こんなんだったっけ日記

さよなら はてなダイアリー

ジャンナビ(잔나비)について知りたい!

 チャン・ギハと顔たち(장기하와 얼굴들)に偶然出会ってドハマりしたのが2016年の秋、それ以来、いわゆるKポップらしさとは別の道を行く韓国ロック・ポップスに目配りをしてきた。と言っても韓国の知人友人にオススメを訊いたり、YouTubeが示してくれるオススメをチェックしたりという程度だが。
 尤も、色々と聞いてはみてもピンと来るのはなかなかない。これはどんな音楽でも同じことであるが、しかしその中で、これまでに幾つか「これは良いな!」と思う歌手・グループに出会ってきた。とりわけ、つい先日知ったバンドは個人的にチャン・ギハ以来の大当たりであった。それがジャンナビ(잔나비)である。


 具体的には、YouTubeのオススメに示されていた中で、『伝説(전설)』というアルバムが全曲アップロードされていて、サムネイルになっていたジャケットがちょっと面白かったので(少なくとも「いわゆるKポップ」の音楽ではないのだろうなということは感じられた)仕事のBGMとして流してみた。
 

www.youtube.com


 こういう聴き方をすると、大抵はピンと来なくて数分すると聞き慣れた音楽に戻ってしまうのだが、このアルバムの場合は「なかなか悪くないじゃん」という感じで、そのまま最後まで流した。全部で40数分で、個人的にはアルバムとしては理想的な長さだ。

 その後も何度も流していて、「これだけ流すんだったら買った方が良いな」と思い、Amazonでmp3でダウンロード購入(本当ならCDで買いたいところだが、その時にはCDで売っているサイトが見つからなかった)。で、お金を出したものだからBGMでなく改めてじっくりと聴いてみると、やはりこれは素晴らしい1枚(盤で買ってないけど)ということが分かったのだった。傑作と言っても良いかも知れない。


 チャン・ギハと顔たちに較べると、韓国らしさは薄いようにも感じるが、ポップ・センスが卓越している。2曲目の「Together!」はキリンジ好きなんかに受けそうな超上質のシティ・ポップだし、3曲目の「Joyful joyful」はギルバート・オサリバンみたいだ。あと大事なのはサウンドで、すごくアナログらしい暖かさを湛えていて、70年代の音楽が好きな人にとてもしっくり来るもの。また、全体的には穏やかな曲が多いのだが、伴奏を聞いているとロックが根底にあるのを感じる。表題曲「伝説」間奏の、オクターブを重ねたギター・ソロなど、非常に好み。「悪い夢(나쁜 꿈)」辺りのサイケな感じにビートルズのDNAも感じ取れる。
 「ためらう恋人たちのために(주저하는 연인들을 위해)」みたいにとにかく美しいバラードもあって、というかひょっとしたらそういう曲が強みのバンドと見られているようでもあるが(この曲はシングルカットされている)、決してそれだけではない。デビュー曲「ロケット」(2014年)はクイーンを思わせる凝りまくったポップ・ロックである。これもめちゃめちゃ良い。

로켓트 - 잔나비 ( 가사 포함 ) - YouTube


 2014年4月28日に上記「ロケット」でデビューしたとのことだが(昨日が5周年記念だったのか! 惜しいな)、日本語での情報が圧倒的に不足しているのでメンバーのこと(現在5人のようだが、デビュー時は3人だった?)やディスコグラフィーなど、今一つハッキリしない。いま本国でもインディーバンドとして異例の人気を獲得しているとのことなので、日本語での情報充実もどうか期待したいところである。
 この『伝説』は2枚目のアルバムだそうだが、1枚目のアルバム『Monkey Hotel』は10曲入り30分弱のコンパクトな作品のようなので、本作『伝説』(リリースはつい先月)がまさしく待望のフルアルバムという感じかも知れない。がっつり追いかけていきたいバンドなので、是非これからも積極的に活動していってほしい。

「チャン・ギハと顔たち」来日公演に行ってきた(5)

 (4)からの続き。

 立て続けのアップテンポ曲を仕上げ、MC。「デビューした頃には、こんなに何度も日本に来られるとは思っていなかった」という話から、「デビューシングルと第1集から一曲ずつ」とアナウンス。となると当然この2曲である。


19. 싸구려 커피(1)


[EBS 스페이스 공감] 미방송 영상 장기하와 얼굴들 - 싸구려 커피


20. 달이 차오른다, 가자(1)


1集収録曲(2集活動時の演奏)チャン・ギハと顔たち(장기하와 얼굴들) - 満月だ、行こう【Korean Psychedelic Rock】


 どちらも代表曲なので(物販には「달이 차오른다, 가자」をモチーフにしたトレーナーだかパーカーだかも売られていた)自然な選曲ではあるのだが、個人的には1集からだと他の曲をやってほしかったなあとも。しかしデビュー当時の彼らと今の彼らとの変化(単純にビジュアル面だけでも)を思うと、なかなかに感慨深いものがあった。あと「달이 차오른다, 가자」については、アルバムで聴くとフォーク・ロックっぽいイメージがあったのだが、ライブで観てみるとディスコっぽい・・・とまではいかないが、意外にダンス・ミュージック的な趣があるなあと感じたのが個人的には発見だった。

 再びMC。ここでメンバーそれぞれから日本語で挨拶があった。みんな予め作ってあった文面をスマホに映して読み上げていた(と言っても彼らは日本語が話せないわけではない。私は終演後、ドリンクバーでジュンヨプが日本語で飲み物を注文しているところを目撃した)。この挨拶が、メンバーそれぞれの個性が現れていてとても良かった。ジュンヨプは「元々はゲームで日本語を学びました。しかしその後は上達しませんでした...」と、穏やかな感じで話しつつも笑わせ、ジョンミンは「みなさま風邪など引かれませぬよう...」と異様な丁寧さでこれまた笑わせ、イルジュンは「今までありがとう。みんな愛してます!」と、いかにもテキトーに作ったっぽいところが「末っ子感」が出ていて愛らしく、ミンギも「今までありがとー!」と高いテンションで持っていくタイプ、で長谷川陽平は...長谷川さんは何を話していたか忘れたが、とにかくそういう感じで、各人の個性が見えるMCを見ていると「やっぱり良いバンドだよなあ」としみじみ思った。ギハの目も明らかに潤んでいた。
 ところがギハ曰く「次で最後だと思ったら、もう一曲あった」とのことで、しかもそれに対して長谷川氏が「これが一番大事な曲なのに」という見逃せないコメント。それがこの曲。


21. 그건 니 생각이고(5)


유희열의 스케치북 - 장기하와 얼굴들 - 그건 니 생각이고 20181116


 これはバンドを締め括って次のステージに向かうのに相応しい曲だ。
 それから少し挨拶を挟んで、本編最後はこの曲。


22. 사람의 마음(3)


3集収録曲(3集活動時の初演奏)チャン・ギハと顔たち장기하와 얼굴들 人の心【Korean Psychedelic Rock】


 予想していなかった曲だが、「家に帰ろう」という歌詞は確かにライブの最後に相応しいものだ。
 この曲がギハのアカペラで終わり、一旦退場。しかし当然それに被さるようにアンコールがかかる。このコールが「アンコール!」ではなく「エンコル!(앵콜)」なのがまた面白かった。

 殆ど待たせずに再入場。ドラムが叩き始めたところで「あの曲か!」と気付く。


エンコル01. 그렇고 그런 사이(2)


2集収録曲(2集活動時初出演の演奏)チャン・ギハと顔たち(장기하와 얼굴들) - そういう仲だから【Korean Psychedelic Rock】


 どことなくヒカシューっぽいキッチュな曲だが、これが代表曲というのも面白い。これは終盤にドラムが叩きまくりベースも弾きまくるので、それを眼前に見られたのが楽しかった。
 少しMCがあって、最後の曲。


エンコル02. 별일 없이 산다(1)


チャン・ギハと顔たち


 やはりコレだ。 今回のライブのタイトルにもなっている。私にとってはファンになるきっかけになった曲なので、ライブで観ることができて嬉しかった。

 

 曲数は多くても20曲と予想していたが、終わってみるとアンコール込みで24曲と、随分サービスしてくれた。おまけに長尺の「날 보고 뭐라 그런 것도 아닌데」(インプロ部分はCDの2倍か3倍ほどあったと思うが)を含んでいたので、時間にして2時間半くらい演ってくれたのではないかと思う。MCをこまめに挟んでいたので、それほど長くは感じなかったが。

 

 初ライブの充実感と共に会場を出ようとすると、開演前に物販でもらった抽選の結果が出ていた。なんと当選! というわけで、予め用意してあった『mono』のブックレットに6人のサインをもらってきた。韓国語はまだ全然話せないので、とにかく「解散前に日本に来てくれて有難う」ということを英語で(長谷川氏には日本語で)伝えてきた。
 それが終わって二度目の退場。ライブは素晴らしく、おまけにメンバーからサインをもらい、挨拶までできて。こんなに良いことばっかりの日もあるもんなんだなあ、と思いながら銀座線に乗って家に帰った。

(おわり)

 

【補記】

 年末の4日連続ライブ(最初は29・30・31日の3日連続だったはずだが、その前日に追加公演が入ったようだ)が無事終わり、遂に彼らの活動が(一旦)幕を下ろした。 10月の解散発表からわずか2ヶ月強、そんな短かったっけなと思うが、確かにあっけないほどスマートな幕引きだった。詳細なセットリストはまだ知らないが、ネット上のレポートによると来日公演とかなり近いものだったようだ。映像化してほしいなあ。
 来日公演では、一瞬一瞬を噛みしめるように味わってはいたが、とても味わいきれるものではない。来年でも再来年でも、また来てくれたら是非駆け付けたいバンドなのに、これで見納めとなってしまうのは本当に残念だ、とライブが終盤になるにつれつくづくと感じた。これが見られなくなるのは寂しい。月並みだが、今後の彼ら個々人の活動に大いに期待したい。

 

「チャン・ギハと顔たち」来日公演に行ってきた(4)

 (3)からの続き。
 さてバラード・コーナーの次には激しい曲が立て続けにやってくるのがライブの常である。メンバー紹介が始まり、「来た来た来た!」と興奮が高まる。これが聴きたかったのだ。

11. インスト ~ 우리 지금 만나(2)


161108_도쿄_멤버소개+우리지금만나


 メンバー紹介を兼ねたインストを経て「우리 지금 만나」に至る。何年も前から定番になっているようで、YouTubeに色々と動画が挙がっているが、今回聴けたのは上記動画のと同じアレンジのものだったと思う。この動画は前回の来日公演のやつですね(2016年11月8日@代官山UNIT)。ファンキーでめっちゃ格好良い! 特に良いのがイ・ジョンミンのエレピ・ソロと、チャン・ギハが「俺たちがチャン・ギハと顔たちだー!」(推測)と叫ぶのだけど最初ボソボソ呟くところから急にガーンと叫ぶところ。これは映像で見てもアガるが、ライブで観ると当然もっともっとアガる。

 勿論その後に続く「우리 지금 만나」も大盛り上がりで、私も(発音合ってるのか分からんけども)コール&レスポンスには当然参加。楽しい。あとこの曲はコーラスが綺麗なのも良くって、ライブでもきっちり再現していて嬉しかった。
 ここからはもう、まさに怒濤という感じだった。

12. 빠지기는 빠지더라(4)


유희열의 스케치북 - 장기하와 얼굴들 - 빠지기는 빠지더라 20181116


13. 풍문으로 들었소(-)


OST参加曲(EP活動時初出演の演奏)チャン・ギハと顔たち(장기하와 얼굴들) - 風の噂で聞いたよ【Korean Psychedelic Rock】


14. 좋다 말았네(3)


161119_전국투어대전_좋다말았네


15. 새해 복(-)


새해 복 - 장기하와 얼굴들

 ここまでノンストップ。「빠지기는 빠지더라」と「좋다 말았네」は演るだろうなとは思っていたが、実際演られるとやはり盛り上がる。「빠지기는 빠지더라」のスリリングさ!(観客は例の「sssサッ!」という部分を歌っていた。と言ってもそのまま再現すると音にならないので、「サッ!」としっかり発音することになるのだが。面白かった。上記動画参照)この曲は特に、ラップ部分でどんどん盛り上がっていって、伴奏のフレーズも色々と追加されていって「빠지기는 빠지더라!」に回帰するところが本当に格好良い! ところで、この日のライブでのメンバーの服装はこの曲の上記動画と同様の物だった(全員黒ずくめで、チャン・ギハはパーカー。あれでは暑かろうと思いながら見ていたが、流石に途中で脱いでいた)。
 「좋다 말았네」は比較的リズムはシンプルだが、こちらも高いテンションでガンガン来るので非常に盛り上がる。コーラスもキャッチーだし。勿論ドラムも叩きまくりで、楽しい楽しい。
 一方、アルバム未収録の「풍문으로 들었소」と「새해 복」を演ったのは意外だった。「풍문으로 들었소」はカバー曲だがライブでも結構演奏しているようで、定番に近い扱いなのだろうか。リフがキャッチーなので盛り上がる曲である(余談ながら、口笛はやらずに代わりに客席に歌わせていた)。
 「새해 복」(=新年の福)を演ったのは年末だから? と言っても旧暦だと新年はまだ暫く先だと思うが
 ※と思ったら、今年の9月のライブでも演っていた(2018/09/16 Let's Rock Festival.(参考)https://www.youtube.com/watch?v=--Me5MliP8k&list=LLFZiYA4Eld_4a_9XTfBf2YA&index=10)。あまり季節は関係ないようだ。
 この曲は勿論何度も聞いていたが、アルバムに入っていないので他の曲に較べると聞き込みも甘く、何となく軽い感じの曲かなと思っていたのだが、ライブで観てみると思いの外に激しい曲で驚いた。オルタナっぽいのかな。これもかなり盛り上がりました。後半の、複数のメロディーが重なっていくところのコーラスはあんまり上手くいっていなかったようだが(上記動画では割と良い感じ)。

 小休止を挟んで、激しい曲を更に連発。

16. 초심(5)


[Kiha & The Faces - Cho Shim] Comeback Stage | M COUNTDOWN 181101 EP.594


17. 내 사람(3)


[온스테이지 플러스] 20. 장기하와 얼굴들 - 내사람


18. 날 보고 뭐라 그런 것도 아닌데(2)


161211_전국투어서울막공_날보고뭐라그런것도아닌데

 「초심」はYouTubeにテレビでのライブ映像がアップロードされているが(上記)、これは演出の都合上アテブリを重ねているせいか、なーんか臨場感のない仕上がりになっている。実際のライブはもっと音圧が高くて、満足行く出来映えだった。ハモリはイ・ジョンミンが受け持っていて、これは上記動画でも同様。
 次は、フィードバックっぽい音に連なって、ベースのイントロが鳴り響き「내 사람」。ここら辺はもう、ベストアルバムのレコ発ツアーに来ているような感覚だった。この曲もめちゃめちゃ盛り上がって、一瞬「あれ、前の曲なんだったっけ?」となるほど没入させられた。
 次はなんと「날 보고 뭐라 그런 것도 아닌데」。中盤で高速になるところでのベースとドラムのアンサンブルなど、目の前で見るとやはり感心してしまう。予想通り、間奏の即興部分はCDよりもかなり長くなっていた。曲自体は好きなので嬉しかったが、間奏での即興部分にはそれほど興奮しなかった(長い即興があまり好きではないので。キメの部分は凄く良かった)が、70年代のロック・オマージュが強い曲なので「サンタナとかディープ・パープルとか、当時のライブはこんな感じだったのかな~」などと思いながら見ていた。リフで手を振るのは、一応少し参加しました。上記動画8:50くらいからの指揮のくだりは、この日のライブでもやっていた。11:30辺りの「ハッ!」っていうのもやっていたはず。かっちょええ~。

 どの曲だったか忘れたが(MC前だったと思うので「새해 복」か「날 보고 뭐라 그런 것도 아닌데」だったかな)、曲の終盤でイルジュンがスティックを一本飛ばし(暫くもう一本のみで対処し、スキを見て予備を補充)、更に最後にはイアモニターまで飛ばすという暴れっぷりだった。
(つづく)