「チャン・ギハと顔たち」来日公演に行ってきた(1)
「チャン・ギハと顔たち」来日公演を前に
チャン・ギハと顔たちが12月29・30・31日のソウルでのライブを以て解散する。出不精な私だがこれは行かねばならん、と意気込んだは良いが案の定チケットは全然取れず、かと言って諦めも付かないでいたところに、一報があった。なんと彼らの方が日本に来てくれるという。信じられないほど有難い、願ってもないことだ。まあ「最後はソウルで見届けたい」という気持ちも無いではないが、次善の策としてはこれ以上ないほどの選択肢だ。
日は12月12日、会場は渋谷 duo MUSIC EXCHANGE。聞いたことがないところだが、ネットで調べるとキャパはスタンディングで700ほどという。ということはそれぐらいの集客を見込んでいるということになるが、いま日本にそんなにいるのかな、顔たちのファンって。見当も付かない。あるいは韓国からやってくる人を相当数見込んでいるのかも知れないが。
チケットは多分問題なく取れるだろうとは思ったのだが、当方も気合が入っているもので、「クリエイティブマンの3A会員なるモノになると最も早く抽選に応募できる」と聞き、矢も楯もたまらず五千円を払って入会、無事にチケットも入手できた。しかも会員効果であろうか、10番代という今まで経験したことがないくらい早い番号だった。開場時間にさえ間に合えば立ち位置は選び放題だろう。ちょいシモ手に寄ってチョン・ジュンヨプのベースを堪能しよう。
さてライブとなると気になるのは何と言ってもセットリストである。顔たちはこれまでに5枚のアルバム、約60曲を発表しているが、一回のライブで演奏するのはアンコール込みでも多くて20曲弱だろう。私にとっては顔たち初ライブなので、何を演ってくれても嬉しいというのが正直なところだが、そりゃあ好きな曲を演ってくれた方がより嬉しいに決まっている。アルバムごとに振り返ってみよう。
まず先月出したばかりの第5集『mono』からは一定数演るだろう。しかし例えば「그건 니 생각이고」なんか、凄くクールな曲だけど、全体的に音が軽いもんで、ライブで聴きたいかというとちょっとどうかなという気がする。バンドサウンド色が強い「나란히 나란히」「등산은 왜 할까」なんかの方が聴きたいかも。「초심」はどうかな。ヘンテコな曲「나 혼자」も良いな(この曲はベースが命だ)。「아무도 필요없다」は伴奏が鍵盤だけだが、綺麗な曲なので観てみたい。
前作の第4集『내 사랑에 노련한 사람이 어딨나요』からは、何と言っても「빠지기는 빠지더라」が聴きたい。それから「ㅋ」はCDだと凄いグルーヴ感があるので、あれが生で味わえるなら聴いてみたい。あと「괜찮아요」が大好きなので(エンディングがたまらん!)これも聴いてみたい。
第3集『사람의 마음』は最もロック色が強く盛り上がる曲が多い。殊に「내 사람」と「좋다 말았네」はビデオが作られていてシングル的な位置づけの曲だと思うので、是非演って欲しい。それに勝るとも劣らず演って欲しいのは「알 수 없는 사람」! これは最高に高揚する曲だ。「rrランタダンタダン、タンタダン!」を一緒に歌いたい。奇妙で壮大な曲「착한 건 나쁜 게 아니야」も観られたら感動する気がする。
第2集『장기하와 얼굴들』は面白い曲たちが詰まっているので演って欲しい曲ばかりだ。「그렇고 그런 사이」と「우리 지금 만나」は多分代表曲で、ライブでも定番じゃないかと思うので、やってくれそうな気がする。スーパー・クールな「뭘 그렇게 놀래」も観たい。あとアルバム後半の穏やかで美しいバラード「그 때 그 노래」や、厳しい冬を思わせ今にぴったり、展開にも惹きつけられる「마냥 걷는다」なんかも観てみたい。風変わりなバラード「TV를 봤네」も良い。風変わりと言えば「보고 싶은 사람도 없는데」も相当なものだ。プログレ・ハードロック風味爆発の「날 보고 뭐라 그런 것도 아닌데」もライブ映えしそう。
第1集『별일 없이 산다』の曲は、明らかにそれ以降とは作風(というかサウンド)が異なるので、今の顔たちがやってもあんまりハマらないんじゃないかと思うのだが、でも前回(2016年秋)のライブで出世曲「싸구려 커피」なんかをちゃんと(っていうか)演ってるそうだし、あと最近知って驚いたのだけれど、近年のライブで「아무것도 없잖어」もレパートリーに入れているのだ。これは顔たちの楽曲の中でも指折りの奇妙な曲なので、演ってくれたら嬉しい(2009年のライブDVDを見るとコーラス隊を入れているが、これは望めないだろうな)。ラストライブの題名にもなっている「별일 없이 산다」は、私がファンになるきっかけになった曲でもあるので是非是非取り上げて欲しい。唯一無二の格好良い曲だ。他には...第1集も良い曲ばっかりだが、ミミ・シスターズが入ってる曲は演らないだろうしなあ。「오늘도 무사히」なんか演ったら面白いな。演らないだろうけど。あと侘しく美しいバラード「정말 없었는지」なんか聴けたら嬉しい。
はー、楽しみだ。
ポール来日公演のこと
約1年半ぶりとなるポール・マッカートニーの来日公演、最終の名古屋公演を無事終えたとのことである。私は、11月5日の両国国技館公演に参加してきた。
正直に言って、来日公演が発表された時点では、今回は参加を見合わせるつもりだった。単純に、発表された日程に都合が合わないということもあったが、それよりもむしろ、声の衰え(9月にアルバム発売を記念してニューヨークで行われたシークレット・ライブはネットで中継されたので私も観たが、かなりキツいところがあった)と、セットリストの変わらなさが気になった。
ところがだ。当初発表された東京ドーム公演と名古屋ドーム公演との間に妙に日程の開きがあったので、ここに追加公演が入るのだろうということは噂になってはいたが、まさか国技館とは。武道館よりもなおキャパは小さい、とするとドームとは比べ物にならない近距離で見られる。3万8000円は確かに高いが、武道館の時が10万円だったのでむしろおトクに見えた。というわけで今回も参加することに決めたのだった。
さて結果としては、「やっぱ行ってよかった!」という感想である。はっきり言って、3万8000円は全然高くなかったことがわかった。
マス席1階のかなり端の方で、ほぼ真横から見る形だったが、距離感がこれまでのドーム公演とは段違いだった。近いと何が良いって、ポールたちと同じ空間を共有していて、バンドが演奏しているのだということをハッキリ実感できることだ。それから、単に自分とステージとの距離が近いだけでなく、周りを見渡した時にドームほど茫漠とした感じがないので、「この瞬間をみんなで共有している」という感覚を持つことができる。
近いということで言えば、ポールの弾くベースの音を聴くことができたのも、何とも言えず嬉しかった。ドームだと全然聞こえないんだ。一回だけアリーナで観たことあるけど、それでも聞こえなかった。それが今回は聞こえたのだ。と言ってもずっと聞こえていたわけじゃなくて、他の楽器の兼ね合いでタイミングが良いと聞こえることもあった、という程度だが、それでも世界一のベーシストが弾く世界一のエレキベースの音を直に聞いたことには違いない。こんな嬉しいことがあるか!
とまあ、そういった諸々のことがあって、これまで参加してきたドーム公演とは異なる感覚でコンサートを楽しむことができた。スクリーンがなかったのも却って良かったと思う。そのおかげで「作り込まれたショー」ではなく「ロックバンドのコンサート」なんだといいう感じが出ていたから。
ポールの声については、2013年の公演に較べるとやはり無理を感じるところもあったが、基本的には「まだいけるぜ!」という感じであった。ただこれは、その場でビジュアル付きで体感しているからそう思えるのであって、例えばブートレグとかで音だけを聴いたとしたら、やはり相当キツいと思う。
セットリストは、以前の武道館では特別な曲を織り込んでいたので、今回もそういう「お楽しみ」を期待したのだが、まさか一曲もないとは...。ただ上で書いたようにドーム公演とは色々な点で雰囲気が違ったことと、あとホーンセクションの参加があったために、思ったよりはだいぶ新鮮な感じがした。近い距離感で観られたことは、「Blackbird」のようなアコースティックな曲では特に効果的だった。良かったなあ「Blackbird」(「Here today」がセットから外れたのは残念)。
とにかく、「セットリスト変えてくれよ」とか「新しいアルバム良かったからそこからもっと演ってよ」とか思うのは、あくまで「平常時」の話であって、実際にあのポール・マッカートニーが目の前(と言うにはちょっと遠いが)に現れて、あの名曲たちを演奏するという「非常時」に突入すると、もう繰り出される音楽を味わうのに夢中で、セットリストの不変化などという些細なことは気にならなくなるのだ(前にも同じこと書いた気がするな。まあそのことを再確認したということ)。
でも「Let ‘em in」は観たかったなあ。それだけは惜しい。
あと、やっぱり新しい曲は良かった。国技館では新作からは「Come on to me」と「Fuh you」しか演らなかったけど、どっちも良かった。あと前作からの「Queenie eye」。これは凄く格好良い曲だから演ってくれて良かったし、それにこういう近年の曲で観客がガッツリ盛り上がっているのも嬉しかった。
というわけで大満足でした。もしまた来日して国技館で演ってくれるなら、迷わず参加します。ドームだったら、ちょっと検討する。