こんなんだったっけ日記

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黄金のメロディ マッスル・ショールズ

 兼ねてからこのブログで話題にしていた映画『Muscle Shoals』(邦題は『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』)がめでたく日本でも公開されたので観に行った。

 期待に違わぬ面白さだった。とにかくウィルソン・ピケットの「ダンス天国(Land of 1000 Dances)」をはじめとする、魅力ムンムンの音楽が映像付き・大音量で聴けるというだけでも満足できた。
 「ダンス天国」以外だとエタ・ジェイムズやストーンズ(ブラウン・シュガー!)、そしてデュアン・オールマンがやはりハイライト。彼のギターを伴うウィルソン・ピケットのバージョンの「ヘイ・ジュード」、実は僕は初めて聴いたのだが、非常にパンチのある演奏で素晴らしかった。ピケットは人柄の滲み出たインタビューも面白かったなあ。デュアン・オールマンと言えば例の薬瓶のスライドが有名だが、これに関する逸話を弟のグレッグが語っている。おそらく超有名な話なのだろうがこれまた僕は初めて聴いた。あまりに面白くて「出来すぎだろ!」と思う話。興奮した。デュアンについての逸話は、「星と月の位置がおかしいとか、意味不明のことを言い出すので困惑した」というリック・ホール(フェイム・スタジオのオーナー)の回想をはじめとして、面白い話が幾つも出て来る。
 「プロになる前は病院で働いていて、寝る前の患者に歌ってやっていた」というパーシー・スレッジの逸話も面白かった。最後のリック・ホールの言葉にも感動。
 フェイム及びマッスル・ショールズの代名詞的なミュージシャン群である「スワンパーズ」、憧れのロジャー・ホーキンズ(ドラマー)が観られたのも嬉しかった。なんとも言えぬ顔つきだったな。スワンパーズの面々について、ボノが「(てっきり黒人だと思っていたら)行ってみるとスーパーマーケットで働いてそうな白人ばかりで・・・」というのも笑えた。
 「ドキュメンタリー」としての本作の質については『レコード・コレクターズ』8月号(この号は「買い」です)にて佐野ひろし氏が批判的に述べている。僕自身はフェイム及びマッスル・ショールズ・スタジオについてはズブの素人なので、史的な取り扱いの是非については全然判らないのだが、確かにドキュメンタリーとしてはよく判らない点がちょくちょくあった。話の筋がよく見えないというか。時系列もよく判らないし。「これを見ればマッスル・ショールズの歴史が早わかり」というふうにはなっていない。その意味では玄人向きなのだろうが、ともかく素晴らしい音楽は堪能できるので文句ない。
 ただ、スワンパーズが抜けてから新たに引き入れた黒人ミュージシャン集団の「フェイム・ギャング」、チラっと聴けた演奏はスワンパーズに引けを取らぬ格好良さだったのに(あとレフティ・ベーシストがいたような)、殆ど扱われていなかったのは残念だった。あと、どうでもいいようなことだけどエレキ・ギターの音が「distoreted」だったという証言(by ミック・ジャガー)を字幕で「ゆがんでいる」と訳していたのは大チョンボだったな(言うまでもなく「ひずんでいる」が正しい)。

Muscle Shoals

Muscle Shoals