こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

津村記久子『君は永遠にそいつらより若い』(2005)

 いいタイトルである。デビュー作。面白かったが、僕が楽しんでいたのはホリガイを中心とする脱力系の、というのはあんまり好きな言い方では無いが、ともかく力を抜いて読める状況や会話なんであって(八木君の尻を讃える歌とか)、終盤になっていきなりシリアスになって、そのまま終結するのは、勝手な意見ではあるが「それが欲しかったんじゃないんだけど」という気持ちが正直なところ。
 作中、ホリガイとオカノと河北が、エルヴィスが晩年ドーナッツを喰いまくったということが常識的に了解された上での会話するシーンがある(文庫で55ページ)。あと、アブドーラ・ザ・ブッチャーがいつでも流血させられるように常に「生」の状態の傷を持っていたという逸話が書いてある。「教養」ってこういうモンじゃないかと思う。エルヴィスのことを前提にドーナツの話が出来るのは羨ましい。

 原題は『マンイーター』というそうである。よく判らない言葉だ。ホール&オーツと関係あるのだろうか。大西君は出て来ないみたいだが(これもまた教養)。
 2009年刊のちくま文庫で読みました。前々から読みたかった『ポトスライムの舟』を八月に読んで以来の津村ブームで、単行本になっているもので残してあるのはもう『アレグリアとは仕事はできない』だけと思う。どないしよか。