こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

小林聡美『ワタシは最高にツイている』(2007)幻冬舎

 小林聡美は文章が上手い。

 夫より上手いんじゃないかと思うくらいであるが、この本はタイトルが、なんていうのか、ポジティブ思考の暑苦しさを感じさせて嫌だったためにこれまで避けてきたのであったが、この題はむしろその暑苦しさをおちょくった意図・・・とまでは言えないかもしれないが、まあともかく本文を読むとポジティブ思考の暑苦しさ、胡散臭さはちゃんと判ったヒトであるということは伝わってくるので安心した。

 それにしても上手い。前よりも(というのは、例えば『マダムだもの』なんかと較べて、ということだが)上手くなっているように思える。特に、庭木の剪定について、「奮闘することなんと五時間! ワタシの首はもはやシスティーナ礼拝堂の天井画を描き上げたミケランジェロのごとく上を向いて固まったままであった」(「バサミで奮闘」)というのは、大笑いしつつも唸ってしまった。
 ピンクよりもキャン派だということが判ったのはちょっと寂しかった。

 ところで、あとがきに出て来る「OT」というのは勿論、奥田民生のことであるが、日本のロックに詳しくない人のために贅言すると、これは別に本名出すのがアレだからイニシャルにしてあるのではなくって奥田民生についてはOTというのは一つの「呼び方」なのである。岡村隆史と間違えたりは誰もしないのだ。