こんなんだったっけ日記

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ケントの話

 唐突ながら、僕にとって「お友達になれるもんなら絶対なりたい芸能人」ナンバーワンは、半田健人である。
 今までラジオやテレビの番組を欠かさず視聴するということはあまりなかったのだが、例外として熱心に視聴したものの一つが半田健人の『オールナイトニッポン』(2009年)であった。
 折しもピンク・レディーにハマっていた頃(今でも勿論大好きですが)、おそらくYouTubeで、彼が「ますだおかだ」を相手に「サウスポー」の編曲を蕩々と説く動画(元々は確かNHKのテレビ番組)で見かけた。

 それで「なんだこいつは!」と思ったところに、ちょうど『オール〜』でパーソナリティーをしていると知って、飛びついたのだったと思う。毎回一つのテーマを設けて、それについて半田が語りまくるという趣旨だったが、最初の頃は割と一般向けのテーマが多かったのだが、途中からどんどん「昭和」に傾いていったそうである。僕が聴けたのは最後の5回程度だったので、バリバリ昭和だった。そりゃあ面白かった。何しろ毎回エンディングに流れるのが尾崎紀世彦また逢う日まで」・・・の英語バージョンなのだ。いかにも尋常ではない。
 テーマが「都倉俊一」だった回に、「苦情が来て最初のモールス信号を消したバージョンの『S・O・S』」をリクエストしたのだが残念ながら流れなかった、というオタクな思い出がある。また、最終回の一つ前の回はテーマが「華麗なる低音の世界」で、昭和歌謡を彩った名ベーシストである江藤勲をなんと呼んできてベースを披露してもらう(ウッドベースを弾いていた記憶があるのだが、エレキを弾いていたかどうかは失念)という日本歌謡史に残る放送内容であった。この回には名ベース・ソロとしてダニー・ハサウェイ『LIVE』収録の「Voices Inside (Everything Is Everything)」でのウィリー・ウィークスのベース・ソロを流していたことも印象深い(全くの余談ながら、この『LIVE』のオープニング曲はマーヴィン・ゲイ「What's Going On」のカヴァーなのだが、金子マリバックスバニーの名ライブ盤『We got to...』もこの曲から始まる。意識したかは知らないが)。
 『オール〜』は一部の人に惜しまれつつも一期で終わってしまったのだが、近年は作曲家・林哲司と組んで『昭和音楽堂』という番組を持っていて(今調べたら『オール〜』より前からからやっていた)、これは一部がYouTubeで視聴可能なのだが、つい最近は阿久悠・都倉俊一の黄金タッグ特集の一環としてピンク・レディーが取り上げられていたようだ。

 阿久・都倉時代の数少ないオリジナル・アルバムの内、『星から来た二人』から選曲があったのは流石という感じであるが、惜しむらくは「百発百中」ではなく「コマーシャル・ソング・メドレー」を流して欲しかった。この曲はタイトル通り、ピンク・レディーがそのブーム時に無数のCMに出演していた、そのCMソングを繋ぎに繋いで6分間のメドレーにしたというとんでもないもので、これは個人的にPL最高傑作ではないかと思うくらいに好きな作品である。
 残念ながら現在YouTubeには上げられていないようだが、「元ネタ」のCMが結構たくさん見られる。牛乳石鹸の「シャワラン」(コレ今も売っているそうですね)シリーズは、ブーム終焉後もPLを起用してくれたこともあり、殊に印象深い。

 まあそれはともかくとして、この『星から来た二人』というアルバムはシングルA面曲が一つも入っていない、今となってはファン以外には目もくれられぬ一枚なのだが、実は演奏がめちゃくちゃノッっている。例えば「スーパーモンキー孫悟空」(これはシングル『透明人間』のB面にも収録)なんか聴いて頂きたい。ドラム、ベース、ギター、いずれも非常にカッコイイ。

 上記の「コマーシャル・ソング・メドレー」も演奏がやたら良いのだが、同じアルバムに収録の「百発百中」について半田が何気なく「これは海外レコーディング」と述べていて、「ひょっとしてそれでか!?」と驚いた。ピンク・レディーは1978年にはチャック・レイニーらと一緒に演ってもいるのだが、またそれとは別とは思うけれども・・・詳細を教えて下さい半田さん。


 半田健人は、昭和歌謡に限らず鉄道やらダムやら、とにかく興味の対象が非常に広いことで知られるが、この人の偉いところは、単に好きというだけでなく、対象が持つ意義ということについて非常に意識的なことである(解説者として有能)。僕がいたく関心したのは、彼が2005年の愛・地球博を観に行った際に、ガードマンの服装やらマンホールの意匠やらを熱心に撮影してきたという逸話で、それは何故かというと「パビリオンの外観などは僕が撮らなくてもみんな撮っているし、パンフレットにも載る。しかしこういった注目されにくい部分は、誰かがきちんと記録しておかないと忘れられてしまう」と考えたためだという。凄いでしょう? この前ポールの来日公演を観に行った際、ドームの入り口の前にコンサートの大きな横断幕が掲げられたりしますよね? アレをみんなしてスマホでパシャパシャ撮っているのを傍で見て、撮りたくなる気持ちは判りながらも「みんなして同じものを撮ってどうするんだ・・・」と感じたのだが、その時に思い出したのが、この半田健人の逸話であった。

 さて、一体どうして半田健人についてこうも延々と語っているのかと言えば、判る人は判ると思いますが、今月発売の『Player』誌で「ハート・エレキ天国 話題沸騰! ビザール・ギター・コレクション」と題して、半田が所有する日本製ビザール・ギターを大特集しているのだ。最近どうしているのかなと思ってはいたが、まさかギター界にこうも大きく殴り込み?をかけるとは思わなかった。
 この号、表紙はジェフ・ベックで巻頭特集もBBAのライブ盤、「Jeff's Boogie」の教則CDプラス当時のインタビュー音声まで載せるという豪華っぷりなのだが、それでもなお、誌面の費やし方という点では半田の記事の方が大きい。何しろ80点という機材をフルカラーで紹介した上に、その一つ一つの解説を半田本人が語っているのである。凄いよこれ。この号は多分そう遠くない将来にはプレミア化するな。
 特集名は勿論AKB48のシングル「ハート・エレキ」にあやかったものであるが、このシングルの広告でメンバーが持っている楽器についても半田はインタビューで語っているが、「あの写真は合成じゃないか・・・」と、目の付け所が面目躍如という感じ。また、先述の江藤勲についても、インタビューにて詳しく語っている(折しも江藤の愛器、通称「オレンダー」のコピーモデルが出たのだという)。
 
 それにしても半田健人1984年生れと知ってまた驚愕。『オール〜』やってた頃は、今のおれより年下だったのか・・・。