こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

マナー違反

 今日の東京新聞(朝刊)の「筆洗」欄は、菓子工場から漏れる甘い匂いが近隣住民にとって迷惑である旨であったが、その中で「地下鉄で隣席の人のヘッドホンから漏れてくるのが好きな曲でも、喜ぶ人は少なかろう」とある。
 しかし、どうでしょう。喜ぶ人は結構多いような気がする。何年か前、『ロッキング・オン』の読者投稿で、電車内でヘッドホンの音漏れがするのでイラついていたらそれがマーズ・ヴォルタの曲だと気付き、あ、このヒトは「布教」をしているのだと思って苛立ちが消えた、という話を読んだ。
 私もJRに乗っている時に横の人のイヤホンからディープ・パープルの「ブラッドサッカー」が聞こえてきて、つい話しかけようかと思ったことがあった。サーフィスなんか聞こえてきたら本当に話しかけてしまいそうなので、サーフィスファンは電車内では音量をきちんと落として聴いてもらいたいものと思う。そりゃまあサーフィスに限らず音量は落とすのが当然であるけれども。

 そう言えば、何新聞だったか、暫く前の読者投稿で、女子高生だったと思うが「電車の中で化粧をするのは誰にも迷惑を掛けていないのに、どうしてマナー違反となるのか納得出来ない。何でもかんでも非難するのはおかしい」という旨の主張が載っていた。これについての反論なり共感なりが後日載ったかどうかは知らないが、彼女は「迷惑」という概念を狭く捉えすぎていると私は思った。
 彼女の論で行けば、下半身を露出するのも誰にも迷惑を掛けていないからオーケーということになる。
 実際には我々の言う「迷惑」とは「不快」を大いに含むのであって、目の前で化粧をされるのは不快である。その理由もある程度説明できる(即ち、化粧をするということはごく大雑把に言って「醜」から「美」への変化を志すということであり、その過程というのは、一旦は自分の姿を「醜」として見せる以上、排泄行為と同様、他人の目に晒すことは大いに憚られる性質のものである。されば、目の前で化粧をされるということは、自分が相手にとって完全に無価値、否むしろ無存在に近しいモノであると述べられるに等しいのであって、云々)。
 ただ、そうした説明以前に、目の前で化粧をされるのが不快だということが感覚的に理解できない人は、言葉が非常に悪くなるけれども、要するに非常識なのである。あの投稿は、少なくともそれに対する反論になるような類の投稿と並べて掲載するべきだったのじゃないかと思う。