こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

ポール関連書籍のことなど

 ポールの来日公演は大盛況に終わり、既に月も改まった。セットリスト入りしていた曲を聴き直すと、「おお、この曲を目の前で歌ってくれたのだ、ポールが・・・」と、感動が蘇ります。
 そんな今回の来日(パロッツと共演したというニュースにはたまげました)は相当ニュース性が高かったようで、音楽雑誌に限らず、様々な雑誌で特集が組まれた。関連書籍も幾つも出た(復刊含む。ポールのバンドスコアが復刊されていたので立ち読みしてみると、「Ebony And Ivory」などが取り上げられていてオッ、イイナ、コイツナカナカヤルナ(椎名誠風)と思ったのだが、高いので買わず。あと目次で「Maybe I'm Amazed」の邦題がどういうわけだが「男はとっても寂しいもの」になっていた。只でさえ邦題が2つある曲なのにな(「恋することのもどかしさ」と「ハートのささやき」)。勿論「男は〜」は「Man We Was Lonely」の邦題である)。今後も、「ポールを見た!」ということで幾つもの特集が世に出ることになろう。
 また、僕は全然チェックしていなかったが、テレビやラジオでも多々取り上げられたらしい。これは当然ながら、誰がどういう場で語るかによって面白さが全く違ってくるのだが、その点トライセラトップス和田唱とKAN(意外な取り合わせに見えるかも知れないが、結構親交がある)が来日公演の少し前にラジオ(InterFM)で30分以上語ったものは、予想に違わず面白かった。いつまで残っているか判らないが、一応YouTubeにアップロードされているものを掲げておく。

 和田がビートルズを知ったきっかけ(元々マイケル・ジャクソンの大ファンで、少年時代に見たマイケルの映画で1曲だけ知らない曲があって、それが「Get Back」で云々、というもの)は既に色々なところで読んでおり「またか」という感じだが、今回のツアーでどういう曲をやって欲しいかということを語り合うところなんか、ホンマモンのファンやなあという感じで聞いていて嬉しくなる。
 とりわけ、『Tug of War』や『Pipes of Peace』から演らないよねという話の中で、KANが特に「Ballroom Dancing」を挙げ、曲を流したというのがもう、最高でした。『Tug of War』B面の1曲目であるが、僕はもう、ポールの曲でこれが一番好きかもというくらい好きな曲なのだ。この対談の中でも述べられているように、途中でメロディーのオクターブを上げてテンションを一気に爆発させるところが最高に好きだ。サリンジャーの『キャッチャー』的な50年代アメリカ青年風の歌詞も凄く良い。
 
 数ある名曲の中でこれを挙げてくれたのは嬉しかったな。
 あと、ビートルズが気になり出した和田少年が父親(和田誠)にビートルズのCDをねだったところ、買ってきたのが海賊盤のテキトーな編集盤3枚組で・・・という話、これもトライセラのファンには有名な逸話であるが、非常に親近感の湧く話だ。実はウチもそうだったのだ。レコードでちゃんと全部揃えていたビートルズ・ファンのはずの父親が、CDだと何故かワケわからん3枚組のインチキ編集盤を買ってきて、僕は小学生の頃は主にそれでビートルズを聴いていたのだ。これについてはもうちょっと語りたいのだが、ま、また別のところで書こう。


 さて、雑誌・書籍に話を戻すと、とにかくポール来日を特集した雑誌やムックがあんまり多いので、こちらとしても吟味を迫られる。一見目新しそうなものも、実はついこの前に出たムックの焼き直しだったりするので、油断ならない。そんな中、「買い」であると言えそうなのは、現在のところムックでは『ぴあ ポール・マッカートニー来日記念特別号』、書籍では和久井光司ザ・ビートルズ・マテリアルVOL.3 ポール・マッカートニー』であると思う。
 まず『ぴあ』の方だが、見所は何と言っても先程の和田唱と、松村雄策とがポールのキャリアをビートルズ時代から振り返る長編対談で、これは面白かった。この2人は2001年に出たポールとウイングスのベスト盤『Wingspan』のブックレットでも対談していて、それも面白かったのだが、今回のはもっと面白い。特に和田が後追い世代のファンとして「ビートルズ時代だけでなくウイングスやソロの曲ももっと観たい」と述べたのに対して、ビートルズ世代のファンとして松村が「ビートルズ時代に披露されなかった楽曲が今になって演奏されるというのはもう、感動なんてものじゃない」と返答するところにはハッとさせられた。僕は和田と同様の意見だったのだけれど、松村の意見を見て「なるほどなあ」と唸ってしまった。
 あと松村が「『Flowers in the Dirt』よりも『Off the Ground』の方が曲は良い」と述べていたのも、彼は『Flowers 〜』を非常に高く評価しているというイメージだったので、意外な発言であった。僕も『Off the 〜』の方がずっと良いと思う。というか、実は僕は『Flowers 〜』が全然好きではないのだ(1曲目を除く)。
 『Back to the Egg』『Tug of War』『Memory Almost Full』といった、個人的に大好きなアルバムを褒めてくれているのも嬉しい。自分に自信が持てる。また、僕なんかからしたら完全無欠の傑作と思える『Ram』について松村が「悪戦苦闘している」と指摘し、「やたら「ドゥドゥドゥダダダ…♪」とか、声を出しているのは楽器をコントロールできないからだと思うんだよ。つまり、いろんなスタジオミュージシャンでやって、良い曲もあって、上手く作ってるんだけども、彼の考えてた音ではないと思うんだよね、おそらく。だからそこを埋めるためにスキャットみたいなのがいっぱい出て来る。だからすぐにウイングスを結成したんではないかなと思うわけ」と述べたのには、なるほどと思わされた。
 彼ら以外にも幾つか短い対談が載っていて、ヒロトマーシーの対談なんかも無邪気なファンって感じで微笑ましいのだが、ベース弾きとしては見逃せないのが亀田誠司とハマ・オカモトの対談。ただ、これは期待したほど面白くなかったというのが正直なところ。和田×松村や、ヒロト×マーシーの対談に較べると、ビートルズの話題ばかりでソロ、ウイングスの話題が非常に少ない(単にカットされただけかも知れないが)というのがまず気になる。ポールのベーシストとしての頂点がビートルズ時代であるというのはまあその通りなのだろうが、ポール・ファンのベーシストであればむしろビートルズ解散後について語りたいものじゃなかろうか。あの改造されまくったリッケン4001Sや、『Band on the Run』でのジャズベ、ウイングス終盤でのヤマハBB-1200や、90年頃の5弦ウォル、そしてヘフナーへの回帰など、機材面だけでも話題は幾らでもあるのだ。
 また、ハマ・オカモトについては、掲載されている文面だけで判断しちゃ悪いのかも知れないが、これだけ読んでいると、あんまりポールに詳しくないんじゃないかという印象を受ける。凄く気になったのが、ヘフナー500/1について「ポールがいなかったら今あるかどうかわからない」「欠点ばっかり」と述べる(勿論これは単なる悪口ではなく、欠点があった上で魅力もあるという意図なのだろうが)その一方で、このベースを「俺は弾いたことないです」とも述べているのである。おいおいおいおい、という感じである。弾いたこともないのに何が「欠点ばっかり」だよ。
 まあ、インタビューの発言内容というのはある意味「編集者次第」というところがあるので、ハマの発言が本当にこの通りかどうかは判らない。もし実際の発言や文脈が掲載文面とは全然違ったとしたら、ハマには気の毒なことである。だってこれを読んだヘフナー弾きは全員(僕を含めて)彼への心象を非常に悪くするに違いないから。
 あと、このムックには今までのポールのツアーグッズの写真も載っていて、面白いのだけれど、見るとどれもセンスないよな。前回来日時の『Driving Rain』ツアーのなんか、ひどいぜ。今回のツアーではTシャツもかなり良いデザインのが幾つもあって、非常に良かった。

 一方『ザ・ビートルズ・マテリアルVOL.3 ポール・マッカートニー』の方は、VOL.3とあることからも判るようにシリーズもの。ビートルズ、ジョンと来て第3弾がポール。なんとか来日公演に間に合わせたものだという。表紙絵は毎回、浦沢直樹が担当。第1弾のは全く冴えず(なんだあれは?)、第2弾のもイマイチだったが、今回のはかなり良い絵だと思います。
 さて内容だが、一応ポールの大ファンのつもりではいるが、実際にはアルバム未収録曲やサイドワーク的なものなどは手を付けていないところがかなり多い。本書によって、何年にどのアルバムが出て、シングル・カットされたのはどれで・・・といった基本的な情報がまとまって得られるのは実に有り難い。寝る前にちまちま読み進めています。ビートルズ中期の67年に映画音楽を手がけていたなんて、今まで全く知らなかったい。
 評論の部分は、頷けるところあり、そうでないところあり。まあ当たり前ではあるが。取り敢えず「Tomorrow」を「中途半端な出来」と断じているのは許容しがたい。僕は「Yesterday」よりも好きだ。
 データについては、所詮は個人の仕事と言うことで、漏れや誤りもあろうが、第2弾での誤りを早速訂正している態度は好感が持てる。僕はペーペーなのでデータ訂正の知識も能力も持ち合わせていないのだが、1点だけ気付いた点をここで述べておくと、1988年のソビエトでのライブ盤『CHOBA B CCCP』を「Choba B CCCP」と表記しているのは誤りと言って良いだろう。「CHOBA B CCCP」は、コレだけ見ると英語のアルファベットに見えるが、実際にはロシア語のキリル文字であり、小文字を交えて書くならば「Снова в СССР」とすべきものである。なお、敢えて仮名書きするとスノーヴァ(Back)ヴ(in)エスエスエス・エル(the USSR)となる。これ以上の贅言は無用であろう。
 このタイトルについては本書でも触れられているのだが(108頁)、判っているんだか判っていないんだか判らない書きぶりである。
 あと、一貫して「ウィングス」と表記されているのだけれど、「ウイングス」じゃないのかな? 僕はいつも[wingusu]ではなく[uingusu]と発音しているのだけれど(レコードの日本盤でも「ウイングス」となっているようだが・・・)。
 まあそんな些末なことは置いておいて、ポールの作品の基本情報を得るには打って付けと思います。あとは誰か(集団が望ましい)がネット上にでもデータの「正誤表」を載っけてくれりゃ、言うことなし。 
 ・・・と、あらかた書いちゃってから気が付いたのだけれども、今日はジョンの命日ですね。僕はアルバムで言うと『Mind Games』が一番好きで、次点が『ジョンの魂』(これ原題はPlastic Ono Bandでいいのか?)と『Imagine』になるのだが、曲で言うと・・・難しいな。小学生の頃は「Cold Turkey」が一番好きだったんだけど。でも命日には縁起悪いよな。
 あまり有名ではないと思うけれども、とても綺麗な一曲、「How?」を。


 あ、あと11月29日はジョージの命日でした。もう12年だよ。今年は『Early Takes Vol.1』や『George Harrison』でジョージのソロ曲の魅力を改めて感じさせられた。特に『Early Takes Vol.1』はよく聴いたな。そこから代表曲「My Sweet Lord」のデモテイクを。