こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

Bass on GS

 今月号の『ベース・マガジン』誌の表紙がOKAMOTO'Sのハマ・オカモト。そこで影響されたベーシストに亀田誠治らと並んでルイズルイス加部が挙がっていた。ロックファンにはJLC〜ピンク・クラウドのベーシストのイメージが強いが、元を辿れば(?)代表的なGSバンド、ザ・ゴールデン・カップスゴールデンハーフじゃないよ)のベーシストである。まあ代表的と言ってもシングルでだけ歌謡曲をやってライブやアルバムではロックを演ってたという(これはこれでGSの典型と言えるかも知れないが)バンドの代表格であるようだが。
 今非常に注目を浴びているハマがゴールデン・カップス期の加部のプレイに讃辞を送っていることは、あるいはGS再評価にも繋がるかも知れない。と言うか実は僕もGSについては殆ど手付かずの状態で、ベーマガでハマが「ゴールデン・カップスでの演奏は人間業じゃない」と述べているのを読んでへえ〜と思いCDを借りてきて聴いてみたところ、確かに凄い。「Hey Joe」なんかが特に分かりやすいか。実は僕はJLCなんかでのベース・プレイがあんまりピンと来ないことが多かったもんで、ゴールデン・カップスでの演奏の方が好みには合っているようだ。
 しかし、それでもなお、僕はサリー(タイガース)のベースにとりわけ心惹かれる。これはまあ技術などよりもプレイ・スタイルの好みの問題と思うのだが、僕が大好きなのは(1)ベースの本分を守りつつ、(2)中高音域を取り混ぜた、(3)メロディックで変則的なフレーズで、しかも(4)音量がギターに匹敵するくらい大きい、というベースで、これを適切なバランスで満たしているケースは意外とかなり少ない(大体世の中の音楽は往々にしてベースが小さすぎるし、ベースが大きい時には(1)を満たしていないことが多い)。
 上の条件にピッタリ合う、ポール・マッカートニージョン・ポール・ジョーンズ、ロジャー・グローヴァーらのプレイを滋養のように感じて聴いているわけあるが、サリーのベースというのは上記4点のバランス加減において、彼らに匹敵するものと信じる。
 今のところタイガースについては10年ほど前に出た2枚組のシングル・コレクションでしか聴いていないが(ちょうどつい先日新しいベストアルバムが出たようである)、先日も取り上げた「美しき愛の掟」や「素晴らしい旅行」を筆頭に、聴き応えのある演奏が多い(ところでタイガースはレコードでも自分たちで演奏していたのか?=これらのベースは本当にサリーなのか?という疑問もあるわけだが、当方に判断する手立てがないので姑く全てサリーの演奏と見なす。まあ近年のライブ映像など見ても、上記の2曲などはサリーに間違いあるまい)。いかにもフラットワウンドな、うねりのある音色も魅力的だが、まず以て音が大きい。デビュー曲(僕のマリー)のイントロからしてデカいが、「君だけに愛を」や「白夜の騎士」なんかはデカすぎるんじゃないかと思うくらいである。嬉しい。ステレオ録音ではベースギターの音というのは右なり左なりに多少パンしてある(つまり、片方だけ聴くと、一方で普通に聴くよりもベースが大きく聞こえ、もう一方では普通よりも小さく聞こえる、または全く聞こえない)のが普通であるのに対して、サリーのべース代表作とでも言えそうな「美しき愛の掟」では、むしろ普通に聴いた方がベースの音が大きい。ビートルズでもこんなにベースがデカい曲はそうはなかったぞ。ところでこの曲、なんとなく「While My Guitar Gently Weeps」に似ていると思いませんか。
 シングル・コレクションだと、2枚組の1枚目の方なんかは甘ったるい曲が多くてちょっとどうかとも思うのだが、まあはっきり言って、すぐ慣れます。何故なら(いささか単純化した言い方ですが)結局の所、いくらあがこうとも歌謡曲というのは我々のDNAに深く訴えかけるものがあるからですね。いくら先鋭的なロックを愛していても、「花の首飾り」が流れてきたら「おお愛のしるし〜♪」と口ずさまずにはおれないものさ。話が逸れたが、そういう初期タイガースの曲でも、例えば「落ち葉の物語」なんか歌詞はナニだが曲は結構面白いし、ベースも(これまた)デカい。それに1枚目のラストを飾るのは必聴曲「ジンジン・バンバン」である(「青い鳥」B面)。この曲、メンバーが途中で笑い出すのがいささかワザとらしくはあるのだが、演奏は確かにヘヴィーである。しかもニコニコしながらヘヴィーなことをやっている感じが出ているのがまた、凄みがあっていい(映画の殺人鬼が笑っているとコワイのと理屈はおんなじである)。スタジオ版は現在YouTubeには挙がっていないようだが、貴重なライブ音源が聴ける。気に入ったらばCDなりレコードなりで是非。新しいベスト盤では「ブルー・ディスク」の方に収録されているようです。
 なおサリーのベースはタイガース以降にも聴けるのであって(そういえば何年か前にchar,木村拓哉とパソコンのCMで演奏してました)、その代表格がPYGである。PYGだと「Love of Peace and Hope」というカッコイイ曲がある。この曲のベースはミキシングが悪いのかなんだか聞こえにくいのだが、それでもゾクゾクする魅力がある。PYGの頃はヘフナーでなくジャズベを使っていたらしい。井上堯之バンドでのこちらの映像では、メイプル指板に黒ブロックのポジション・マークという面白いジャズベを弾いている。

 最後に唐突にゴールデン・カップスの話に戻るが、ハマ・オカモトベーマガ誌上に連載しているコラムの名前が「午前何時のハプニング?」で、これどういう意味なんだろうかと思っていたのだが、ゴールデン・カップスに「午前3時のハプニング」という曲があったんですね。聴いてみたけれどもあんまりピンと来なかった。