こんなんだったっけ日記

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Blood on the Tracks Revisted

 以前、ボブ・ディランの『血の轍(Blood on the Tracks)』(1975年)について少し書いたが(こちら)、聴き返してみても「良い雰囲気なんだけど繰り返しが多いせいで多少退屈」という印象が抜けなかった。そこで「それって歌詞が全然判らないせいじゃないか」と思って、歌詞をインターネット上から印刷してきて、それを見ながら聴き直してみたら、このアルバムがいきなり輝いて見えだした。
 僕の貧弱な英語力で、しかも辞書も引かずに歌詞を見ているんだから理解できない箇所も少なくないわけだが、それでも随分曲の輪郭がクッキリしたように思える。少なくとも聴きながら話の筋が追えるので、退屈しない。
 「ブルーにこんがらがって(Tangled Up in Blue)」は高校生の頃から好きな曲だが(これも繰り返しが多い曲だ)、十年目にして初めて「こんなこと歌ってたのか〜」と知った。
 ボブ・ディランという人はキャッチ・フレーズを作るのが天才的(というかまあ天才なんだけど)に上手い人で、本作を聴いているとそのことを改めて感じる。上記の「ブルーにこんがらがって(Tangled Up in Blue)」というのも非常に魅力的だが、次曲の「運命のひとひねり(Simple Twist of Fate)」っていうのも素晴らしいタイトルだよなあ。「愚かな風(Idiot Wind)」なんてのも、唸らされる。(全く余談ながら椎名誠に『おろかな日々』という題のエッセイ集があるが、これも凄いよな)
 これらは曲中で繰り返されるキャッチ・コピーがそのまま曲名になっているものだが、もう少し複雑なものとしては「嵐からの隠れ場所(Shelter from the Storm)」がある。この曲で繰り返されるキャッチ・コピーは、

  "Come in", she said, "I'll give you shelter from the storm".

である。これだけで惚れちゃいそうな感じですよね、今までは曲名の"shelter from the storm"というところしか聞き取れていなかったので、「そういう一文だったのか!」と感激した。

 しかし"I'll give you shelter from the storm"って翻訳が難しいよな。「嵐からの隠れ場所をあげる」と直訳するとちょっとヘンだし。「ここで嵐を遣り過ごしたら」(勧誘)とかかな。片桐ユズル氏はどう訳しているのかしらん。


血の轍(紙ジャケット仕様)

血の轍(紙ジャケット仕様)

おろかな日々 (文春文庫)

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