こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

ロックショウ!!

 私の父親が学生時代に使っていた手回しの鉛筆削りにはポール・マッカートニーのシールが貼ってあった。例のウルフカットで、リッケン・ベースを抱えた姿の写真である。
 尤も小さなシールに本当にベースまで写っていたのかは怪しいもので、また今となっては確認しようもないのであるが、ポールのウルフカットとナチュラルのリッケンバッカー4001Sとはファンの中で分かち難く結びついていて、その髪型を見るだけで楽器の姿も鮮やかに浮かび上がるのである。
 さて、この「ウルフ+リッケン」のポールの姿というのは、ウイングスの1976年のアメリカ・ツアーにおけるもので、作品で言えばライブ・アルバム『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』と、映画『ロックショウ』で観ることができる。
 この度、前者のリマスター盤と後者のDVD/ブルーレイが遂にリリースされるということで、そうかそうかと思っていたら、なんと『ロックショウ』の方が劇場公開もあるということが今月号の『レコード・コレクターズ』誌(3年ぶりに買った)に載っており、ぶったまげて大慌てでチケットを予約した。私の住まいから最も近い公開劇場は六本木ヒルズのシネマ東宝である。
 そもそも『ロックショウ』はかなり前にVHSを図書館で借りてきて観たきりで、大凡の雰囲気は分かっていたが細かいところはあまり覚えていなかった(更に言えば『U.S.A.ライヴ!!』もあんまり聴き込んでいない)のであるが、こちらで観たプロモーション映像を観て大興奮し、よし父の日のプレゼントはこれっきゃないと思っていたのである。
 なお当初はTシャツがオマケで付いた限定盤も出る予定だったそうだが、レココレ誌によると「アーティスト側の意向により」取り止めになったそうである。なお同誌によるとデザインはDVDのジャケット(粗いモノクロ写真のウルフ・ポール)の予定だったそうだが、もしこれが本当なら制作側は全くモノを判っていないと言わざるを得ないね。みんなが欲しいのはホーン・セクションがお揃いで着ていた、前面にウイングスのロゴ、背面に「WINGS OVER AMERICA」と書かれた白いTシャツに決まっているじゃないか。
 閑話休題。多くの劇場では1,2日の限定上映だそうだが、六本木ヒルズでは特別に一週間上映されるとのこと。初日の16日に、小雨降る中行ってきた。パンフレットも売っていたので購入。初日には大物が来ているんじゃないか、和田唱とか松村雄策とかいないかしらん、と周りを窺ってみたがいないようだった。
 いないどころか、実は席はかなりガラガラで、全体を三分割した真ん中にはある程度入っていたが(それでも私の両隣は空いていた)、両端なんか殆ど入っていない。平日とは言え、驚くべきことである。ひょっとしてみんな知らないんじゃないか?
 (補記:ツイッターによると和田唱は翌日の17日に来ていたらしい。2日連続で行けば良かったよちくしょう! すげえ悔しい。まあ映画に集中できなくなっていた可能性が高いので却って良かったか。しかも17日は混んでいたとのこと)
 しかしその分、来ている人は筋金入りのファンばかりという感じで、私と同世代か少し上くらいの女性三人組が「ワンダフル・クリスマス・タイムがさあ・・・」などと当然のように話している。「ソイリー・・・」「ゴー・ナウ・・・」といった声も聞かれた。本作のオリジナル上映は1981年であったが、どういう訳だか当時のパンフレットを持参している人なども見受けられた。風景的にはライブ会場とほぼおんなじである(人数が少ない以外は・・・)。

 
 映画は最初に現在のポールのコメントを流し(いきなり「Good evening, ...」とか言って映し出されたので驚いた)、それからおもむろに本編に入る。本編は字幕なしだった。まあ長いMCもないので困らなかったが(途中まで字幕がないことに気付かなかったくらいで)。
 VHSなどではカットされていた7曲を補った完全版とのことで、全体で2時間強。 オープニングはお馴染み「Venus And Mars - Rock Show - Jet」の必殺メドレーで、「Rock Show」も然ること乍ら「Jet」のイントロのあまりの格好良さに笑ってしまった。
 その後も名曲のオン・パレードで、大方は予め判っていた曲だが「あ、こんなのも演ってたんだ」と思う曲も幾つか。例えば「ピカソの伝言」や(これアタマはデニーだったんですね。全く今更乍ら)、「フレッド・アステアに捧げる」と言って「幸せのアンサー」を演ったのなんかは嬉しい驚きだった。「磁石屋とチタン男」なんかも演っていたんですね(あのイラストはちょっとよく判らないが)。
 デニーが意外と沢山歌っているのも発見。デニーの「遙か昔のエジプト精神」や、ジミー・マッカロク(若いねーこの人)の「Medicine Jar」は、アルバムで聴いていると「悪くないけどちょっと地味かな」などと思っていたが、ライブ映像で観ると思いの外良かった。
 一番ジーンとしたのは、大好きな曲である「あの娘におせっかい」。この曲のAメロはほんとに、本当に美しい。でもやっぱりアルバムに慣れているとメドレーで演ってほしいなとも。
 曲が最高なのは判りきっていたが、演奏もハイテンションでバッチリ。何よりポールのシャウトが格好良すぎ。あんなウルフカットでも格好良く見える。それに次にベースを買うなら絶対リッケンだと思った。
 あと、やっぱりホーン・セクションが入ると違いますね。あのトロンボーンの人は動きがちょっとおかしかったけど、何だったのだろう。ジョー・イングリッシュってこんなに叩きまくる人だったのか。好印象。「Band on the Run」のベースがカッコイイのも発見。
 本編はこの「Band 〜」で終了。それで「あー終わっちまった」と思っていたら、アンコールで「Hi Hi Hi」をやりまたまた興奮。忘れていたおかげで得をした気分になれた。最後はボーナストラック的に「Soily」。この曲も実はあんまり覚えていなかったのだが、めちゃ格好良かったです。
 なおこういう映画だと上映中も結構歓声が上がったりするのかと思っていたのだが、そういうのは全然なかったな。まあ人が少なかったこともあるが。でも最後は結構拍手がありました。私も拍手してきた。


 そんなワケで、観に行ける人は絶対一度は観に行った方が良いです。まじで。