こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

左弾きベース道中 (14) 〜ベース下取り編〜

 去年の正月に買った初めての左用の楽器が、ヘフナーのイグニション・ベース(インドネシア製)。中古で3万2000円だった。それまで十数年やっていた右弾きからの転換というのは自分としてはかなりの冒険で、挫折する恐れは充分にあると踏んでいたので、手始めは安い楽器をと思ったのである。中古であったがピックガードとピックアップにセロファンが付いた状態で、ほぼ新品。フラットワウンド弦を張ればちゃんと「それっぽい」音が出るし、不満はなかった。ポールの500/1とは色々な面で仕様が異なることは重々承知していたが、ポールの楽器に肉薄したものを手に入れようと思えば新品で3,40万円掛かる。元々ポールがヘフナーを選んだ理由が「安かったから」なのだから、ポールに近づこうと思って40万円出すのはいかにもアホらしい話だ。
 ・・・と思っていたし、2月に主演したライブでもこのイグニション・ベースを弾いたのだが、その直後、2月下旬に無情にもこのベースを下取りに出してドイツ製の500/1を買ってしまった。どうしてなのか自分でもよく判らない。


 そもそものことの起こりは、バンド仲間であるギタリストが「新しいギターが欲しい」「出来れば一生モノを」と言っているので一緒にお茶の水の楽器屋を見て回っている内に自分も欲しくなったという、実によくある話である。元々は、既にヘフナーは持っているのだから、ソリッドボディが何か欲しい、好みで言えばジャズベだが、ポールが好きだからリッケンバッカーも憧れる、とまあこういう考えだったはずだ。しかしジャズベは右用のを左に改造中である(前回参照)。だからリッケンを・・・という辺りで、何故か「リッケンorヘフナー」という選択肢に、いつの間にやらなっていたのである。左弾きを初めて早1年、最早挫折する恐れは殆どなくなっていた以上、今の3万円の楽器ではなくもう少し高級な楽器が欲しいと思い始めていたのであろう。
 ヘフナーにせよリッケンにせよビートルズ絡みの楽器である。ビートルズに焦点を当てた楽器屋と言えば、かつては本郷、現在は練馬に店を構える某楽器店が非常に高名である。実は僕は中学生の時に雑誌でこの店のことを知り、その後東京に出て来てからもずっと行きたいと思いつつ行きそびれていたのである。
 楽器入手欲に燃えていた僕は、2月下旬のある土曜日に電車を乗り継いでこの店に赴いた。表通りからは見えないその店は、ビートルズ・ファンにとっては正に魅惑の空間であったが、「中古で20万以下の、リッケン4003またはヘフナー500/1(勿論レフティ)」というこちらの設定にそぐう品はその時置いていなかった。
 余談ながら、ポールが弾いていたリッケンは4003ではなく4001Sである。両者の違いは、まあ実は細々とあるのかも知れないが、ヴィジュアル的には何と言ってもポジションマークが違う(4001Sはドット、4003は三角形)。僕はミーハーではあるが、ポジションマークに関しては只のドットよりも三角形の方がカッコイイと思うので、4003が欲しいのだ。その意味では4003のレフティというのはちょっとした「穴場」かも知れない。
 ともかくそのお店には無いというのですごすごと退散したのだが、帰路の乗換駅である池袋で、以前に何度か行ったことがある楽器屋を何の気なしに覗いてみた。するとそこにあったのだ! レフティのヘフナー500/1、中古で15万8000円。ドンピシャと言って良い。元々はリッケンが欲しかったということは、多分この瞬間に忘れてしまったのだろう。
 まだ相当に未熟な腕前ではあるが、とりあえず試奏させてもらう。音がいい! 自分が持っているイグニション・ベースとはハッキリ音が違うので驚いた。何というか、イグニションも500/1も「いかにも箱モノ」という音はするのだが、イグニションの方がバコン、ベコンというちょっとベニヤ板っぽいチープな雰囲気の音だったのに対して、この500/1はふくよかな音色で、アタック音も上品である。明らかに高級な音がする。「やっぱり高い楽器は違うんだなあ」と実感させられた。
 すっかり「こりゃいいや・・・」と気分が高揚していたのだが、実はヘフナーの傍らにはリッケン4003も数本提がっていた。こちらは右用しか無かったが、値段は22万と許容範囲内だった。とりあえず右用のを試奏させてもらうと、こちらはヘフナーに輪を掛けて気持ち良い! フラットワウンド弦を張ってあったヘフナーに対して、リッケンにはラウンドワウンドを張ってあることもあってか、いかにもロックという音がする。右で弾いているという優位さもあるのだろうが、「Something」のメロディアスなベースラインなんか弾いていると実に気持ちが良いのだ(余談ながら「Something」のベースはジャズベであるという説が根強い)。
 しかし幾ら良くっても右用では仕方が無い。左用を仕入れると26万円台になるそうである。しかも、本当はメイプルグローかファイアグローが欲しいんだけど、現行モデルではレフティにその色はないという(右用はあるのに!)。
 じゃ、まあリッケンについては今後の「出会い」を待つとして、ヘフナーの方はこの値段のレフティと今度いつ出会えるか判らないからということで、購入を決意してしまったのである。
 15万8000円だったのだが、ちょうど中古商品セール期間だったとかで、5%オフで15万100円になった。これに、イグニション・ベースを下取り料1万6500円(下取りということもあって、思ったより良い値段が付いて嬉しかった)をさっ引いて、結局支払ったのは13万3600円。
 なおモデル名は500/1 Vintage 63で、多分2000年前後のものかと思う。当時の定価が30数万円だったようだが、まあ実売は20万円台半ばくらいだったのではないか。それで(まあ状態の善し悪しについては僕にはよく判らないのだが)中古で13万円で手に入ったわけだからなかなか良い買い物だったのではないかと思う。
 イグニションはソフトケース(ギグバックというやつか?)だったのだが、500/1はハードケースだ。ところがネックのところにプチプチを入れてある。こうしておいた方が楽器の安定のために良いのだという。それってケースが不良品なんじゃ・・・。
 ケースと言えば、家に持って帰ってケースを開けようとすると、開かない! 数カ所ある留め具の、大方は普通にパチンと開くのだが、鍵穴の傍らにある留め具だけがどうしても開かないのだ。結構ガチャガチャやりましたが。
 結構焦ったが、インターネットで調べてみるとあっさり判った。鍵穴のパーツをスライドさせるのだという。
 上図のように、鍵穴の丸いパーツを左方向に押してやると、下図のように傍らの留め具がパチンと開く。


 逆に留め具を掛ける時にも、鍵穴のパーツを指で左に押し進めた状態で留め具をはめてやり、その後で鍵穴のパーツから手を離すと、元のようにロックが掛かる仕組みである。
 こんなの判るわけないよ。高級な楽器を持ったことがない者の哀しさではあるが・・・なおフェンダーのハードケースもこの仕様だそうです。
 ケースには早速、ウイングス『Venus And Mars』のLPにオマケで付いていたステッカーを貼ってやった。高校の友達がオレンジ色のストラトにこのステッカーを貼っているのを見て以来、ずっと憧れていたのだ。


 いいでしょ。但しもう40年ほど前のステッカーなので(『Venus And Mars』のリリースは1975年)、接着力はやや怪しい。


 さて、ようやく開いたケースの中の楽器を眺める。イグニションが濃い茶色のサンバーストだったのに対して、この500/1は黄色味が強い。これも高級感がある(この画像よりももうちょっと黄色い感じ)。ひょっとしてラッカー塗装なのだろうか。

 イグニションとの外形的な相違点などについては、非常に詳しく説明してある日本語のサイトが既にあるので、省略。あと、よく知らないのだけれども、これもポールの使っているモデルとは色々と仕様の違いがあるようだ。ペグが2連か4連かとか。僕は別に気にならないし、その意味では見た目はイグニション・ベースのままでも良かったのだが、ただノブがティーポット形になったのは嬉しい(イグニションのは意図不明の黒いノブ)。但し真ん中のスイッチがすぐに外れるので、外れたままにしてある。そうすると図らずもナットと同様に白/黒/白のシマウマ・カラーになってちょっと楽しい。

 あと、わざわざ写真は載せないが、サイド・ポジションが非常にいい加減。何かのせいで塗装がブレたのかとも思うが、ひょっとして買った人が後で描いたんじゃ無いかとも思うような出来である。なんなのだろコレ。
 弾いてみると、やはり生音でもふくよかな音がする。アタックがきつくない。しかし生音が大きいな。ここでハッと気付く。「箱モノは生音が大きいから貧しい住宅環境にある人には向かない。ソリッドの方が良い」と思い、ブログの記事にも書いていたことを・・・それがなんと、わざわざ前の楽器よりも更に箱鳴りのする楽器を買ってしまったのだ。愚かすぎるぜ、ハートブレイカー(by関ジャニ∞「悲しい恋」)。


 さてこの新しいヘフナー君を携えてスタジオに入ってアンプに繋いだところ、なんと音が出ない! やばいやばいやばい・・・と焦りながらノブやスイッチを色々いじくった挙句に判明したのは、「以前のベースとはコントロールが逆さま」だということである。つまり以前のベースでのボリューム10の位置にノブを回すと、ボリュームは0になる。そう言えば、スイッチ(ベースとトレブルのオンオフと、リズム/ソロの切り替え)も、並びが以前のベースと逆である。
 ・・・どうやら、以前のインドネシア製ベースはコントロール部分に右用のパーツをそのまま流用していたのに対して、今度のドイツ製ベースは左用に反転させたパーツを使用している、ということらしい。インドネシア的おおらかさと言うべきであろうか。焦らせおってからに。