こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

デビュー30周年記念 さくらももこの世界展

 このところ自分の中で「さくらももこ熱」が再発している。
 勿論『ちびまる子ちゃん』は幼少時からテレビで見ていたし、ナントカというコンビニのマスコットになっていたのでコジコジのことも知っていた。しかし僕が「このヒトは天才だ!」と正しく認識したのはつい五、六年前のことである。一体何がきっかけであったか全く忘れたが、近所の図書館で彼女のエッセイ集を借りて読み「めちゃくちゃ面白いなこのヒト!」と驚き呆れたのであった。あれは何の本だったのかな。『もものかんづめ』とか『さるのこしかけ』のような初期の有名作ではなく、比較的近年の著作だったと思うが。
 それに次いで、これまた偶々図書館にあったコミック『ちびまる子ちゃん』第六巻を手に取り、例の(と言っても読んでいないヒトには判るまいが)「なぜならそれは渡辺徹だったからだ」というので腹がよぢれるほど笑わされ、作者が天才であることを認識したのであった。ただ、その頃はエッセイ集を色々読みはしたが漫画にはそれ以外手を出さなかった。
 それから二年ほどした頃、友人の家の本棚にさくらももこの漫画本が二冊あるのを発見した。『神のちから』と『神のちからっ子新聞』第一巻であった。読んでみて仰天したね。エッセイ集でさくらももこの「毒」はある程度認識していたはずだったが、それがこういうシュールレアリスティックな形で現れてくるとは・・・。また、エッセイで実感していた彼女の「ことば」の力が、彼女の絵と合わさった時にいかに増幅されるかということも痛感した。
 それで面白い面白いと興奮していた僕に暫くしてその知人が贈ってくれた本が『COJI-COJI』であった。これまた第一話からノックアウト。とにかくコジコジのボケに次郎君のツッコミがハマった時の爆発力はさくらももこ史上でも最高の部類ではなかろうか。大好き次郎君。


 さて、現在の「さくらももこ熱」再発は、何の気なしに家にある『COJI-COJI』を再読したことによって始まった。やはり面白い。全四巻、どれも面白いが特に脂が乗り切っているのは第二巻だと思う。コロ助君たちが人間界に行く回でのコジコジの「シンナーどう?」は何度読んでも抱腹絶倒だ。ところでコロ助ってこの回では凄く優しげなキャラクターなのにその次からいきなり好色キャラになるよな。なんだったんだろうアレは。
 さくらももこのエライというか凄いところは、話を感動系に持って行っておきながらそれを最後に見事にオトしてみせる点で、『COJI-COJI』で言えば何と言っても例の(だから読んでなきゃ判らないって)「あなたは宇宙の子だから・・・」のくだりだろう。あれは最初読んだ時ビックリしたよ。「こんな感動的な雰囲気をこんな風にしてオトすなんて!」と。その潔さというか、才覚は本当に独特のものである。笑いを通り越して(笑うんだけど)感心してしまう。
 さて『COJI-COJI』を読破した勢いで、やはり本丸の『ちびまる子ちゃん』を読んでいないのはマズかろうと、図書館で予約して第一五巻までのセットを、今ちびちびと読み進めているところです。第三、四巻辺りから本領発揮って感じでしょうか。やはり面白い。『COJI-COJI』や『神のちから』などからするとどうしても「子供向き」という印象を抱きがちだが、さくらももこの世界を最も効果的なバランスでまとめ上げてあるのは実は本作なのかも知れないですね。現在第九巻まで読了。


 実に上手い具合に、そんなタイミングで日本橋高島屋にて『デビュー30周年記念 さくらももこの世界展』なる催しが始まったので(8月6日〜20日)、早速行ってきました。上記のように、基本的には僕にとってはさくらももこは「ことばのヒト」で、彼女の絵はことばをブーストする役目、という感覚ではあるのですが、でも原画を観るのは面白かったです。綺麗だし。『ちびまる子ちゃん』各話の扉絵って、全部(かな?)カラー絵だったんですねえ。コミックスでモノクロになってしまっているのは実に勿体ない。何かの絵にイエロー・サブマリンが描かれていたが、そう言えば最初の旦那さんがビートルズ・ファンだったんだよな。イエロー・サブマリンと言えば、さくらももこ大瀧詠一のファンであることは以前から知っていたが(どうして「イエロー・サブマリンと言えば大瀧詠一」なのか判らない人は勉強不足)、『ちびまる子ちゃん』の扉絵でも一時期かなり積極的に彼を取り上げていたのですね。例えば第六四話(コミックス第九巻)ではカルタの読み札がいずれも『ナイアガラ・カレンダー』の歌詞から取られているし、永沢君のバスドラのヘッドには御丁寧に「Niagara」のロゴまで入っている(余談ながらアンプはVOX)。趣味趣味イラストだな。『ナイアガラ・カレンダー』ネタはこの後にも連作でやったのだということを、この原画展で知りました。
 催し全体としてはやはり『ちびまる子ちゃん』の占める割合が一番大きいのだが、その中で個人的に収穫だったのが東京新聞等で連載されていた四コマ・バージョンが幾つか読めたこと。この四コマ、連載当時に何度か読んで「全っ然面白くねえなコレ・・・」と思ったのだが、ここで読めたものは、厳選した結果なのかも知れないが、割とどれも面白かった。得した。
 『ちびまる子ちゃん』アニメ版のオープニング曲とエンディング曲を各バージョン流している映像コーナーがあって、これも面白かったな。全部で三〇分くらいあったのだが、つい殆ど全部観てしまった。大体全部知っていたのみならず、歌詞まで結構憶えていたのには我ながら恐れ入った。「ハミングがきこえる」って、これカヒミ・カリィだったんだ!ということすらこの日初めて知ったのに(まあ今聴いたら明らかにカヒミ・カリィなんだけど)、半分以上口ずさめたもんなあ。
 何と言っても「おどるポンポコリン」が筆頭の傑作であることは僕とて勿論否定はしないが、この他にも意外なほどに楽曲が粒揃いなのが本作の面白いところである。LOVE JETSの「宇宙大シャッフル」については以前このブログで書いたが(この曲の作詞は清志郎だと思っている人が多いのではなかろうか)、他にも西城秀樹「走れ正直者」、植木等「針切じいさんのロケン・ロール」、たま「あっけにとられた時のうた」、ManaKana「じゃがバタコーンさん」辺りは外せないでしょう。特に「じゃがバタコーンさん」、編曲は小山田圭吾で、とにかくサウンドがめちゃめちゃ格好良い。歌詞に合わせて、バンジョーアメリカ)、シタール(インド)、三味線(日本)と色々の楽器で各コーラスを締めくくるのも粋だし、ローファイっぽいサウンドも格好良いし、間奏は完全にロックだし、て言うかベースラインはサイケ期のビートルズだし(いや、あるいはボブ・ボーグルか!?)、まじで痺れます。

 あとこの曲は映像も良い。二パターンあって、やはり一パターン目の方が素晴らしいのだが(上記動画は一パターン目)、二パターン目も後追いにしてはかなり良く出来ている方で、当時の視聴者としては僕はむしろこちらに思い入れがある。映像は「針切じいさんのロケン・ロール」も良いなあ(この曲は大瀧詠一プロデュースです、念のため)。


 原画に話を戻すと、『神のちからっ子新聞』第一号の原画が観られたのは嬉しかったなあ(これを転写したクリアファイルが物販で売っていて、買ってしまった)。観ながら笑ってしまった。『神のちからっ子新聞』はあまり人気がないと作者は語っていたが、本当かな? 僕は本作の「加字山さんの諺コーナー」がさくらももこの作品の中で一番好きかも知れない。
 『神のちから』の原画が展示されていなかった(見逃したのかな?)のは残念。


 お楽しみの物販。グッズはあまり欲しいものがなかったなあ。取り敢えず上記のクリアファイルと、『神のちから』(ソフトカバーの簡装版)と『神のちからっ子新聞』全四巻を衝動的に購入。
 次郎君のグッズが欲しかったんだけど、モノとしても数が少ない且つあまり惹かれるものがない上に、あるものもアニメ版のデザインのものばかりで残念。原作デザインのものが欲しいんだよ(と言いつつアニメ版デザインの次郎君2色ボールペンを購入)。