こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

夕顔(四・五)

14日 
 新大系で19から24まで(よひすぐるほど〜おはしつきたり)。幽霊登場から、源氏の帰宅まで。
 ここは凄い。何度読んでも感心する。エドガー・アラン・ポーばりのゴチック・ホラー。特に夕顔の遺骸を筵に包んだ時に髪がこぼれるところなんて、完璧だ。小説家・紫式部の凄さに舌を巻く。とにかく焦りまくる光源氏の一挙手一投足がリアルなのだ。例えば、源氏相手ということで物怖じしてなかなか灯りを持ってこない下人に、源氏は「なを持て来や。所にしたがひてこそ」と言う。彼の緊迫感がありありと伝わってきて、物語の世界に引き込まれる。
 
 「いかでまからん、暗うて」と言へば、「あな若々し」とうち笑ひ給ひて手をたたき給へば、山彦の答ふる声、いとうとまし。

 怖いですねえ。情景がまざまざと浮かびますねえ(淀川長治氏ふう)。あとで、「手たたけば山彦の答ふる、いとうるさし」と源氏が言うのも、口に出して言うことで恐怖を紛らわせようとしているのがハッキリと判る。名シーンだなあ。


15日
 25〜30(人々〜しばしはおぼえ給ふ)。
 気丈に働いていた惟光(この辺りの彼の働きっぷりは読んでいて気持ちよい)が、源氏が落馬しかかるのを見て自分まで焦ってきて、加茂川の水で手を洗って仏を拝むシーンが、惟光の感じている状況の深刻さをよく表していて優れている。