面白い曲が幾つも入っていて、特に気に入った曲がこの"Stuck in the Middle with You"なのだ。つい先日、このサントラを作業用BGMに一度だけ流したのが、記憶に残っていたのだろう。
 
 この曲の、まさにタイトル部分を歌っているメロディーが頭にこびりついていたのである。
 「とにかく軽快な感じ。でもブルースの雰囲気もある。でも音像はあんまり古い感じではない」で、前者2つはまあまあOK、最後の「あんまり古い感じではない」は、これは1972年の曲だそうだから記憶違いであるが、まあ1992年の映画のサントラの曲であることを思えばあながち的外れでもないか。
 スティーラーズ・ホイール(Stealers Wheel)といういかにも曰くありげな名前のグループの曲で、そこそこヒットしたそうだが、割とさっさと解散してしまって作品数もあまりないようで、日本語版ウィキペディアに項目がないくらいだからあまり人気もないのだろう。でもこの曲はかなり良いよね。あからさまにディラン風なのだが(曲名も"Stuck inside of Mobile with the Memphis Blues again"を想起)、「劣化ディラン」ではなく、本家が歌ったらもっとヒットしたのではないかと思うくらいにイカしたポップスに仕上がっている。
 バンド名を冠した彼らの一枚目のアルバムに収録されているそうだが、ネットによると、その中ではむしろ「浮いている」曲で、アルバム中の他の曲は違った雰囲気を持っているらしい。確かに現在YouTubeで聴ける"Late Again""I Get By"といった曲を聴いてみると、全然ディランっぽくはない。
 
 
 でもちょっと気になるなあ。CD買ってみようか。最近再発されたようだし(勿論紙ジャケ)。


 なお『レザボア・ドッグス』の音楽と言えば、下記の曲はまさに「あの曲ナンだっけ?」と世間の人を悩ませることの多い曲ではなかろうか。
 
 何年か前に車のCMにも使われていた気がするな(佐藤浩市が詰まらない演技をさせられていた記憶がある)。ジョージ・ベイカー・セレクション(George Baker Selection)の"Little Green Bag"という曲です。と言うと「あ、そもそも曲名も歌手名も知らんかったわ」という反応を招きそうであるが。

スティーラーズ・ホイール1(紙ジャケット仕様)

スティーラーズ・ホイール1(紙ジャケット仕様)

レザボア・ドッグス オリジナル・サウンドトラック

レザボア・ドッグス オリジナル・サウンドトラック