こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

瓢箪から駒

 知人からAKB48恋するフォーチュンクッキー Rock Musician Ver.」という動画を薦められた。「あんたの好きなROLLYが踊ってるよ」というので観てみると、ROLLYの他にも和田唱(いかすねー)、ザ・キャプテンズ(傷彦、顔色悪いが大丈夫か?)、ポリシックス等、好きなミュージシャンが何人か出ている。「恋する〜」がロック畑の人々にも好評であることは聞き及んでいたが、その実態を確認した気分であった。なお、流行事情に甚だ疎い僕でもこの曲は知っていたが、1曲を通しで聴くのは、というか、サビ以外の部分を聴いたのは、初めて。感想は「悔しいけれど、グッと来る気持ちは判る」という感じか。「ヘヘイヘーイ♪」が歌謡曲好き、GS好きにはズキンと来るんでしょうなあ。でも「人生そんなに悪くない」なんてハタチそこらの娘さんに言われても全く説得力ないぞ。まあ秋元康に言われても説得力ないけどな。
 
 そんな音楽に合わせて、この動画ではロック・ミュージシャンが代わる代わる出て来て踊る。色々なヒトが出てるな〜と思いながらその動画を見ていると、ある所が妙に気に留まった。上記動画の2:00の部分である。4人組のバンドが踊っている。「Won Fu」という名前と背景の垂れ幕からして、中国のバンドらしい。日本人以外のミュージシャンが出て来たというのも然ること乍ら、それ以上に目を引いたのは、左端のヒトが異様にキレの良い動きで腕を回転させているので、つい何度も見返してしまったのだった。
 その動画では「恋する〜」の音源に合わせて踊っているだけなので、どんな音楽をやっている人たちなのかは判らない。そこでちょいと調べてみた。まず漢字表記は「旺福」であることが判明。旺盛の旺に幸福の福だから、意味はよく判らないがかなりポジティブな感じだ。中国人の知人に聞いてみると、「豊かな幸せ」とか「幸せをより豊かにする」とかいう意味であろう、とのことである(中国語は文脈がないと品詞が定め難い)。なんか凄い名前だ。台湾のバンドであるという。繁体字だと「旺蘄」ですね。
 公式サイトhttp://www.wonfu.com/jp/index.html(中国語、英語、日本語の3種を用意)や、幾つかの動画を観てみる。男女2人ずつの4人組で、ギタリストの男性(小民〈シャオミン〉さん)がメイン・ボーカルで、女性ギタリストのMamiさんが歌うところもあるようだ。加えてベースが女性のTwiggyさん(どうでもいいけどツイッギーってかなり懐かしい名前ですね)、ドラムが肚皮(ドゥーピー)さん。
 PVを観るとロックを排した純ポップスっぽい曲が多いように感じたが、ライヴ動画を観ると、小民さんがカントリー・スタイルで弾きまくるところもあり(下記の3本目の動画1:11〜など参照。かなり上手い)、なかなか面白い。曲も良いし。
 なお上記の動画でキレの良い動きを見せてくれた左端の男性は小民さんか肚皮さんかちょっと判別しがたいが、小民さんかしらん(4人ともなかなか良い動き)。(5/7補記:旺福ファンになって早2週間、改めて見てみると、これはまず間違いなく小民でしょう)。
 
 
 
 日本にない音楽ってわけでもなかろうが、歌詞が中国語なだけで結構違って聞こえるものだ。面白いのは、上でも触れた「小綿羊趕集」(羊が市場へ(遅れぬように急いで)行く、という意味である由)という曲で「めぇ〜」というコーラスが入ることで、羊の鳴き声は中国と日本で同じなのかと感心した。
 なお、「小旺福」名義の曲もある。一時改名していたのを、また戻したということのようだ(よくある話である)。(補記:子供向けのアルバムを作る際の別名義だったような趣きもあるが、詳細不明)
 
 日本語を交えた曲もある。去年出たアルバムの邦盤では、ザ・コレクターズ加藤ひさしが日本語詞を書いた曲も幾つか入っているそうだ。コレクターズと言えば最近、別名義でグループ・サウンズのアルバムを出していたが、旺福のPVにも「モロSG」というのがある。なお下記2つはいずれもMami加入前、Judyという人がボーカルであった頃のもの。
 
 
 これは英国の60年代のロックを日本と中国が同じように変容して受容したということなのか、それとも単に旺福が日本のGSをパロっているのか、どちらか判らないけれども面白い。上記の「恋するフォーチュンクッキー」の動画で「最後のGS」ことザ・キャプテンズと並んで登場するのも興味深い(補記:昨秋の来日公演で対バンだったらしい)。そう言えば加藤ひさしはこの動画のキー・パーソンなんであって、旺福がこの動画に誘われたのも彼がきっかけなのかも知れない。
 なお最近も積極的に活動していて、YouTubeに3ヶ月連続で新しい曲(だと思う、多分)をアップロードしている(補記:去年のアルバムからの曲もありました)。現時点で一番新しいのが「Have Some Fun」という曲。
 
 ・・・うーん、タイトルからして「もしや」と思ったが、英語かあ。いや「こういう曲だ」と思って聴けば全然違和感はないし、むしろ非常に良い曲だと思うのだけれども、折角なんだから中国語で聴きたい。現在コメント欄の一番上にあるのが「I'm sorry, but I think Won Fu is better in Chinese.」なのだが、「I'm sorry」というトコロまで含めて、共感してしまった。ジャケット画像も、なんか、きゃりーぱみゅぱみゅみたいだしなあ。
 しかしながら先月と先々月の曲を観てみると、どうもこの「Have Some Fun」の方が一種の冗談なんじゃないかと思えてくる。そうだといいんだけど。
 
 
 アメリカやカナダでも積極的にツアーを行なっているそうであるが、英語圏に殴り込みを掛けるには「アメリカ風」に靡くのではなくって「ド中華」で行く方が絶対得策と思う。なにしろ日本人ミュージシャンで唯一ビルボードのトップを取ったのは宇多田でもラルクでもなく坂本九なんだから。


 昨秋に来日公演をやったそうで、もう少し早く出会っていれば絶対に観に行ったのに、とちょっと悔しいが、そもそもAKB48絡みの動画なんて自発的には決して観ることがないわけで、今回ひょんなことからこの「恋するフォーチュンクッキー」動画を観たことによって、図らずも「要チェックバンド」が一つ増える結果になった。まさしく瓢箪から駒というやつである。