こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

6月13日のこと

 七時過ぎに起床。トーストを二枚食べ、『WARM』をランダムで聴き歌詞を確認しながら、文京区・向丘の漱石旧居跡へ初めて訪れる(「猫」がいた)。
 午前中は大学図書館でパソコンしつつ過す。BGMはサーフィス全曲集。尤も、作業をしているとあんまり耳に入らない。
 部屋で昼食をとり、十三時半すぎに出発。山手線で有楽町へ。開場は十六時半なのだが十四時半から物販があるというのだ。有楽町で降りるのは初めて。どうして発着メロディーを「有楽町で会いましょう」にしないのだろう。あなたとわたしの合言葉・・・しかしメロディーがいまいち思い出せない。

 国際フォーラム、野外でサーフィス物販かと思いきやフリーマーケットみたいなものを催している。お洒落な雰囲気。十四時二十分くらいに物販コーナーに到着するも、三人くらいしか居ない。なーんだと思いつつ本を読んでいたら、なんと別のところに長蛇の列が出来ていたのだった。慌てて並び直す。サーフィス目当てとはとても信じられないほどの長い行列である。結局一時間ほど待つ。雨が降らなくて良かった。この間に、考えてみればグッズなんて別に要らないんだよな、という気持ちになる。サーフィスなんたらとか書いてあるTシャツなんか着てどうするのだ。ステッカーなんか買って、本当に貼るのか。
 こんなに長い列だと買えないかもしれないな、と思ったが、そうでもなく、結局目星を付けていたものは全部買ってしまった。Tシャツ(3000円)黒と白を一枚づつ、エコバッグ(500円)、パンフレット(3500円)、ステッカー(500円)黒と白を二枚づつ。計12000円。普段の生活感覚からすると随分高いが、最後だし、ケチっちゃあいかんと思ったのである。しかしパンフレットは失敗だった。二十数ページしか無くって3500円というのがそもそも高いが(精々1000円が妥当だろう)、しかもインタビューとかは無く写真だけ。そんでまたこの写真が・・・。嬉しいという人もいようが、僕は要らない。因みに物販ではFACESの通販で売っていた写真集や、会報のバックナンバーまで売っていた。まあ、いいけど・・・。
 ところで僕がサーフィスのライヴに行くのはこれで四回目だが、ツアーTシャツはいつ見ても気に入るものが無かった(それでも初めてのサーフィス・ライヴだった”resurface”ツアーの時のは、とにかくなにか欲しいというので買ってしまったが)。でも今回のは悪くない。しかし、”SURFACE LAST ATTRACTION”という文字の、SURFACEという部分は反転しているデザインなのだが、これはむしろLAST ATTRACTIONの方を反転させてSURFACEの方はそのままにしておいて欲しかったように思う(但し、実際に着てみて気付いたのだけれど、鏡に写すとSURFACEがこの形で立ち現れてくるのである)。
 その後、今度は入場のためにまた同じ所に並び直す。列が長いんで開場してもすぐには入れない。それにしてもこれだけいる人の、全員ではないにせよ、大方がサーフィスのファンだというのはなんだか信じがたい。十二年間今に至る迄、サーフィス友達というのが全然いないので、自分以外のサーフィス・ファンの存在がなんだか上手く飲み込めないのである。「サー」という略称にも全く馴染めないままここまで来てしまった。結構沢山の人がツアーTシャツを着ている。勿論さっき買ったのを早速着ている人が多い。当たり前だがピンク・フロイドの『原子心母』Tシャツなんか着ているのは僕だけである(どうでもいいけれども、『原子心母』Tシャツを着てサーフィスのライヴに行くのは二度目だ)。そうか、みんなサーフィスが好きなのか。しかし友達になれそうな人は少ない。
 入場するところでチラシを何枚か貰って、見ると、DVD化決定、秋発売、とある。よっしゃよっしゃと思うが、「5000枚限定」というのはどういうことか。
 ホールに入ると、マネージャーS氏選曲というBGMは、レディオヘッドの’No Surprises’。次はカサビアンだったように思う(補記。ケミカル・ブラザーズだったらしい)。その後はずっと判らない。洋楽のデジタル・ビートのロックというのか、まあそういう曲が多かった。席は2階12列35番というのだったが、思ったよりずっと遠く、高位置。ローソンチケットの先行予約は、一番早い購入手段だったと思うのだけれど、どうしてこんな後ろの席になってしまったのか。しかし位置が真ん中なのは幸いである。遠いのも(こんなに遠くでサーフィスを見るのも思えば初めてである)、始まってみると別に気にならなかった。隣のおばさんは周到にもオペラグラスを持参していた。そう言えば2000年にポール・マッカートニーを観に大阪ドームに行った時は、オペラグラス(というか、只の小型双眼鏡だったけれど。何か違うのかしらん?)を持って行ったなあ。’Blackbird’を歌うポールをレンズ越しに見た記憶がある。ポールまた来てくれないかな。
 ところでこのおばさんは「ああ、関西人やなあ・・・」と感じさせる喋り、振る舞いであったが(別に態度が悪かったというのでは全然無い)、関西人である僕が「ああ、関西人やなあ・・・」と思うくらいだから、東京の人なんかがこのおばさんから受け取る「関西人ムード」の濃さは相当なものではないか、などと思った。

 さて十七時四十分ごろ、レッチリの’Fortune Faded’(いいですね)が途中で消えて、開演。当然客席は総立ちになる。
 ダークな雰囲気のSE。’Invitation’と同じ人だろうか、英語のナレーションが入る。その中に’Last Attraction’という語もあって、曲名がつくとしたらこれになるか(後日、マネージャー氏のブログにて'Future Ride'という曲名と判明)。それが流れる中、まず永谷喬夫入場、なんだかポンチョみたいなものを身に纏っているように見える。ギターは青い(黒だったかも)の2ハムのストラト。あとでパンフレットを見ると、やっぱりクルーズであった。別のギターだけど、十年前の国際フォーラムでもクルーズを使っていたなあ。観に行ったわけではないが。十年前に使ったやつは、確か”Celebration”で使ってくれたのではなかったか。ギターはその後、ギブソンのES−335(これは『ヌイテル?』のビデオなんかでお馴染みなので、嬉しい)や青い(緑だったかも)のテレキャスなんかを使い分けていた。機材の話終わり。
 そこで弾き始めたスローなソロ、それがなんと「君の声で 君のすべてで…」をモチーフにしたものなんで、いきなりか!?と驚く。しかし歌には繋がらず、また最初のSEに。それが結構続く。
 椎名慶治登場しての一曲目は、予想だにせぬ「イッツオーライ」。しかしこれは素晴らしいチョイスだったと思う。この曲の「恰好付けて 余裕かまして 君の前に現れるんだ」というフレーズが大好きなのだけれど(泣かせる)、この場面では特にそれがハマっていた。ここで早速涙ぐむ。「十年選手」を「十二年選手」と言い換えていた。
 二曲目は「ヌイテル?」(この曲と、あと他でもあったけれども、Bメロで客がやる「パン、パパン(手拍子)、フー(裏声)♪」というのが、本っ当に嫌だ)、三曲目は「.5 (HALF)」だったか。DVDが出るということで(尤も完全収録かどうかは怪しい―――ライヴの進行につれて、完全収録されぬ危惧はかなり増大した(補記。それでも全曲収録されるらしい))、曲目はメモしなかった。何曲演ったのかも知らないけれども、終演が二十時四十分ごろだったのでライヴはざっと三時間。

 先に残念だった点を書いてしまうと、全体的に椎名の歌詞トバしがかなり激しかった。はっきり言って、完全収録はおろか、DVD化自体が危ぶまれるくらいだった。「録り直します」とはこの時の椎名氏の弁であるが、冗談になっていなかったぜ。
 歌詞が飛んでしまったうちの幾らが涙ぐんでしまったせいなのかは判らないし、またどっちにせよファンは許してしまうのだが、プロの自覚が足りないと批判されても仕方ないというか、批判されて然るべきというか、まあそのようなことを思った。特にバラードで歌詞をトバすのはまづい。一気に気持ちが醒めてしまう(のは僕だけか)。「airy」の始まりが非常に良かったので、この曲でのミスは大きかった。「泣いちゃって・・・」と言っていたが、単なるミスも多かったと思う。
 ところで今回、バラードは、客を座らせて、まとめて演るという趣向だったのだが、そしてバラードだって大好きではあるが、ライヴではバラードよりもアップテンポの曲の方がいいなあという印象も持った。ライヴではなかなか歌詞に意識を集中しにくいから。と言いつつも、「君の声で 君のすべてで…」のイントロには痺れる。これはもう、イントロからして特別である。あとチャーリー氏のソロで始まる「フレーム」も良かった。
 バラード特集で演ったのは「その先にあるもの」「君の声で 君のすべてで…」「airy」「フレーム」「素直な虹」だったか。しかし他にもバラードの名曲は「as ever」を筆頭に、多いですね。いや、筆頭にすべきは、「縁」か。これは全く意外なことに、結局最後まで演らなかった。”Celebration”でも演らなかったし、結局僕はライヴでこの曲を観ることが一度も無かった。残念といえばまあ残念である。
 バラードの名曲ということでいうと、「Y字路」なんかも聴きたかった。今回、『WARM』からは「NEWS」と「アイムファインセンキューアンジュー?」だけだったと思う。あと「だけどきみを離せない」なんかも、いいですね。勿論「Tell me」も。
 初めて聴く曲が一曲あった。まさか新曲を演るとは!と思ったが、歌詞から察するに題だけ知っていた「愛の領収証」であったよう。楽しい曲かと思ったらむしろダークな雰囲気で、これが聴けたのは収穫だった。DVDにもきちんと入れてもらいたい。ボーカルは低音があまり出ていないようではあったが。
 「Route3」は大好きな曲なので演ってくれて嬉しかった。ギターのリフが実に格好良い。全体に今回のギターはへヴィーで、要所要所に挟むフレーズも結構、近年のジェフ・ベック的な、「キモカッコイイ」ものが多かった。
 他、意外な曲としては「でてくるなよ」など。十年前を思い起こさせる趣向か。あと、「ワクチン」を演ったのは、椎名ブログでの事前投票(あなたのベスト3、というやつ)で一票も入らなかったせいだろうと邪推する。
 しかし「でてくるなよ」演るくらいなら「なあなあ」(まさか外すとは!)演ってよ、などと思わないでもない。演ってほしかった曲、というのは勿論沢山ある。演るだろうと思っていたのに演らなかった曲、としては「なあなあ」の他に、なんと言ってもやはり「縁」(”Celebrartion”の時も思ったが、なんで演らなかったんだ!)があるけど、あと「Re:START」「らしさ らしく」「Super Funky」「たまり場」など。演らないだろうなあとは思うけど好きな曲だから演ってくれると嬉しいな、という曲は、数知れないが、例えば「偶然=必然」「R.O.S」「リミット」などなど。あとはやはり『Phase』の曲。「まだまだ」はちょっと無さそうだなと思ったけれど、「ひとつになっちゃえ」なんか、あのイントロが鳴らされたら大興奮したろう。まあ、言っても詮無いことであるし、そもそも今回のセットリストに不満があったわけでも全然無い。
 「それじゃあバイバイ」がラストじゃなかったのも意外。これはもう、みんなで大合唱。
 「ライヴで初めて演る曲だから・・・」というMCで色めきたったのだが、何のことは無い、「渦」であった。昔の曲かと思ったがな。しかしこの曲も含め、新曲で大いに盛り上がるのは嬉しい。「ソコハカトナク」には涙ぐむ。
 演奏はやはりsurface時代や今回の新曲群なんかが良くハマっていると感じるが、一方で『Phase』の曲が出るとやっぱり嬉しい。特に「バランス」が遂に聴けたのには興奮した。あと「空っぽの気持ち」も。「バランス」は二度目のアンコールでも披露。「好きなモンは好きだからしょうがない ねえ そうでしょう?」が二回も歌えて幸せだ。アレンジは、『Phase』のを基調としつつも、「transit mix」も取り入れた、折衷型。でもサビの合間で「yeah, yeah!」を入れる人はあんまりいなかったみたいだけど。例のラップも入る。それも掛け合いで。ここは十年来のファンとして、バッチリ歌わないわけにいかない。そう言えば「キミスター★」の二番冒頭を椎名が歌わせた(んだか、歌詞を忘れたんだか)時に、咄嗟に歌詞を度忘れして歌えなかったのは悔しかった。
 「ゴーイングmy上へ」、これは流石の僕も振り付けを一緒にやる。実は”Celebration”の頃には忘れちゃっている部分があってあんまり出来なかったので、今回は事前に少々予習(というか、復習か)をしたのだ。これと次の「まぁいいや」とは、いかにハタから見てアホみたいだろうが気持ち悪かろうが、振り付けせざるを得なかったです。
 さて、曲に感動して涙を流すということはこれまでサーフィスのライヴに行く度に経験していたことだったので、今回もあるだろうと思っていたが、解散が悲しくて泣くということは無いだろう、と思っていた。そして、思いの外、ライヴも湿っぽい雰囲気に殆どならないまんまに最後まで進んでいったのだが、終盤の「さぁ」で、『Phase』が自分の生活の小さからぬ一部だった十年前へと引き戻されるようにでも感じたのか、いきなり涙が出てきて、その後でまさに堰を切ったように泣いてしまった。本当に、オイオイと声を上げて泣いてしまった。なんとも意外なことで、あんなのは飼っていた犬が死んで以来である。しかも次の曲(本編最後)は、「アイムファインセンキューアンジュー?」なのだ。ここでも、歌の合間で座り込んで声を上げて泣くという次第で、周りでそんな泣き方をしている人はいなかったかも知れず、ということは恥ずかしい有様だったのかもしれないのだが、もうしょうがない。
 何しろサーフィスが解散するのである。

 しかし、なまじそこで泣いちゃったので、アンコールでは、「なにしてんの」なんかも歌ったのだが、そしてSURFACE節(surfaceでなく、というニュアンスがこもる)が全開の名曲、「CHANGE」も、ずっと一緒に歌っていたが、泣かずにただ楽しめた。まさに「思い切り泣くだけ泣いて最後は笑顔で別れた」というふうになった。そして、「それでも互いが必要ならきっとまた巡り会える」、こちらも、MCの様子からすると、大丈夫そうである。

 終演を迎え、すぐまた山手線で上野へ。少し歩いて、ミスタードーナッツでドーナッツを四個食べる。結局これが夕食になった。
 帰って、パンフレットを見て「失敗したな」と思う。
 それから銭湯へ。極楽。その帰り道に、小雨が振り出した。