こんなんだったっけ日記

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8UPPERS(総論編)

 パッチアッパーズと読むそうである。「8」を「パッチ」と読んだことなんてこれまで一度もないように思うが、言われてしまうと特に違和感無くパッチアッパーズと読めてしまうのが不思議だ。
 どうも関ジャニ∞主演の同名映画があるようなのだが、未見なのでこのアルバムとの関係は判らない。ジャケットも映画の1シーンのようだ(3種類あるが、メンバーが歩いているのを横から映したものが一番優れていると思う)。冒頭の「Oriental Surfer」を含めた3曲のインスト曲が収められているが、これも劇中で用いられたものであろうか。
 以上は余談。本作についてとにかく強調しておかなくてはならないのは、これが現時点での関ジャニ∞最高傑作であるのみならず、日本のポップス史上に残る大傑作だ、ということである。インストは3曲も入っているし、「ズッコケ男道」「無責任ヒーロー」のようなパーティー・ソングも無いし、一聴すると取っ付きにくいアルバムにも思われるかも知れないが、腰を据えて聴いてみると、見事な完成度を誇っていることが判っていただけるのではないか。「捨て曲ナシ」というのはアルバムをプロモートする時の常套句であるが、このアルバムには「本当に」捨て曲がない。個人的には「BOY」がやや弱いかと思われないでもないが、それでも充分合格圏内である。
 ベタベタなバラードがない点や、打ち込み主体の曲であってもアレンジが繊細で、安っぽく聞かせない点なども個人的に好印象である。どの曲も編曲がしっかりしていて、伴奏を聞いていても気持ち良い。
 名盤というのは、100点の名曲が1,2曲入っていて他は凡曲、というのよりはむしろ、100点はなくとも全曲が85点以上であるようなアルバムであると思うが、本作は(インストは一種の箸休めであるから措いておくとして)、全曲が90点以上である上に、100点の曲もバッチリ入っている。どれを100点とするかは人それぞれであろうが、僕の好みでは「LIFE 〜目の前の向こうへ〜」と「願い」がそれに当たる。その他、シングル曲を抜いても「モノグラム」「泣かないで僕のミュージック」「Baby Baby」「ほろりメロディー」が各97点くらいはある。僕からすれば、正に恐るべきポップ・アルバムである。
 ところで、前作『PUZZLE』までに見られた、「大阪」を全面に出したナンバー、コテコテの歌謡ナンバーはここでは完全に影を薄めている。いや、むしろそうした面をも、「アニマル・マジック」のような形で、シックな色合いに染め上げたと言うべきであろうか。これはある面からすれば折角得た個性の放棄であって、「関ジャニ∞」が只のJポップを歌うグループの一つに紛れ込んでしまうことに繋がるわけだが(その意味で、次作『FIGHT』の冒頭を「モンじゃい・ビート」にして、「そういや関ジャニ∞ってこういうグループだった」と聴き手に思い出させたのは、圧倒的に正しかった)、本作はボーカルにおいて7人それぞれの個性を今までよりもきちんと表現することによって、これが紛れもない「関ジャニ∞」の作品であることを明示している、と僕には思える。
 本作において、渋谷・錦戸を歌の主軸に据えるというこれまでの方針がかなり成りを潜めている点は大いに評価すべきであろう。歌手グループなのだから、全員にしっかり歌わせればいいのだ。この点、ボーカル1曲目である「モノグラムからして、何しろ唄い出しは横山だし、その後も各人が(平等にと言っても良いほどに)きっちり聴き所を作ってくれている。これは、次の「泣かないで僕のミュージック」(唄い出しは村上!)以降も同様である。勿論、そういう曲はこれまでにもあったが、アルバム全体を通してそのようになっているということはなかった。これは、本作では単にソロ・パートを増やしたということだけでなく、各人の声がきちんと聞こえるように各曲が編曲され、全体がプロデュースされているということでもある。
 渋谷がいて錦戸がいてあと数人…というのではなく、7人で関ジャニ∞!というのが遂にCDの中で現出されていて、実にワクワクさせられる。これは映像(コンサート)で観てみたいなあ!と思わせる。また、各人に歌わせることによってより魅力が出るということは、関ジャニ∞の音楽グループとしての多彩さを示していると言えよう。
 つまり、本作は良質のポップ・ミュージックを愛する人と、関ジャニ∞そのものを愛する人との、両方に非常にアピールする作品になっているのである。

 ついでながら、オマケのソロ曲集。これが凄いんだ。7人個々のソロ曲に加えて安田・大倉作を全員で歌ったものを収めてある、という点にも充実の度合が窺われるが、それぞれの楽曲もかなりレベルが高い。これまでの比ではない。特に安田! これまでも自作曲を出していたが、「かなり良いんだけどあと一歩」という印象だった(むしろ他メンバーとのユニットにおいて傑作を叩き出していた)。ところがこの「TOPOP」と「って!!!!!!!」は、完全にプロのソングライターの合格レベルに達している。思うにこのヒトは、思うがままに作るというよりも、何か具体的なテーマを設定した上で作っていくのが向いているタイプなのではないだろうか。だから「Kicyu」のように「ディスコ・サウンド」というのが発想の核にあったりすると成功する。「TOPOP」では現代風のパワーポップ、「って!!!!!!!」ではグリーン・デイばりのメロディック・パンクというテーマでめちゃめちゃレベルの高いものが出来ている。どっちも殆どケチのつけどころがない(「TOPOP」は後で「Eightpop!!!!!!!」という全員で歌うバージョンが出来たが、あれは歌がゴチャゴチャして良くなかったと僕は思っている)。頼むから全曲自作でソロアルバムを出してくれ。
 安田以外も各曲ともアレンジ含め僕好みのものが多い。横山のなんかカッコイイやん。渋谷のもバリバリのロックやし。錦戸の自作曲も「四角い画面に映るのは/空に嘆いている少年/隣のボタン押せば/星降る夜空でのキスシーン」というのがイメージが鮮やかで優れている。丸山のも、凄くカッコイイ(カラオケでたまに歌います)。大倉のも、まあ普通のバラードではあるが何故かこれは好きだ。声の魅力も出ているし、あと「自分のチカラで泳いでいくんだ」というフレーズが沁みる(空を飛ぶよりも海を泳ぐ方が比喩として好きだ)。
 そして村上。……率直に言って、この「Dear...」という曲はアカン。前作オマケ曲の「Glorious」と同じくらいアカン。こういう毒にも薬にもならんR&B風の曲…まあそもそもこういう曲自体が全く好きではないのだが、もしこういう曲を仕方なくやる場合には、抜群の歌唱力で以て曲の内容の無さを力技で補う(ごまかす)しかない、そういうものなのだ。そんなモンをオレに歌わせてどないすんねん! あっ、つい村上本人のつもりで怒ってしまいました。悪いのは村上信五ではなくプロデューサーだろう。
 村上はソロ曲に恵まれんなあ。今のとこ「Babun」が一番かなあ。

 まあそんなわけで村上でミソがつきましたが、この本編にしてこのボーナス。凄まじいまでの充実度である。
 曲レベルではともかくとして、アルバムレベルでは、恐らくこれを凌駕するものを関ジャニ∞は今後出せ……まあ出してくれたらいいなーとは思ってます。


 各曲についてはもう書かなくてもいいか、と思っていたがやっぱり書きたくなってきたのでそのうち書きます。