こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

紛う方なき名作

 高田馬場に「早稲田松竹」という名画座があって、ここに2本立てを観に行ってきた。『E.T.』と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という、いつ観ても間違いのない組合せである。・・・実は2本とも初めて観る。
 いやあ面白かった。元々映画というのがあんまり好きではないのだが(いつ終わるのか常に気になる)、この2本は確かに間違いなかった。どちらも約2時間で、映画は90分くらいがいいなあと思う僕としてはやや長いのだが、飽きさせなかった。
 実は『バック・〜』の方が、最後の方にマイケル・J・フォックスがES-335を弾く名シーンがあるらしいというので以前から観てみたかったのだが、そしたら同時上映の『E.T.』も同じ料金で観られるというのでついでに見物することにしたのである。見事に泣かされた。自転車のシーンも良かったが、E.T.が生き返る(しかも剽軽に!)シーンにヤラれた。別れのシーンでE.T.が「来なよ」(Come on だったか単にComeだったか失念)というところもハッとさせられた。
 『バック・〜』の方も期待を裏切らぬ出来だった。感想は色々あるのだが、(上のE.T.についてと同様に)月並みなものにしかならなさそうなので件のギター・シーンについてのみ。
 まず、映画冒頭(つまり現代。1985年)でマーティがギターを弾くシーンがあって、ここで弾いているのが多分イバニーズだったと思う。メタル御用達みたいな印象のあるメーカーである。それがクライマックス(1955年)でいかにもオールディーなギブソンES-345TD(335じゃなかった)でチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」を弾くというのが、実に上手いコントラストを出していた。格好良かったね。家に帰って「ジョニー・B・グッド」のイントロ、練習しました。とにかくロックンロールに縁や恩義のあるバンドは大抵がカバーしている超有名曲で、ウィキペディア英語版でカバー・ミュージシャン一覧を見ると目眩がするほどの豪華さである。なんかライブのアンコールに(ゲストなんかと一緒に)演って盛り上げるという印象のある曲である。勿論1955年にはまだ世に出ていなくて、オリジナルのレコード・リリースは1958年。
 それでこのES-345TDは1955年にあったんかいな、というのがフと気になって調べてみたら、やっぱりまだ無かった。1959年だそうである。時代考証を誤ったというよりは、チャック・ベリーの使用機種に敢て合わせたということだと思うが、ES-345TDってチャックの代名詞的ギターなのだろうか。ネットを見ている限りあんまりそういう感じもしないが。
 この演奏シーンを見てギターを弾こうと思い立った人も多いという名場面であるが、このシーンはギターをちょっとかじった人にはかなり笑えるシーンで、当時世に出ていない「ジョニー・B・グッド」を演るのも然ることながら、その演奏スタイルが、まず本家チャック・ベリー風の所謂「ダック・ウォーク」(つまりこれが1950年代後半)をやり、ベンチャーズのテケテケを演り(これは1960年代前半か)、更に弦をはじく為の右手をフレット上に持って来る所謂ライトハンド奏法(って言い方も古いか。ともあれこれは1970年代後半)をカマしてみせ、挙げ句はギターを頭の後ろに回して弾く、これはジミ・ヘンドリックスのスタイルである(1960年代後半)。つまり未来のギター・ヒーローのネタをどんどんブチ込んでいるわけである(他にもあるのかも知れないが僕が気がついたのはその程度)。
 それを観客がポカーンと見ていて、マーティが「君たちには早かったか(I guess you guys aren't ready for that yet)」と呟くという。実に痺れますね。
 しかしこのネタ、エレキギターを多少なりとも弾く人にはすぐ気がつくことだけれども、そうじゃない人にはまず判らないですよね。この映画にはこういうネタがちりばめられているワケで、逆に言えば音楽以外の分野でのネタがあっても僕なんかには全く判らない。それを思うとちょっと悔しい気がする。車ファン爆笑必至のシーンとか、ありそうではないか。
 そう言えば、と話が『E.T.』に戻るのだけれど、エリオットの部屋にギタリストのポスターがあって、エルヴィス・コステロに見えるがエリック・クラプトンにも見えるなあと気になっていたのだが、インターネットで検索してみるとどうもコステロだったようだ。


 しかしジョン・ウィリアムズは偉大だね。本当に。